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民事調停でトラブルを解決するメリット・デメリットを解説
一般的に紛争を解決する手段として、ドラマで見るような「裁判」をイメージする方が多いと思います。たしかに、最終的には訴訟で解決することになりますが、紛争を解決する手段としては、他にも「調停」という方法があります。
紛争当事者の関係性によっては、裁判ではなく調停を選択した方がいいケースがあり、事件の内容によっては、調停の方が早期に解決ができる場合もあります。
今回は、民事上の紛争を抱えている方に向けて、民事調停でトラブルを解決するメリットとデメリットについて解説します。
1.民事調停とは
裁判所における紛争解決手段として調停というものがあります。
民事上の紛争を解決する手段である民事調停について、その概要とメリット・デメリットについて説明します。
(1)民事調停の概要
民事調停とは、通常の裁判とは違い、当事者同士の話し合いによって、お互いに譲歩をしながら紛争の解決を図る手続きのことをいいます。
調停手続きでは、裁判官のほかに、2名の調停委員が調停委員会を組織し、紛争の解決にあたります。
民事調停の対象となる事件は、民事に関するあらゆる紛争が対象となります。
たとえば、金銭の貸借、売買、交通事故、借地借家、農地の利用関係、公害や日照の阻害に関する紛争などがあります。
なお、離婚や相続などの家庭内の紛争については、「簡易裁判所」の民事調停ではなく、「家庭裁判所」の家事調停で取り扱われます。
(2)民事調停のメリット
民事調停のメリットとしては、以下のようなものがあります。
①円満かつ柔軟な解決が可能
裁判では、法律に基づいて白黒つけることになりますので、一方が勝ち、もう一方が負けるという結果になります。その際には、お互いが相手方を強く非難する主張を言い合うことになりますので、裁判では、当事者同士の関係性は著しく破壊されてしまうことが少なくありません。
まったく知らない者同士ではなく、相手にするのが近隣住民や友人・知人、取引先など一定の関係性がある方だと、裁判による解決は不向きなことがあります。
これに対し、調停では、白黒つけるというよりは話し合いをしながら解決方法を探りますので、お互いが納得できる柔軟な解決が可能になります。主体はあくまで当事者ですので、弁護士や調停員などを間に入れながらもお互い話し合いながら解決したという納得感が得られやすくはなります。
②早期解決が可能
裁判は、証拠によって事実関係を明らかにしていく手続きですので、解決までには相当の期間を要することになります。主張の整理のみならず、証拠の収集・精査などが必要になるためです。
これに対して、調停では、必ずしも証拠によって事実関係を明らかにする必要はないので、お互いが納得できれば、早期に解決することも可能です。
③秘密が守られる
裁判手続きは、原則として公開の法廷で行うことになりますので、その内容については、第三者であっても傍聴することによって知ることができます。判決書も当事者の個人名は秘匿された形式ではありますが基本的には誰でも見ることができます。
これに対して、調停は、非公開の手続きですので、当事者以外の第三者にその内容が知られることはありません。
④手続きが簡単
調停は、基本的には話し合いの手続きですので、特別な法律上の知識は不要です。そのため、裁判と異なり、自分一人で対応される方も多くおられます。
(3)民事調停のデメリット
民事調停には、以下のようなデメリットがあります。
①相手が欠席すると終了する
裁判では、被告が欠席したときには、原告の請求をすべて認めたものとみなして判決が出されます。そのため、相手が欠席したとしても、必ず結論は出ることになります。
しかし、調停は、あくまでも話し合いの手続きですので、相手が調停に欠席した場合、相手の合意なく解決することはできません。相手を強制的に出席させることもできません。
相手が欠席を繰り返し、調停での解決が困難であると認められたときには、調停では結論が出ることなく終了します。
②合意できなければ解決しない
相手が調停に出席したとしても、当事者同士が納得する解決方法が見いだせないときには、調停は不成立になり終了します。
調停は解決に向けて何度も話し合いをしたものの、結局何も解決しなく時間だけがかかってしまったという事態があり得ます。
(4)民事調停に向いている紛争
このようなメリット・デメリットを踏まえると、調停に向いている紛争としては、事実認識や法解釈などに大きな争いがなく、細かい条件で話し合いが必要なケースなどでしょう。また、当事者同士の信頼関係を傷つけたくない場合なども調停に向いているといえます。
2.民事調停の流れ
民事調停の申し立てをする場合は、以下の流れで進んでいきます。
(1)民事調停の基本的な流れ
①民事調停の申し立て
民事調停を利用するためには、相手の住所地を管轄している簡易裁判所または家庭裁判所に調停申立書などを提出し、手数料を納付します。
②調停期日の決定、呼び出し
申し立てが受理されると、当事者が裁判所に出頭する調停期日の日程が決定され、当事者双方に伝えられます。
③調停期日
申し立てから通常1か月程度で、調停期日が行われます。当事者は、裁判所によって指定された日時に裁判所に出頭します。
調停は、基本的には当事者同士が同席して話し合いを行うのではなく、調停委員がいる部屋に交互に入って話をします。当事者同士が顔を合わせて話し合う必要はありません。
④調停成立または不成立
何度か調停期日を重ねて、お互いに納得できる解決案が見つかったら、その内容を調書に記載し、調停は成立します。話し合いの結果、解決できなかったときには、調停は不成立となり終了します。
(2)民事調停を利用する際には弁護士に相談を
調停のデメリットでも説明したとおり、紛争の種類によっては、調停で解決することが難しいものもあります。また、調停で解決する際にも、裁判となった場合の解決水準を見越したうえで、解決案を考えていかなければなりません。
調停自体はあくまで話し合いであるため自分一人でもできる手続きですが、自身に不利な内容で解決することのないように、まずは専門家である弁護士に相談をしてから進めるとよいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2021年05月18日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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