行政指導とは? 「行政処分」や「勧告」との違い
行政指導とは、行政機関が任意で協力を求めることです。法的な拘束力を持たず、従わなくてはならない決まりはありません。しかし、行政指導から法的な強制力を持つ行政処分へと移行する可能性があります。
本コラムでは、行政指導と行政処分との違いや、行政指導の一つの勧告について解説します。また、行政指導に納得できない場合の対応方法を紹介します。
1. 行政指導とは
行政指導とは、行政機関が特定の人物や事業者に対して、改善を促し協力を求めることです。法的な拘束力がないため、たとえ行政指導を受けたとしても、必ず従わなければならないわけではありません。
(1)行政指導の分類
行政指導は、法的な観点から大きく以下の2つに分類されています。
①法定行政指導
法令に根拠規定がある行政指導を指します。たとえば、介護保険法第103条第1項には「勧告」が規定されています。この勧告に従わなかった場合、法律の規定に基づき、業務停止処分がなされることがあります。行政指導そのものには法的な拘束力がなくても、根拠となる法令があるため、従わないと処分が行われる場合があります。
②非法定行政指導
法令に根拠規定がない行政指導のことです。このとき、行政機関に処分権限がある場合とない場合との2つに分かれます。行政機関に処分権限がある場合の非法定行政指導は、許認可申請の棄却など、不利益な処分をする前の段階の対応、という位置づけです。
法令に根拠となる規定がなく、処分権限もない場合の行政指導は、法令に代わって暫定的な対応が必要となった場合に実施されるものです。法令に直接の根拠がなくても、関連する法令に抵触しない限りにおいて行政指導を行えます。
2. 行政処分との違い
行政処分は、法律に従って国民の権利や義務に影響を与える行為を指します。法的な拘束力を持つ点が、行政指導との違いです。たとえば、改善を促すために行政指導を行ったものの一向に改善が見られない場合に、強制力を持つ行政処分に移行するといった流れで行われます。
(1)行政処分の具体例
行政処分の具体例として、以下のようなものが挙げられます。
- 道路交通法の規定に基づく、免許取消処分および免許停止処分
- 旅館業法の規定に基づく、旅館業の許可取消および営業停止命令
- 農地法の規定に基づく、許可取消および工事停止命令、原状回復命令など
3. 勧告とは
「勧告」とは、行政指導において具体的な行動をとるように強くすすめている段階のことです。行政指導には、主に「助言」「指導」「勧告」といった段階があります。改善を提案するレベルが「助言」で、助言より強めに促すのが「指導」です。さらに強く「こうしなさい!」と促すのが「勧告」です。
勧告よりもさらに強い指導である「警告」も存在します。法律に基づいて行われる行政処分に移行しかねない状況であるため、注意が必要です。
4. 行政指導への対応方法
行政指導は任意の協力要請で、法的な拘束力がないことから、納得できなければ従う義務はありません。また、従わなかったことでその対象者を不当に扱うことは、行政手続法第32条第2項によって禁止されています。一方で、行政指導に従わなかった、もしくは従ったが改善できなかった場合には、法的な強制力を持つ行政処分に移行するおそれもあります。そのため、納得がいかない場合でも、以下のような対応を行うことが大切です。
(1)行政指導に従わない意思を表明する
行政指導にその根拠や心当たりがない場合、行政指導に従わない意思を主張すると良いです。従わない意思が示された場合、行政指導は継続できないとされています。行政機関は指導の内容や趣旨だけでなく、根拠や理由についても示す必要があります。内容に納得できない場合、根拠や理由を明らかにした書面の提示を求めてみましょう。
(2)行政指導の中止を求める
行政指導を受けることで、社会的な信用を失うなどの不利益を被る可能性がある場合、行政指導の中止を求められます。これは行政指導の対象者を守るために行政手続法で規定されている権利です。中止を求める場合には、行政機関に対して申出書を提出します。しかし、その内容が法的な根拠に基づいていない場合は、受け入れられる可能性が低いです。
(3)国家賠償請求訴訟を提起する
行政指導の内容が違法な行政処分の可能性に基づく場合、国家賠償法上、違法となることもありえます。そういったケースでは、行政指導を受けた人や事業者が、国家賠償請求訴訟を提起することも可能です。この場合、行政指導における違法性や被った損害について明らかな証拠を提出して立証する必要があります。
(4)行政処分を待ってから取消訴訟を提起する
行政指導は任意の要請であるため、特別な例を除き、取り消してもらうことは不可能です。そのため、取消訴訟を提起するには、行政処分へ移行したタイミングでなければなりません。しかし訴訟の提起には、法的根拠に基づいて立証する必要があります。
行政指導を受けないことが何よりですが、もし行政指導を受けてしまい、その内容に納得できない場合は、適切な対応をとるために、早急に弁護士に相談するのがおすすめです。
- こちらに掲載されている情報は、2023年11月06日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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