- (更新:2024年12月05日)
- 交通事故
過失割合が8対2の交通事故、慰謝料の金額はどうなる?
交通事故には被害者と加害者が存在しますが、事故の責任のすべてを加害者が負う、とは限りません。大半の事故においては、被害者にもなんらかの責任があるものなのです。
過失割合が8対2の場合には、事故の責任の大部分は加害者にあるとはいえ、被害者にもそれなりの責任があるということになります。
被害者に過失割合が認められる場合、加害者に請求できる慰謝料などの損害賠償の金額が減額されることになるため、注意が必要です。
この記事では、過失割合が8対2の場合に慰謝料の金額がどうなるかについて、説明いたします。
1. 過失割合が8対2の交通事故とは?
まずは「過失割合」の考え方、および過失割合8対2の交通事故の具体例を紹介します。
(1)過失割合とは
被害者・加害者の責任分担
交通事故における「過失割合」は、加害者と被害者のどちらにどれだけ事故の責任があるかを示しています。
過失割合が「8対2」のときには、加害者に80%、被害者に20%の責任があるということになります。
過失割合は、後述する「過失相殺」によって、加害者から被害者に支払われる慰謝料の金額に影響するので注意が必要です。
(2)過失割合が8対2になる交通事故の具体例
過失割合が8対2の交通事故は、加害者の過失が大きいとはいえ、被害者にもある程度の落ち度があるケースといえます。
過失割合が8対2となる交通事故の具体例は、以下のとおりです。
①信号機のない交差点で、直進車と対抗右折車が衝突した場合
過失割合は対抗右折車80%、直進車20%。
自動車が交差点で右折する場合、直進または左折をしようとする車両の進行を妨害してはなりません(道路交通法第37条)。そのため、対抗右折車により重い過失が認められます(80%)。
その一方で直進車の側にも、交差点内ではできる限り安全な速度・方法により進行することが義務付けられています(同法第36条第4項)。したがって、直進車の側にも注意義務違反として一定の過失が認められます(20%)。
②交差道路の一方に一時停止の規制がかけられている信号機のない交差点で、交差道路を通行する車同士が衝突した場合
過失割合は一時停止側80%、非一時停止側20%。
一時停止の規制がかかっている場合、自動車は停止線の直前で一時停止しなければならず、かつ交差する道路を走行する自動車の進行を妨げてはなりません(道路交通法第43条)。そのため、一時停止側により重い過失が認められます(80%)。
しかし、非一時停止側にも、交差点を通行する際の徐行義務(同法第42条第1項第1号)が課されています。そのため、こちらにも一定の過失が認められるのです(20%)。
2. 過失割合が8対2のとき、慰謝料の金額はどうなる?
過失割合が8対2である場合には、「過失相殺」によって、被害者側が受け取ることのできる損害賠償の金額は減額されます。精神的苦痛に対する損害賠償である「慰謝料」も、減額されることになるのです。
(1)過失相殺とは
過失割合に応じた減額
「過失相殺」とは、被害者側の過失割合に応じて、不法行為に基づく損害賠償金額を減額調整する考え方です(民法第722条第2項)。
過失割合が8対2のケースでは、被害者が受けた損害のうち、実際に加害者から賠償を受けられるのは損害の80%に相当する額に限られるのです。
交通事故においては被害者側と加害者側とで示談交渉を行い、損害賠償は「示談金」として加害者側から被害者側に支払われます。過失相殺は、この示談金に対して適用されることになります。
(2)過失割合が8対2の場合の慰謝料計算例
交通事故の被害者に後遺症が残存し、後遺障害等級が認定された場合、後遺症慰謝料を請求することができます。
後遺症は、事故から時間が経過した後も被害者の人生に影響を与え続けます。それによる精神的苦痛を考慮して、後遺症慰謝料は数百万円から数千万円と高額になることが多いのです。
以下では、過失割合8対2のケースにおいて、後遺症慰謝料がどのように計算されるかについて解説します。
<事例>
- 過失割合は加害者80%、被害者20%
- 被害者は後遺障害9級の認定を受けた
上記の事例について、後遺症慰謝料の金額を計算してみましょう。
交通事故における慰謝料の金額の基準には、自賠責基準・任意保険基準・裁判所基準(「弁護士基準」と言われることもあります。)の三種類があります。加害者側との示談交渉を弁護士に依頼すれば、もっとも高額な基準である「裁判所基準」で慰謝料を請求することが可能です。
後遺症慰謝料の金額は、通常、認定された後遺障害等級について、算定基準を適用して求められます。
裁判所基準で請求した場合には、基本的に、後遺障害9級の後遺障害慰謝料は690万円となります。
しかし、被害者には20%の過失があるので、上記の後遺症慰謝料も20%が減額されます。したがって、被害者が受け取ることのできる後遺症慰謝料は、最終的に「552万円」となるのです。
過失割合に応じた慰謝料等の計算についてわからないことがある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年12月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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