- (更新:2024年12月05日)
- 犯罪・刑事事件
詐欺罪の「時効」とは?時効期間、起算点、民事との違い等を解説
他人を騙して金品をだまし取った場合は、詐欺罪の責任を問われるおそれがあります。
公訴時効期間が経過すれば詐欺罪で起訴されることはなくなりますが、時効成立まで逃げ切ろうとするのは限界があります。詐欺罪に当たる行為をしてしまったら、お早めに弁護士へご相談ください。
本記事では、詐欺罪の時効について詳しく解説します。
1. 詐欺罪の時効とは
詐欺罪を含む犯罪には「公訴時効」が設けられています。
公訴時効とは、一定の期間が経過すると、検察官が犯罪の被疑者を起訴できなくなる制度です。時間の経過によって社会的な処罰感情が薄れることや、犯罪の証拠が散逸することなどを理由に、一部の重大犯罪を除いて公訴時効が認められています。
詐欺罪についても、公訴時効期間が経過すると、被疑者は刑事事件として訴追されることがなくなります。
(1)詐欺罪とは
詐欺罪とは、他人を騙(だま)して金品を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする行為について成立する犯罪です(刑法246条1項、2項)。
他人に対して嘘を言い、その嘘に騙された相手から金品の交付や債務の免除などを受けた場合に、詐欺罪が成立します。
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」で、窃盗罪や恐喝罪などと並んで重く処罰されます。
(2)詐欺罪の公訴時効期間は7年
犯罪の公訴時効期間は、法定刑などに応じて決まります。
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」なので、公訴時効期間は7年とされています(刑事訴訟法250条2項4号)。
つまり、詐欺行為が終わった時から7年が経過すると、詐欺罪によって刑事訴追されることがなくなります。
なお犯罪については、公訴時効とは別に「刑の時効」が設けられています(刑法31条)。
刑の時効とは、被告人に対する刑の言い渡しが確定した後、一定期間が経過した場合には刑の執行を免除する制度です。しかし、実際には死刑以外の刑は確定すれば速やかに執行されるので、刑の時効が問題になることはほぼありません(死刑については、刑の時効が認められていません)。
2. 公訴時効の起算点と停止
公訴時効が成立したかどうかを判断する際には、公訴時効の起算点、および公訴時効が停止されるケースに注意しなければなりません。
(1)公訴時効期間の起算点は「犯罪行為が終わった時」
公訴時効期間の起算点は、犯罪行為が終わった時とされています(刑事訴訟法253条1項)。
詐欺罪の場合は、嘘に騙された被害者から、犯人が金品の交付や債務の免除を受けた時が公訴時効の起算点となります。詐欺が未遂に終わった場合(=詐欺未遂罪)は、被害者を騙そうとする行為(=欺罔(ぎもう)行為)が終了した時点で公訴時効の起算点です。
ただし共犯の場合には、最終の行為が終わった時から、すべての共犯に対して公訴時効の進行が始まるものとされています(同条2項)。
なお、民事上の消滅時効(後述)とは異なり、刑事上の公訴時効については、詐欺被害者が被害の事実や犯人を知っているかどうかにかかわらず進行します。
(2)公訴時効が停止されるケース
以下のいずれかの事由が発生した場合には、それぞれ対応する期間において、犯罪の公訴時効の進行が停止します(刑事訴訟法254条、255条)。
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当該事件について、検察官が被疑者(被告人)に対して公訴を提起したこと
→公訴の提起後、管轄違いまたは公訴棄却の裁判が確定した時まで、公訴時効の進行が停止します。
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当該事件について、検察官が共犯者に対して公訴を提起したこと
→公訴の提起後、当該事件についてした裁判が確定した時まで、公訴時効の進行が停止します。
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犯人が国外にいること
→国外にいる期間、公訴時効の進行が停止します。
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犯人が逃げ隠れしているため、有効に起訴状の謄本の送達または略式命令の告知ができなかったこと
→逃げ隠れている期間、公訴時効の進行が停止します。
特に、国外へ逃亡して公訴時効の成立を待とうとするケースが見られますが、国外逃亡中は公訴時効の進行が停止する点に注意が必要です。
3. 公訴時効が成立しても、民事上の責任が残ることがある
詐欺罪の公訴時効が成立すれば刑事訴追されることはなくなりますが、民事上の不法行為に基づく損害賠償責任や不当利得に基づく返還義務が残ることがあります。
(1)詐欺をした人が負う民事上の責任
詐欺によって金品をだまし取ったり、財産上不法の利益を得たりした人は、被害者に対して以下の民事上の責任を負います。
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不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)
詐欺行為によって被害者に与えた損害を賠償する責任を負います。
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不当利得に基づく返還義務(民法703条、704条)
詐欺行為によって法律上の原因なく得た利益を、被害者に返還する義務を負います。
民事上の損害賠償責任や不当利得に基づく返還義務には、民事上の消滅時効が適用されます。
消滅時効とは、一定期間が経過すると権利を行使できなくなる制度です。犯罪の公訴時効と民事上の消滅時効は、起算点や期間が異なっています。そのため、詐欺罪の公訴時効が完成しても、不法行為や不当利得に基づき、被害者に対して金銭を支払う義務が残るケースがある点に注意が必要です。
(2)不法行為・不当利得の消滅時効
不法行為に基づく損害賠償請求権と、不当利得返還請求権は、それぞれ以下の期間が経過すると時効により消滅します。
不法行為に基づく損害賠償請求権 | 以下のいずれかの期間が経過した時(民法724条) ①被害者または法定代理人が、損害および加害者を知った時から3年 ②不法行為の時から20年 |
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不当利得返還請求権 | 以下のいずれかの期間が経過した時(民法166条1項) ①債権者(被害者)が権利を行使できることを知った時から5年 ②権利を行使できる時から10年 |
ただし、内容証明郵便の送付や訴訟の提起などがなされた場合は、消滅時効の完成が猶予されます。さらに、訴訟などによって責任が確定した場合は、消滅時効が更新されてゼロからカウントし直されます。
4. 公訴時効成立まで逃げ切ろうとするのは限界がある|弁護士に相談を
他人に対して詐欺行為をした後、詐欺罪の公訴時効成立まで逃げ切って処罰を免れようとするのは限界があります。特に被害金額が大きい詐欺事件については、捜査機関が徹底的に捜査を行うため、いずれ刑事訴追される可能性が非常に高いです。国外逃亡を試みても、公訴時効の進行が停止するため、将来訴追される可能性はずっと残ります。
詐欺罪による処罰を軽減するためには、自首をすること、および被害弁償をすることが大切です。これらの事情は被疑者(被告人)にとって有利に考慮され、不起訴処分や執行猶予付き判決につながることがあります。
弁護士に相談すれば、刑事弁護や民事で訴えられた場合の対応などを依頼できます。詐欺による責任をできる限り軽減するために、これからやるべきことについてアドバイスを受けられます。もし詐欺行為をしてしまったら、速やかに弁護士へご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年12月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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