民事調停の流れについて、初めての方にもわかりやすく解説
隣人トラブルや契約トラブルなど、さまざまな民事上のトラブルを解決するための方法のひとつとして「民事調停」があります。
今回は、民事調停手続きの概要・メリット・手続きの流れなどについて、初めての方にもわかりやすく解説します。
1. 民事調停とは?
当事者同士の話し合いで民事トラブルを解決できない場合は、訴訟手続きをとる前に、一度民事調停で話し合うことが有効なことがあります。
(1)民事トラブルを話し合いで解決するための裁判所の手続き
「民事調停」は、調停委員の仲介の下、当事者間で民事トラブルに関する和解の可能性を探ることを目的とした、裁判所における手続きです。
当事者同士では冷静な話し合いが難しい場合や、解決策がなかなか見いだせない場合に、民事調停の利用が有効な場合があります。
(2)民事調停のメリット
当事者同士の話し合いや訴訟手続きに比べて、民事調停には以下のメリットがあります。
①客観的な第三者の仲介により、冷静な話し合いが期待できる
当事者同士の話し合いでは、それぞれが言い分をぶつけ合ってヒートアップしがちですが、民事調停では調停委員が客観的な視点から仲介を行うため、冷静な話し合いが期待できます。
②合意により柔軟・円満な解決が図れる可能性がある
訴訟による一刀両断的な解決とは異なり、民事調停では当事者間の合意によって解決策を定めます。そのため、調停内容は柔軟に決めることができるほか、合意により解決することで、当事者間のわだかまりを解消できる可能性があります。
③迅速な解決が実現できる可能性がある
訴訟の場合、複雑な事案では1年以上にわたるケースも多いところ、民事調停は当事者が調停案に合意すれば終了するため、訴訟よりも短期で紛争解決に至ることができる可能性があります。
④調停調書には執行力がある
民事調停が成立した場合、裁判所書記官によって、合意内容を記載した「調停調書」が作成されます。調停調書には裁判上の和解と同一の効力(民事調停法第16条)が与えられているため、確定判決と同様に、強制執行における債務名義として用いることができます(民事訴訟法第267条、民事執行法第22条第1号)。つまり民事調停が成立すれば、別途裁判などを経ずとも、調停内容についてスムーズに強制執行をすることができるのです。
2. 民事調停の流れ
民事調停の大まかな流れは以下のとおりです。手続きについてわからないことがある場合は、お近くの弁護士へ相談してみましょう。
(1)民事調停の申し立て
民事調停の手続きを開始するためには、管轄裁判所に民事調停の申し立てを行う必要があります。
民事調停の管轄裁判所は、原則として「相手方の住所、居所、営業所もしくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所」です(民事調停法第3条第1項)。ただし、当事者間で合意がある場合には、合意で定めた地方裁判所または簡易裁判所に民事調停を申し立てることも可能です。
民事調停の申し立ての必要書類等については、以下の裁判所HPをご参照ください。
(参考:「民事調停」(裁判所))
(2)調停期日
民事調停の申し立てが受理されると、裁判所によって第1回調停期日が指定され、相手方に対する呼び出しが行われます。
調停期日には、当事者双方が出席し、調停室で調停委員が片方ずつ言い分を聴き取り、合理的な落としどころを探ります。当事者としては、どのような解決を望んでいるのか、相手方に何を伝えてほしいのか(および何を伝えてほしくないのか)などを、調停委員に明確に伝えるようにしましょう。
調停案に合意できる可能性があると認められる限り、調停期日は何度でも設定されます。
(3)調停成立・不成立・調停をしない措置・調停に代わる決定・取下げ
民事調停は、以下の5つのいずれかによって終了します。
①調停成立
当事者双方が合意した場合、調停成立となります(民事調停法第16条)。調停成立の場合、当事者は調停内容に拘束されます。
②調停不成立
当事者間に合意が成立する見込みがない場合、または成立した合意が相当でないと認められる場合には、調停は不成立となります(同法第14条)。調停不成立の場合、必要に応じて訴訟を提起するなどして、当事者同士の争いが継続されます。
③調停をしない措置
事件が性質上調停をするのに適当でない場合、または当事者が不当な目的でみだりに調停の申し立てをした場合には、調停委員会の判断により、調停をしないものとして事件を終了させることができます(同法第13条)。
④調停に代わる決定
調停成立の見込みがない場合でも、裁判所が何らかの解決案を示すことが紛争解決に資すると判断する場合には、当事者双方の衡平を考慮して、事件解決のために必要な決定を行うことができます(同法第17条)。
⑤取下げ
申立人が民事調停をやめることを決断した場合、調停事件が終了するまでの間、申し立ての全部または一部を取り下げることができます(同法第19条の2)。
- こちらに掲載されている情報は、2022年03月09日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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