不良債権とは? 企業の不良債権の回収方法と手順を解説

不良債権とは? 企業の不良債権の回収方法と手順を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

ある日突然、取引先が商品の代金を支払ってくれなくなったり、融資していたお金が返済されなくなったりするというトラブルに見舞われるかもしれません。

ここでは、不良債権によるトラブルが発生した際に対処できるように、不良債権についてその回収方法や手順を含めて解説します。

1. 不良債権とは

そもそも債権とは、特定の行為をする義務を負う人(債務者)に対して、その行為をさせる権利のことであり、不良債権とは質の悪い債権を指します。

(1)回収が難しい・できない債権

たとえば、A社がB社の将来性に期待しお金を貸していたところ、災害や疫病などの影響を受けたB社の経営状態が急激に悪化・倒産寸前の状態に陥ってしまったとします。この場合、A社はB社に対してお金を返してもらう権利(債権)を持っていますが、B社は倒産寸前の状態であるため、お金の回収は難しく、最悪の場合には一銭も返ってこないかもしれません。

このように、回収が困難だったり、不可能だったりする債権のことを不良債権と呼びます。

(2)滞留債権との違い

滞留債権は支払期限までに入金がなく、回収が遅れているものの、後から回収できる可能性が高い債権です。滞留債権も不良債権も債権回収が遅れているという点では共通していますが、滞留債権には回収の見込みがあり、不良債権には回収の見込みがないというように区別されることがあります。滞留債権は将来的に不良債権となる可能性があり、両者を明確に区別する基準はありません。

2. 不良債権比率とは

不良債権比率とは、銀行などの金融機関や取引先企業が債務超過に陥っているか否かを判断するための指標であり、企業がリスク管理を行いつつ、資金調達を行うための指標として利用されています。取引先の信用性や現金回収能力を測定できる不良債権比率は、保有するすべての債権に占める不良債権の割合で、次の計算式で算出が可能です。

不良債権比率=不良債権÷保有するすべての債権

不良債権比率が高い企業ほど、回収できない債権の影響で経営状況が悪化する危険性も高いと判断できます。

3. 不良債権の回収方法と手順

不良債権の回収は以下の(1)~(3)の手順で段階的に行います。また、不良債権の回収には以下とは別に、債権譲渡という方法もあるので検討してみるとよいでしょう。

(1)話し合いを行う

まずは、お金の支払いが滞っている債務者にできるだけ早く連絡して、直接話し合える場を設けることが必要です。債権は民法で時効が定められているため、規定の期間を超えて放っておくと債権が消滅してしまいます。話し合いの際には、相手がお金を支払わない理由を確認し、支払いの意思があるのかを問いただすとともに、相手に支払能力があるかどうかをしっかりと見極めましょう。

支払能力がないと判断される場合には、最悪の事態を避けるために妥協しなければなりません。時間がかかってしまうが、将来的に満額支払えそうであれば、分割払いや支払期限の延期を提案するとよいでしょう。

反対に、どう見ても全額回収が不可能な相手には、支払える上限額を入金してもらえるように交渉するなどの対処が必要です。妥協が困難な場合も往々にしてありますが、最悪1円でも相手が支払ってくれれば、時効による債権の消滅を予防できるので、粘り強く交渉しましょう。

(2)督促状や内容証明郵便

話し合いが決裂したり、話し合いで合意した内容を相手が守らなかったりして、お金が支払われない状況が続いた場合には督促状を送りましょう。督促状は、期日までに入金されなかった場合に、相手へ入金を催促する書面です。

万が一、督促状を送っても無視される場合には、内容証明郵便を利用して法的手段に訴えることを相手に予告しましょう。

この「内容証明郵便」とは、郵送した文書の内容や郵送日時など郵便物に付随する情報を郵便局が証明する制度で、内容証明郵便を用いて書類を送付することで時効による債権の消滅を未然に防げます。

(3)法的手段

内容証明郵便を送ったにもかかわらず、相手が支払いの意思を示さない場合には、以下のような法的手段を検討しましょう。

①民事調停

民事調停は、争っている両者の話し合いに裁判所が加わり、あくまでも話し合いによる合意で問題解決を目指す手続きです。民事調停で合意した内容には、裁判で下される判決と同じ効力があります。

民事調停には、費用が抑えられ、手続きが簡単などのメリットが挙げられますが、話し合いで決着がつかない場合には、裁判に発展することも視野に入れて選択する必要があります。

②支払督促

支払督促は金銭トラブルが生じた場合に、申立人が簡易裁判所に申し立てを行って書類審査に通過すれば、その書記官が書類に書かれた相手に対して支払督促を送付し、金銭を支払うよう命令する制度です。相手が異議を唱えなければ、裁判による判決と同じく法的効力が発生しますが、相手からの異議申し立てがあった場合、裁判で決着をつけることになります。

③裁判

債権回収に関する紛争を解決するための最終的な法的手段が民事訴訟(裁判)です。裁判には通常訴訟のほかにも、トラブルとなっている金銭の額が60万円以下であれば選択できる少額訴訟があり、通常訴訟よりも少ない時間と費用で判決を得られます。

④強制執行

裁判所が勝訴した債権者の申し立てに基づいて、債務者の財産を差し押さえ、そのお金を債権者に分配するなどして、債権を回収するのが強制執行です。

債務者が民事調停で金銭の支払いに合意したにもかかわらず支払わなかった、支払督促に対して債務者が一切異議を唱えなかった、裁判で債務者が敗訴したという場合には、債権者は強制執行を申し立てることができます。

(4)債権譲渡

債権譲渡とは債権を第三者に渡すことを指し、お金を借りている債務者が、保有する債権を貸している側の債権者に移転することで、債権者はその債権からお金を回収する権利を得られます。お金を貸した相手が現金を用意できない場合であっても、第三者からお金を支払ってもらえる債権を持っていれば、債権譲渡を用いて金銭トラブルの解決をはかることが可能です。

以上のように、滞留債権が不良債権化してしまうと、回収できたとしても多大な時間と労力が必要となり、下手をすると一銭も回収できなくなってしまう可能性があります。支払いが遅れている債権を発見したら、直ちに相手に連絡を取ったり、弁護士に相談したりするなど、可能な限り早く対処することが大切です。

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  • こちらに掲載されている情報は、2023年07月04日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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