強盗致死とは|構成要件と法定刑、加害者が未成年の場合の取り扱い

強盗致死とは|構成要件と法定刑、加害者が未成年の場合の取り扱い

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

強盗が人を死に至らしめてしまう「強盗致死」は、刑法に定められた犯罪の中で最も重い部類に属します。死刑または無期懲役となる可能性が極めて高い犯罪です。

家族が強盗致死の疑いをかけられたら、一刻も早く弁護士に相談しましょう。適切な弁護活動が奏功すれば、家族を救える可能性があります。

本コラムでは、強盗致死罪について解説します。

1. 強盗致死とは|構成要件・具体例・法定刑

「強盗致死」とは、強盗の機会に他人を死亡させる犯罪です(刑法第240条)。

(1)強盗致死罪の構成要件

強盗致死罪は、以下の構成要件をいずれも満たす行為について成立します。

  1. 強盗犯人であること
  2. 強盗の機会に他人を死亡させたこと

「強盗犯人」とは、強盗罪・事後強盗罪・昏睡(こんすい)強盗罪の犯人を意味します。

「強盗」「事後強盗」「昏睡強盗」とは、それぞれ以下の行為をいいます(刑法第236条、第238条、第239条)。

【強盗・事後強盗・昏睡強盗とは】

<強盗>

以下のいずれかに該当する行為

  • (a)他人の反抗を抑圧するに足る暴行または脅迫を用いて、財物を強取する行為
  • (b)他人の反抗を抑圧するに足る暴行または脅迫を用いて、財産上不法の利益を得、または他人に財産上不法の利益を得させる行為

<事後強盗>

窃盗犯人が財物の取り返しを防ぎ、逮捕を免れ、または罪跡を隠滅するために、他人の反抗を抑圧するに足る暴行・脅迫をする行為

<昏睡強盗>

他人を昏睡させて財物を盗む行為

「強盗の機会に他人を死亡させた」かどうかは、強盗行為と死亡結果が連続しているかどうか、および強盗の意思が継続している状態で被害者が死亡したかどうかなどによって判断されます。

なお、強盗と被害者の死亡が別の機会に生じた場合には、強盗致死罪は成立しません。その代わりに、強盗罪と殺人罪・傷害致死罪などが別々に成立します。

(2)強盗致死罪に該当する行為の具体例

強盗致死罪に該当する行為としては、以下の例が挙げられます。

(例)

  • コンビニにナイフを持って侵入し、店員にナイフを向けて金を出すように脅した。抵抗する店員と犯人がもみ合っているうちに、犯人が持っていたナイフが店員に刺さり、店員は死亡してしまった。
  • 金品を盗もうとして民家に侵入したところ、住民に見つかって大声を出された。静かにさせるために近くにあった重い棒のようなもので住民を殴ったところ、当たりどころが悪く住民は死亡してしまった。
  • 知人の家に呼ばれた際、眠らせて金品を盗もうとする意図で、知人に対してクロロホルムを吸引させた。ところが、クロロホルムは致死量を超えていたため、吸引した知人は死亡してしまった。

(3)強盗致死罪の法定刑

強盗致死罪の法定刑は「死刑または無期懲役」とされています。刑の減軽が認められる場合を除いて、有期懲役以下の刑となることはありません。強盗致死罪が極めて重い犯罪であることが、厳しい法定刑に反映されています。

強盗致死罪は重罪であるがゆえに、起訴猶予となることはまずありません。検察官が強盗致死罪の嫌疑を確実であると判断した場合は、必ず起訴されると考えるべきです。

また、犯罪には原則として公訴時効が定められており、時効期間が経過すると刑事訴追ができなくなります。しかし、強盗致死罪については公訴時効が撤廃されています(刑事訴訟法第250条第1項)参照)。

