少額訴訟の流れとは? 迅速な債権回収手続きの基礎知識を解説
「貸したお金が返ってこない」「代金が支払われない」「賃料が滞納している」など、約束したお金が支払われなくて困っている方は、どのような解決方法を検討すればよいでしょうか。
相手が任意に支払ってくれればよいのですが、支払いがないときには最終的に裁判を起こすという選択肢が考えられます。
裁判は時間も費用もかかるイメージのため敬遠されがちですが、裁判手続きのなかにも「少額訴訟」という簡易かつ迅速に行うことができる手続きが存在するのをご存じでしょうか。
本コラムでは、債権者の方に向けて、少額訴訟の流れなどを解説します。
1. 少額訴訟とは
少額訴訟とはどのような手続きなのでしょうか。まずは基礎知識について理解していきましょう。
(1)少額訴訟の意義
少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求めるときに利用することができる裁判手続きです。少額訴訟の対象は金銭の支払いの請求を目的とするものに限られます。
(2)少額訴訟のメリット
少額訴訟の主なメリットは以下の3つです。
①簡易かつ迅速な手続き
1つ目のメリットは、手続きが簡易かつ迅速に行われることです。
少額訴訟は、原則として1回の審理が終了し、即日判決が出ます。そのため、通常の裁判のように何度も裁判所に出頭するという負担がなく、訴え提起から判決までおよそ2週間から1か月程度しかかかりません。したがって、簡易かつ迅速に権利を実現することができます。
ただし、少額訴訟の判決に対しては「異議の申し立て」ができます。その場合には、通常の民事訴訟手続き(第一審)に移行します(民事訴訟法378条、379条)。少額訴訟の判決に対し直接控訴することはできません(同377条)。
②手続きにかかる費用が低額
2つ目のメリットは、手続きにかかる費用が低額で済むということです。
少額訴訟手続きにかかる主な費用は以下のとおりです。
- 収入印紙代
- 切手代
- 交通費
収入印紙代は、訴額が10万円までの場合は1000円で、以後10万円ごとに1000円が加算されます。最高でも6000円で済みます。切手代は裁判所ごとに異なりますが、東京簡易裁判所の場合は5200円です。
ただし、交通費については、原則として被告の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てをするため、被告が遠方に住んでいる場合は交通費が高額になることがあります。
③強制執行が可能
3つ目のメリットは、少額訴訟の判決を得れば、通常の訴訟の判決と同様に強制執行して債権回収を図ることができるということです。
「少額訴訟債権執行」といって、一般的な財産の差し押さえよりも比較的簡単な手続きで行えます(民事執行法167条の2~167条の14)。
この「少額訴訟債権執行」では債務者にどういった財産があるかは申立人である債権者が調査して突き止める必要がありますが、どの財産の差し押さえを申し立てるかは、申立人に決定権があります。
(3)少額訴訟を有効活用できる条件
このように少額訴訟には大きなメリットがありますが、60万円以下の金銭の支払いを目的とするものという条件以外にも制約があります。
以下の制約がクリアできるようであれば、少額訴訟は債権回収にあたって有効な手段となるでしょう。
①被告の所在が明確であること
通常の裁判であれば、被告の所在が不明な場合でも特別な送達方法によって裁判を開始することができます(公示送達。民事訴訟法110条)。
しかし、少額訴訟では公示送達の手続きが認められないので(民事訴訟法273条3項3号)、被告の住所等が明確で送達が可能なケースでしか利用することができません。
訴えたい相手方の住所等がわからない場合や、海外に住んでいて訴状の送達の証明ができない場合では、少額訴訟を利用することができません。
②年10回以下の利用であること
同じ裁判所で少額訴訟を利用できる回数には「年に10回まで」という制限があります。
③被告の同意が必要であること
少額訴訟を提起したとしても、被告には通常の民事訴訟手続きに移行するよう申述する権利があります(民事訴訟法373条)。そのため、事実上、少額訴訟か通常訴訟かの選択権は被告にあります。
少額訴訟から通常訴訟に移行した場合には、当初から通常訴訟を選択していた場合よりも時間を要することになりかねません。少額訴訟を利用する際には、あらかじめ「被告の同意が得られるかどうか」の見極めが重要となります。
④証拠が制限されていること
少額訴訟における証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができます(民事訴訟法371条)。
2. 少額訴訟の流れと必要書類
最後に、少額訴訟を利用する際の流れと必要書類について解説します。
(1)少額訴訟の流れ
①訴状の提出
原告は、被告の住所地を管轄する簡易裁判所に以下の書類を提出します。
- 訴状
- 証拠
- 資格証明書
②第1回期日の指定
提出した書類が受理されたら、裁判所から第1回期日の日程について連絡があります。
③答弁書の提出
裁判所から訴状などを受け取った被告は、最初の期日の前までに答弁書を提出します。
④審理・口頭弁論
指定された裁判期日に裁判所に出頭します。審理は原則として1回で終了します。
証拠調べの対象となる証拠は、即時に取り調べられるものに限られます。
⑤和解・判決
審理が終了すると判決が言い渡されます。被告が出頭したときには、双方の言い分を踏まえて和解で解決することもあります。和解が調書に記載されれば、確定した判決と同一の効果があります(民事訴訟法267条)。
なお、原告の請求が認められて勝訴しても、裁判所の判断で分割払い、支払猶予または遅延損害金免除となることがあります。
判決内容に不服があるときには、控訴ではなく、異議申立ての手続きをとることとなります。それにより通常の民事訴訟手続き(第一審)に移行します(民事訴訟法378条、379条)。
どのようなケースであれば少額訴訟が有効なのかについては、少額訴訟に関する知識や経験のある専門家(弁護士・司法書士など)への相談が賢明です。
あらかじめ相談をしていれば、通常訴訟へ移行しても、スムーズに進められる可能性が高まります。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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