行政指導を受けてしまった場合の対処法は? 不服申し立ては可能?
店舗・施設などの事業者が監督官庁から行政指導を受けた場合、これまでどおりの事業活動ができなくなるなど、不利益が生じる可能性があります。
この記事では、行政指導には必ず従わなければならないのか、また不服がある場合はどうすればよいのかなどについて解説します。
1. 行政指導とは?
行政指導は、監督官庁などの行政機関によって行われる、任意の協力要請全般をいいます。
法令違反の状態が発生していたり、法令違反には至っていないとしても、その危険が生じていたりする場合に、それを是正する目的で行政指導が行われることがあります。
2. 行政指導に従わなかったらどうなる?
行政指導は、監督官庁などの権限ある機関からの要請ですので、受けた側としては「従わなければいけない」という心理的な強制力が働くことでしょう。
では、行政指導に従わなかった場合はどうなるのでしょうか。この点について、法的な観点から確認していきましょう。
(1)行政指導に従う法的な義務はない
行政指導はあくまでも、行政機関による任意の協力要請に過ぎません。このことは、行政手続法第32条第1項にも明記されています。
したがって、強制処分である「行政処分」とは異なり、行政指導を受けたとしても、それに従う法的な義務はないのです。
(2)従わないこと自体を理由とする不利益取り扱いは禁止
任意の協力を前提として行われる、という行政指導の鉄則を守るために、対象者が行政指導に従わないこと自体を理由として、行政機関が対象者を不利益に取り扱うことは禁止されています(行政手続法第32条第2項)。
たとえば、行政指導に従わないからといって不利益な処分を下したり、他の店舗・施設には提供している公的なサービスを提供しなかったりすれば、行政機関の行為は違法となります。
(3)行政指導の後に、行政処分が予定されている場合があるので注意
ただし、すでに行政処分相当の違法状態などが生じている場合に、行政処分の前段階として行政指導が行われている場合があります。
この場合、行政指導に従わなければ、次のステップとして行政処分が行われてしまいます。
(行政指導に従わなかったこと自体ではなく、もともと生じていた違法状態を理由に行政処分が行われるので、適法です。)
行政処分には、違法状態の是正命令・課徴金の納付命令などさまざまなパターンがありますが、いずれも強制処分ですので、対象者は従わなければなりません。
行政処分を受けることによる不利益は大きいので、違法状態を自覚している場合には、行政指導に従った方が無難でしょう。
3. 行政指導に対して不服を申し立てる方法は?
行政指導に対して不服がある場合、対象者は以下の方法により不服を申し立てることができます。
いずれの方法でも、不服申し立ての内容について法的な根拠を持っておくことが大切です。
(1)行政指導の中止等の求め
違法行為の是正を求める行政指導については、行政手続法第36条第1項に基づき、当該行政指導が法律の要件に適合しないと考える旨を申し出て、中止などの措置を求めることが可能です。
ただし、行政指導を行った行政機関自身に対する不服申し立てなので、受け入れられる可能性は低いでしょう。
(2)国家賠償請求訴訟
最高裁平成5年2月18日判決では、行政指導が国家賠償法上違法となる場合があり得る旨が判示されています。
よって、違法な行政処分をバックにして行政指導が行われているなど、行政指導自体が違法な公権力の行使に該当する場合には、国家賠償請求訴訟によって、国や自治体に損害賠償を求めることも考えられます(国家賠償法第1条第1項)。
国家賠償請求訴訟では、行政指導の違法性や、対象者自身が受けた損害などついて、証拠により立証することが必要です。
(3)行政処分を待って取消訴訟
行政指導は強制力を持たない任意の要請にすぎないので、例外的な場合を除き行政指導自体の取り消しを裁判所に求めることは原則としてできません。
これに対して、行政処分が行われた段階であれば、行政処分の取消訴訟を提起することが可能になります(行政事件訴訟法第8条第1項)。
行政指導を受けてしまい、納得がいかない場合は、行政機関を訴えることが可能です。しかし、実際に訴える場合には、証拠を用意し法的根拠をもとに自身の主張をしなければなりません。行政指導に関してお悩みの場合は、弁護士へご相談をおすすめいたします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年04月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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