風営法におけるキャバクラとガールズバーの違い~弁護士が消費者と若者に教えるぼったくりバーの見抜き方~

風営法におけるキャバクラとガールズバーの違い~弁護士が消費者と若者に教えるぼったくりバーの見抜き方~

ニュースを見ていると定期的に、ナイトビジネスの摘発を目にすることがあります。しかし、何が違法で何が問題だったのか、よくわからない人も多いのではないでしょうか。

これは、違法とされた行為自体は、あくまで行政が定めた手続き・ルールを守ってなかったというものであり、直接誰かに害をもたらすわけではないため、パッと見て何が悪いかがわかりにくいからです。

しかし、そのようなルール違反をあえてする目的との関係や、そのような事業の姿勢は、究極的には、一般の消費者に害をもたらすことにもつながっているようです。

今回は、そのようなナイトビジネスの問題について、「キャバクラ」と「ガールズバー」という業態の法律における位置づけから解説してみたいと思います。

1. キャバクラはガールズバーと異なり「接待」ができる

どちらもお酒が提供され、女性が接客します。しかし、風営法上は、全く別のカテゴリにされています。キャバクラは「風俗営業」の一種である「接待飲食等営業」、ガールズバーは「酒類提供飲食店営業」です。その差は、接客をこえて「接待」をするかどうかです。

接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」だと、風営法では定義されています。これだけだと抽象的でわかりにくいですね。もう少し具体的に話すと、隣に座って接触すると接待、カウンター越しに話していると接客と言えば、もう少しイメージがわくでしょうか。

基本的にガールズバーもキャバクラ同様、女性の魅力で客の消費を加速させようとする側面はあるため、接待を伴った方が営業はしやすそうに見えます。それではなぜ、わざわざ法律の分類を無視して、ガールズバーの形態で営業をしようとするのでしょうか。答えは、営業時間にあります。

2. ガールズバーはキャバクラと異なり「深夜営業」ができる

というよりも、キャバクラなどの風俗営業にあたる場合、0時から6時までの間の営業が禁止されているという方が、法律的には正確です(風営法13条)。

盛り上がってお酒も入り、財布のひもが緩くなってきたところでお開きにしなければいけないのは嫌だ、そのような発想から、深夜営業が可能なガールズバー形態をとりつつ、実質キャバクラ営業をしようという業者が定期的にあらわれるようです。

3. 実害は回って一般人にも生じる ~だまされる客、そして従業員~

このようにしばしば摘発を受ける風営法違反の内容は、あくまで行政区分に従った手続きや営業をしていないというもので、犯罪ではあるもののその実害がそこから生じているわけではないです。

しかし、正式な区分があるのにわざわざそれを逸脱して闇キャバクラを営もうとする人は、他の法令に対しても行儀が良くないことがままあるようです。そして、そのような被害相談がきっかけで警察の捜査が始まり、警察の内偵による証言に基づく営業時間や接待など、立件しやすい形式的なルール違反で罰せられる風営法違反を理由に摘発するという流れを、実際の事件でも見てきました。

以下は、私が実際に事件の中で見てきた、一般人への実害です。

(1)「客」側の被害 ~強引な客引き、ぼったくり営業~

まず、風俗営業を行う上では禁止されている客引き行為を、結構強引に行います。

相手の進路に立ちふさがったり、身体をつかんだりなど、物理的に立ち去れない状況を作ろうとすれば、風営法上も違法とされる客引き行為にあたってくるでしょう。そうして内側に入った客は、そのままぼったくり営業にあったりします。

たとえば、メニューや最初の案内に記載のないチャージ料金がついていたり、どんどん酒を勝手に注文されて女性が飲んでいったり、時によっては注文していないお酒までカウントされていたりです。そのような請求について、散々酔っぱらわせ、意識も不確かな中で決済をさせたりもします。

なお客引き行為は、風営法でもそれ単体で犯罪とされています。また、金銭の請求の仕方などによっては、民事上のトラブルを超えて、詐欺などの犯罪にもなってきます。

(2)「従業員」側の被害 ~知らずに犯罪者に、未成年搾取~

このように、店の営業形態だけでなく、営業としてここでやっている行為も、犯罪を構成し得るものなのですが、この客引きや営業個々の行為も、行っているのは若い女性たちです。

しかも、客引きの成功や売上に応じて、歩合報酬などを提示され、もっと積極的にやるようあおられていたりします。そして、社会経験の浅い女性たちは、それが犯罪だとも知らずに、店から褒められて給料が増えると、加担してしまったりします。

また、風営法では18歳未満を風俗営業に従事させたり、20歳未満にお酒を飲ませることは禁止されているため(なお労働基準法や未成年者飲酒禁止法でも規制あり)、基本的に20歳以上の雇用を想定されているわけですが、コンプラ意識のない闇キャバクラは、20歳未満に従事させることも多いです。そうすると、契約の名のもとに、でたらめな罰金制度がつくられるなど、労働者としても不当な扱いを受ける可能性もあります。

4. 酒も色恋もせめて人を楽しくさせるものであれ ~リトマス試験紙としての風営法~

ナイトビジネスがある程度クリーンでないところがあるのは、やむを得ないところです。

高額の請求が発生しようと、双方が真に同意するなら、それは他人が口出すところではないかもしれません。しかし、客の自由意思を損なう形を取ったり、そのような犯罪行為に無垢(むく)な若い女性を加担させたりするのは、人を不幸にする所業です。

そのような悪いビジネスに巻き込まれないためのひとつの指標として、風営法は使えるかもしれません。何も法律の条文を全部覚える必要はないです。すごく基本的なところを押さえておくだけでも、おかしい店には気が付きやすくなります。

女性がどこで客と接するか、店の名前と営業時間、入店時の案内など、キーとなるところだけでも、夜の街に出ていくための自己防衛として、意識してみてはいかがでしょうか?

杉山 大介
杉山 大介 弁護士

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年12月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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