傷害罪の示談金相場|示談交渉の流れと交渉のポイント
他人に暴力を振るってけがをさせてしまったら、示談交渉によって解決を図りましょう。適正な金額で示談を成立させるためには、弁護士に相談することをおすすめします。
本コラムでは、傷害罪の示談金について、金額の目安や示談交渉の進め方などを解説します。
1. 傷害罪の示談とは
「示談」とは、トラブルの当事者同士が和解をして、解決方法を合意することをいいます。傷害事件についても、被害者と加害者の間で示談が行われることがあります。
(1)示談のメリット・デメリット
示談のメリットは、トラブルを早期に解決できる点です。
傷害罪は損害賠償の対象となるため、被害者が加害者に対して訴訟を提起し、長期間にわたって争いが続くケースがよくあります。示談が成立すれば、当事者間ではその時点で解決を得ることができます。
また、他人にけがをさせる行為は「傷害罪」(刑法第204条)に該当し、加害者は処罰される可能性があります。
被害者との示談が成立すれば、そのことが加害者(被疑者)にとって有利な事情として考慮され、刑事事件に関する処分が軽くなることがあります。
その反面、示談は傷害の罪を認めることが前提になるので、罪を否認することは難しくなります。
また、示談金額は当事者の合意によって決まるところ、相場よりも高い金額で合意してしまうリスクもある点に注意が必要です。
(2)示談が成立しやすいケース・難しいケース
傷害罪に関して示談成立が見込めるかどうかは、以下のような要素によって決まります。
- 被害者と加害者が提示する示談金額の差
- 被害者に加害者の謝罪を受け入れる気持ちがあるかどうか
- 代理人弁護士の有無
など
被害者と加害者が提示する示談金額にそれほど大きな差がなく、かつ加害者が真摯(しんし)に謝罪を尽くし、被害者がそれを受け入れていれば、示談が成立する可能性は高いでしょう。
これに対して、双方が主張する示談金額に大きな差がある場合や、そもそも被害者が謝罪を受け入れない場合は、示談成立の可能性は低いと考えられます。
なお一般的には、加害者本人が直接交渉するよりも、代理人弁護士を通じて交渉した方が、示談成立の可能性が高まると考えられます。
加害者に対しては怒りの感情が先立ちやすいところ、代理人弁護士に対しては直接怒りを向けることなく、冷静に対応する被害者が多いためです。
2. 傷害罪の示談金相場
傷害罪に関する示談金の適正額は、被害者に生じた損害を積算した額を目安に定まります。
(1)示談金の内訳
傷害罪の示談金には、主に以下の項目などが含まれます。
-
治療費
けがの治療にかかる費用です。医療機関で支払う費用や、薬局で支払う費用などが含まれます。
-
通院交通費
けがの治療のために通院する際にかかる交通費です。
-
入院雑費
入院中に日用品などを購入するための費用です。1日あたり1500円程度が認められます。
-
装具・器具購入費
けがの治療などに必要な装具や器具を購入するための費用です。
-
休業損害
けがの影響で仕事を休んだ場合に、減少した収入を補塡(ほてん)する賠償金です。
-
入通院慰謝料
けがをして入院または通院を強いられたことによる、精神的な損害を補填する賠償金です。
-
後遺障害慰謝料
けがが完治せず後遺症をもたらしたことによる、精神的な損害を補填する賠償金です。
-
逸失利益
けがが完治せず後遺症をもたらして労働能力が失われた場合に、将来にわたって減少する収入を補填する賠償金です。
(2)ケース別|示談金額の目安
傷害罪に関する示談金額の目安について、3つの例を示します(月収30万円程度の被害者を想定)。
<ケース1|全治1週間程度の場合>
※通院2回程度
治療費 | 5000円 |
---|---|
通院交通費 | 1000円 |
休業損害 | 2万円 |
入通院慰謝料 | 19万円 |
計:21万6000円
<ケース2|全治3か月程度の場合>
※入院2週間、通院2か月半(10回)程度
治療費 | 20万円 |
---|---|
通院交通費 | 5000円 |
入院雑費 | 2万1000円 |
休業損害 | 20万円 |
入通院慰謝料 | 69万円 |
計:111万6000円
<ケース3|全治6か月程度で、14級相当の後遺障害が残った場合>
※入院1か月、通院5か月(20回)程度
治療費 | 40万円 |
---|---|
通院交通費 | 1万円 |
入院雑費 | 4万5000円 |
装具・器具購入費 | 3万円 |
休業損害 | 40万円 |
入通院慰謝料 | 141万円 |
後遺障害慰謝料 | 110万円 |
逸失利益(5年分) | 82万4400円 |
計:421万9400円
被害者のけがが重症であればあるほど、高額の示談金を受け入れなければ示談成立は難しくなります。
特に、被害者に重篤な後遺症をもたらした場合は、数千万円以上の示談金を提示されるケースもあるので注意が必要です。
3. 傷害罪の示談交渉の進め方
傷害罪の示談交渉の進め方について、手続きの流れ・自分で示談交渉を行う場合の注意点・弁護士に依頼するメリットを解説します。
(1)示談交渉の流れ
加害者側から傷害罪の示談交渉を試みる場合は、まず被害者の連絡先を把握しなければなりません。
被害者の連絡先が分からない場合は、担当の検察官に聞いてみましょう。検察官は被害者に確認をとり、許可が出れば被害者の連絡先を教えてくれることが多いです。
被害者の連絡先が分かったら、実際に郵便などで被害者へ連絡しましょう。返信があれば示談交渉を始め、金額面などをすり合わせながら合意を目指します。
示談の合意が得られたら、その内容をまとめた示談書を締結し、被害者に対して示談金を支払いましょう。
示談成立後は、起訴前であれば検察官に、起訴後であれば裁判所に、示談書などの資料を提出します。示談成立の事実が考慮され、不起訴や執行猶予の可能性が高まります。
(2)自分で示談交渉を行う場合の注意点
加害者自身が示談交渉を行う際には、被害者が受けた損害や心情面に最大限配慮すべきです。
示談金額は、被害者に生じたと思われる損害を積算した上で、それと大きく異ならない額を提示すべきでしょう。また、被害者に対して真摯な謝罪の意を示すことも大切です。
被害者は、暴行を受けたことに大きなショックを受け、加害者本人からの示談の申し入れを受け入れないケースも多いです。被害者に拒否された場合は、無理に示談交渉を進めようとするのではなく、引き下がって弁護士に相談しましょう。
(3)示談交渉を弁護士に依頼するメリット
傷害罪の示談交渉は、弁護士に依頼して代理で行ってもらうことをおすすめします。
弁護士が代理人として交渉すれば、被害者から怒りの感情を直接ぶつけられることが少なくなります。加害者にとっては精神的なストレスが軽減されるほか、示談交渉がスムーズに進みやすくなる点が大きなメリットです。
示談金額についても、弁護士のアドバイスを踏まえて検討すれば、実際に被害者が受けた損害の程度に応じた適正額を提示することができます。
相場からかけ離れた高額の示談金を受け入れてしまうことがなくなりますし、被害者側にとっても納得できる金額を提示することができるでしょう。
傷害罪の示談交渉は、弁護士にご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年12月02日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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