迷惑防止条例とは? 盗撮は条例違反?
盗撮をすると、迷惑防止条例違反で検挙されるのはご存じの方も多いと思います。条例とは都道府県などの地方公共団体が独自に定め、その域内でのみ効力がある法の一種ですが、なぜ盗撮行為は条例により規制されているのでしょうか。
まず、迷惑防止条例とはどのような条例なのか、そして、盗撮行為を処罰する規定はどのようになっているのか見ていきましょう。
1. 迷惑防止条例とはどんな条例?
迷惑防止条例について、その制定の経緯と規制の内容、都道府県による違いについてお話しします。
(1) 条例制定の経緯と規制の内容
迷惑防止条例は、昭和37年、オリンピック開催を2年後に控えた東京都で初めて制定されました。
当時は、暴力団や「ぐれん隊」といわれる不良集団による粗暴な不良行為が社会問題となっており、これを取り締まるのが条例制定の目的であったといわれています。
現在、東京都の迷惑防止条例で規制されている行為は、次のとおりです。
- ダフヤ行為―2条
- ショバヤ行為(不当な席取り行為)―3条
- パチンコ景品などの買い取り行為―4条
- 粗暴行為、卑わい行為―5条
- つきまとい行為―5条の2
- 押し売り行為―6条
- 客引き行為―7条
- ピンクビラの配布行為―7条の2
中には時代を感じさせる用語もありますが、約50年前に制定された規制に加え、後に社会問題化した盗撮行為やつきまとい行為が追加されて、現在の条例の形になっています。
(2) 都道府県によって条例の名称や内容は異なる
迷惑防止条例を制定する動きは、東京都以外の道府県にも広がり、現在では47都道府県すべてで同様の条例が制定されています。
条例はそれぞれの地方公共団体の議会により審議され制定されるため、大筋では東京都の条例に倣った内容ではあっても、条文の構成や文言はまちまちです。また、条例の名称もまちまちで、東京都は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」ですが、神奈川県や埼玉県は「迷惑行為防止条例」です。これらを総称して迷惑防止条例と呼んでいます。
2. 盗撮行為を処罰する規定
盗撮行為に関する規定は、近年各地で条例改正が相次いでいます。盗撮行為の規制に関して、
- 盗撮規制に至る経緯
- 東京都における規制
- 東京都以外における規制
- 迷惑防止条例以外に抵触する可能性がある罰則
の順に見ていきましょう。
(1) 盗撮規制に至る経緯
迷惑防止条例は、誰もが自由に通行、出入りできる公共の場所や乗り物における迷惑行為を規制するために制定されたものでした。
しかし、スマートフォンや小型カメラの普及により、盗撮は職場や学校など、公共の場所とはいえない特定の人のみが立ち入る場所での被害も増えています。
そのような盗撮行為にも対応するため、条例を改正して盗撮の規制範囲を拡大する動きが拡がっています。
(2) 東京都の条例における盗撮規制
東京都における迷惑防止条例の盗撮に関する規定を見ていきましょう。
①規制の場所
- 不特定多数の人が利用・出入りする場所:公道、公園、駅、電車、ショッピングモール、銭湯、公衆トイレなど
- 不特定の人または多数の人が利用・出入りする場所:学校、会社の事務所、タクシー、スポーツジム、カラオケボックスの個室など
- 通常衣服を着けていない状態でいる場所:住居の中、会社や学校のトイレ、シャワー室、更衣室など
②盗撮の行為
着衣で隠された下着や身体を
- カメラその他の機器で撮影する
- 撮影する目的でカメラその他の機器を差し向けまたは設置する
行為
③罰則
- 撮影した場合:1年以下の懲役、または100万円以下の罰金(常習の場合:2年以下の懲役または100万円以下の罰金)
- カメラなどを差し向けまたは設置した場合:6月以下の懲役または50万円以下の罰金(常習の場合:1年以下の懲役または100万円以下の罰金)
痴漢行為の罰則は「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」ですが、盗撮は画像などが拡散される危険性があるため、より重く処罰されます。
(3) 東京都以外における盗撮規制
東京都以外のすべての道府県でも盗撮行為は迷惑防止条例により規制されています。
ただし、規制される場所が「公共の場所及び公共の乗物」に限られる県や、学校、会社の事務所などが含まれない県もあり、罰則が東京都よりも軽い所もあります。
なお、盗撮行為の違法性は地域によって変わるものではないので、国の法律で統一の規制を設けるべきという声もありますが、現在のところ具体的な動きにはなっていません。
(4) 迷惑防止条例以外に抵触する可能性がある罰則
盗撮に関連して、迷惑防止条例以外に成立する可能性がある罪についても見ておきましょう。
①軽犯罪法違反
正当な理由がなく、住居、浴場、更衣場、便所など人が通常衣服を身につけずにいる場所を、ひそかにのぞき見た場合は、軽犯罪法違反(同法1条23号)に該当します。盗撮しようとして、撮影に至らなかった場合は、軽犯罪法違反となる可能性があります。
罰則:拘留(30日未満の身柄拘束)または科料(1万円未満の徴収)
②住居侵入・建造物侵入
盗撮の目的で他人の住居や建造物、またはその敷地内に立ち入ると、それだけで住居侵入罪などが成立します(刑法130条)。
罰則:3年以下の懲役または10万円以下の罰金
③児童ポルノ禁止法違反
18歳未満の児童の性的部位が写った画像データなどは、性的好奇心を満たす目的で所持していただけで罪に問われることがあります(同法7条1項)。
また、その画像をインターネット上にアップロードするなどして、人の目に触れる状態にした場合は、さらに重い罪に問われる可能性もあります(同法7条6項)。
所持の罰則:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
提供・陳列の罰則:5年以下の懲役または500万円以下の罰金(懲役刑と罰金刑の併科あり)
- こちらに掲載されている情報は、2022年03月30日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
犯罪・刑事事件に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?
関連コラム
-
- 2024年11月28日
- 犯罪・刑事事件
-
- 2024年11月26日
- 犯罪・刑事事件
-
- 2024年10月30日
- 犯罪・刑事事件