したがって、強盗致死罪に当たる行為がなされてからどんなに時間が経過しても、逮捕・起訴される可能性が残る点に注意が必要です。

2. 強盗致死の加害者が少年である場合の取り扱い

強盗致死罪の加害者が20歳未満の者(=少年)である場合は、少年法が適用されます。

(1)少年法に基づく家庭裁判所の審理

少年法では、少年に嫌疑がある犯罪事件(=少年事件)につき、その全件を家庭裁判所に送致するものとされています(少年法第41条、第42条)。

少年事件の送致を受けた家庭裁判所は、少年に対する保護処分の要否を審理します。審理の結果、家庭裁判所が保護処分を必要と判断した場合には、保護観察・少年院送致・児童自立支援施設送致などの処分を行います。

これらの処分は、通常の刑罰とは異なるものです。

(2)強盗致死事件は検察官送致の可能性が高い

ただし強盗致死事件については、16歳以上の少年が犯したものは、原則として検察官へ送致されます(少年法第20条第2項)。

また、14歳以上16歳未満の少年が犯した強盗致死事件についても、罪質・情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、家庭裁判所が検察官へ送致します(同条第1項)。強盗致死罪は極めて重大な犯罪なので、検察官送致が行われる可能性が非常に高いです。

なお、14歳未満の少年が強盗致死罪にあたる行為をした場合は、刑罰を科すことができません(刑法第41条)。この場合は、家庭裁判所による審理の末に、少年院送致または児童自立支援施設送致が決定される可能性が高いです。

(3)18歳未満の犯人に対する死刑は不可

犯罪の時点で18歳未満の者に対しては、死刑を科すことができません。死刑をもって処断すべきときは、無期刑が科されます(少年法第51条第1項)。また、犯罪の時点で18歳未満の者に対しては、無期刑をもって処断すべきときであっても、10年以上20年以下の有期刑を科すことができます(同条第2項)。

したがって、18歳未満の少年が強盗致死罪を犯した場合には、無期懲役または10年以上20年以下の懲役が科されることになります。

(4)実際に起きた少年による強盗致死事件

2024年2月に、中学生3人が共謀して大学生の男性から金品を奪おうとし、逃げる際にその男性が屋上から転落して死亡した事件が報道されました。中学生3人のうち、2人は強盗致死の疑いで逮捕されました。もう1人は事件当時13歳だったため、犯罪の責任を問うことができず、児童相談所に通告されました。

逮捕された2人については、少年法に基づき家庭裁判所に送致されますが、強盗致死罪の重大性に鑑み、検察官送致となる可能性が高いと考えられます。検察官送致がなされた場合は、大人と同様の刑事裁判によって審理され、無期または10年以上20年以下の懲役が科される見通しです。

出典:讀賣新聞オンライン「脅迫された大学生が屋上から転落死、中学生2人を強盗致死容疑で逮捕…別の中学生を児相に通告

3. 強盗致死と強盗殺人の違い

強盗致死と同様に、強盗の機会に他人を死亡させる犯罪として「強盗殺人」があります。

強盗致死罪と強盗殺人罪の違いは、死亡の結果に対する故意の有無です。強盗致死については、強盗の故意は認められますが、死亡の結果に対する故意は認められません。これに対して強盗殺人では、死亡の結果に対する故意も認められます。

強盗致死と強盗殺人の罰条は同じ「強盗致死傷罪(刑法第240条)」で、いずれも法定刑は「死刑または無期懲役」です。

ただし、犯罪としての悪質性は強盗殺人の方が高いといえます。そのため、強盗殺人では強盗致死よりも、死刑が選択される可能性が高いです。

4. 家族が強盗致死罪で逮捕されたら弁護士に相談を

家族が強盗致死罪の疑いで逮捕されてしまったら、すぐに弁護士へ相談しましょう。弁護士に依頼すれば、強盗致死罪の適用を回避する(たとえば、窃盗+傷害致死とする)ための弁護活動や、遺族との示談交渉など、幅広い角度から依頼者を守るための対応を行ってもらえます。

強盗致死罪による死刑を含む厳罰を回避するためには、適切な刑事弁護が必要不可欠です。家族が強盗致死罪で逮捕されたら、速やかに弁護士へご相談ください。

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