詐欺の慰謝料とは? 示談・民事訴訟での請求の可否、金額の相場などを解説
詐欺被害を受けた場合、加害者に対して、だまし取られたお金を返すよう請求できるだけでなく、詐欺により被った精神的苦痛に対する慰謝料も請求できる可能性があります。詐欺事件での慰謝料の金額は、さまざまな要素に基づいて算定しますので、ある程度の相場を抑えておくことが大切です。
本コラムでは、詐欺事件での慰謝料請求に関する基本と慰謝料の相場について解説します。
1. 詐欺の加害者に「慰謝料」を請求できる事情
まず、詐欺事件に関する慰謝料の基本的な知識について説明します。
(1)そもそも慰謝料とは何か
慰謝料とは、違法な行為により精神的苦痛を被った被害者に対して支払われる賠償金の一種です。精神的苦痛を被った被害者は、民法709条を根拠に加害者に対して、慰謝料を請求することができます。
詐欺事件では、加害者によってお金をだまし取られていますので、被害者は、だまし取られたお金だけでなく、慰謝料も請求することが可能です。
(2)詐欺の刑事事件では加害者側から示談交渉を持ちかけられることが多い
詐欺事件で加害者が検挙された場合、加害者側から示談交渉を持ちかけられることが多いです。
加害者が示談交渉を持ちかける主な目的は、示談を成立させることで、早期の身柄解放、不起訴処分、刑罰の軽減などの有利な処分を獲得することにあります。より有利な処分を獲得するために、本来の被害金に加えて、慰謝料も支払うことが多いです。
(3)詐欺事件の起訴率や起訴猶予率
令和5年(2023年)の犯罪白書によると、検察庁での詐欺罪の終局処理人員は、以下のようになっています。
起訴 | 不起訴 | ||||
---|---|---|---|---|---|
起訴総数 | 公判請求 | 略式命令請求 | 不起訴総数 | 起訴猶予 | その他の不起訴 |
7669件 | 7669件 | ― | 8324件 | 5108件 | 3216件 |
この統計資料によると、詐欺罪で終局処分の対象となった事件数は、1万5993件あり、起訴率は約48%、起訴猶予率は約32%となっています。
示談が成立していることは、不起訴処分(起訴猶予)へと傾く事情の一つになりますので、この統計資料で不起訴となった事案の中には、示談成立が理由となるものも多数含まれているといえるでしょう。
(4)刑事事件で示談が成立しなくても、民事事件として慰謝料請求可能
刑事事件で加害者から示談交渉を持ちかけられたとしても、加害者側の条件によっては示談に応じられず、示談不成立となることもあります。
このような場合でも、被害者としては、民事事件としてだまし取られた被害金と慰謝料を請求することができます。
2. 詐欺罪における「慰謝料」の相場とは?
詐欺事件では、加害者に対して、どの程度の慰謝料を請求することができるのでしょうか。以下では、詐欺罪における慰謝料の相場を説明します。
(1)詐欺罪における慰謝料相場は数十万円程度
詐欺罪における一般的な慰謝料相場は、数十万円程度です。
ただし、これはあくまでも一般的な相場を想定した慰謝料額になりますので、被害金額が高額なケースでは、慰謝料額も相場を上回る高額な慰謝料になることもあります。
(2)詐欺罪での慰謝料の算定要素
慰謝料は、被害者に生じた精神的苦痛を金銭に換算したものになりますので、明確な算定基準があるわけではありません。しかし、実務では、主に以下のような事情を総合的に考慮して慰謝料の金額を算定するのが一般的です。
①被害金額
被害者が詐欺によりだまし取られた金額が大きいほど、被害者に生じた精神的苦痛も大きくなりますので、慰謝料が高額になる要素となります。
②被害者の実害の程度
お金をだまし取られたことにより精神的苦痛を被った被害者がうつ病などの精神疾患になってしまったなど実害が生じている場合には、慰謝料が高額になる要素となります。
③被害者の感情
被害者の処罰感情の程度も、慰謝料の金額を左右する要素となります。
たとえば、オレオレ詐欺でだまされたケースよりも、結婚詐欺でだまされたケースの方が信頼していた相手に裏切られたという面が強いため、被害者の処罰感情も強くなるといえます。
④加害者の収入、社会的地位
加害者の収入が多ければ、高額な慰謝料であっても支払うことができます。また、加害者の社会的地位が高いと、その地位を守るために高額な慰謝料を支払っても解決したいと考えるはずです。
このように加害者の収入や社会的地位といった加害者側の事情も、慰謝料の金額を左右する要素となります。
3. 「慰謝料」の請求は弁護士への相談が必須
詐欺事件での慰謝料請求をお考えの方は、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
(1)相場を踏まえた適正な慰謝料を請求できる
具体的な慰謝料額は、同種事案の裁判例で認定された慰謝料額などを参考に決められますので、裁判例の理解が不可欠となります。しかし、一般の方では、過去の裁判例についての知識や情報を持ち合わせていませんので、適切な金額を算定するのは困難といえます。
弁護士であれば、豊富な知識と経験に基づいて、適切な慰謝料相場を算定することができますので、加害者に対してどの程度の慰謝料を請求できるかの判断に迷うときは、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
(2)加害者との交渉を任せることができる
加害者に対して慰謝料請求をする場合、基本的には被害者自身で対応していかなければなりません。しかし、お金をだまし取られた被害者が加害者と直接交渉するのは、精神的負担も大きく、知識や経験がない状態で交渉に臨んでも、新たな示談金詐欺の被害に遭うリスクもあります。
このようなリスクを回避するためにも、加害者との示談交渉は、弁護士にお任せください。弁護士であれば、被害者に代わって加害者との交渉を行うことができますので、被害者自身の負担を軽減しながら、適正な条件で示談をまとめられる可能性が高まるといえます。
ご自身で対応するのが不安に感じる方は、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
(3)裁判になった場合の対応も任せることができる
加害者との示談交渉が決裂した場合でも、民事裁判により慰謝料の請求を行うことができます。しかし、裁判では、被害者の側で詐欺の事実及び被害額の立証を行っていかなければなりませんので、法的な知識や経験がない方では適切に訴訟手続きを進めていくことができません。
民事裁判の手続きは、一般の方では対応が難しい手続きといえますので、専門家である弁護士に任せるのが安心です。弁護士に民事裁判の手続きを任せれば、適切に詐欺被害の立証を行うことができますので、最大の効果を期待できるでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月18日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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