万引きの時効は何年で成立する? 刑事と民事における時効の違い
万引きには刑事事件および民事事件としての時効がありますので、一定期間が経過すると犯罪として処罰されることはなくなり、お店から損害賠償請求をされることもありません。
しかし、万引きしてその場から逃げ切れたとしても、後日逮捕される可能性もありますので、「時効待ち」ではなく示談による解決を目指した方がよいでしょう。
本コラムでは、万引きの時効について、刑事事件および民事事件の両面からわかりやすく解説します。
1. 万引きの時効はどのくらい?
万引きの時効には、刑事事件としての時効と民事事件としての時効の2種類があります。以下では、それぞれの時効についてみていきましょう。
(1)刑事事件での時効|公訴時効
刑事事件での時効を「公訴時効」といいます。公訴時効とは、一定期間が経過すると犯人を処罰できなくなる制度のことです。公訴時効が成立すると、検察官は事件を起訴することができなくなりますので、万引きで処罰されることもなくなります。
万引きをすると窃盗罪が成立し、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。公訴時効は、主に法定刑の上限により時効の年数が定められており、万引き(窃盗罪)の場合は、7年が公訴時効期間となります。
なお、公訴時効は、犯罪が終わったときからカウントが始まりますので、商品の会計をせずにお店を出た時点から公訴時効期間がスタートします。
(2)民事事件での時効|損害賠償請求権の消滅時効
民事事件での時効を「消滅時効」といいます。消滅時効とは、一定期間権利行使がない場合にその権利を消滅させる制度のことです。
万引きは、違法な行為によりお店に損害を与えるものですので、民法上の不法行為が成立し、被害者は加害者に対して、損害賠償請求をすることができます。
しかし、消滅時効が成立し、時効の援用をすると、被害者の損害賠償請求権は消滅時効により失われてしまいますので、加害者はお店に賠償をする必要がなくなります。
なお、万引きの消滅時効の期間およびカウントがスタートする時点は、以下のとおりです。
- 被害者が万引きされたことおよび万引き犯を知ったときから3年
- 万引きがされたときから20年
2. 公訴時効は停止する可能性がある
一定期間が経過すると公訴時効の完成により犯罪として処罰されることはありません。しかし、公訴時効は、一定の事由がある場合、期間のカウントが停止することがあります。
(1)公訴時効の停止とは
公訴時効の停止とは、一定の条件を満たした場合に、公訴時効期間の進行が停止する制度です。停止した公訴時効は、一定の事由が終了すると再度期間のカウントがスタートします。
万引きの公訴時効は7年と定められていますが、途中で公訴時効が停止していると、7年を経過したとしても公訴時効は完成せず、万引きとして処罰される可能性があります。
(2)公訴時効が停止する条件
公訴時効が停止する条件として刑事訴訟法では、以下の3つが定められています。
-
公訴提起があった場合
検察官により公訴提起(起訴)されると、公訴時効はその時点で停止します。その後、管轄違いまたは公訴棄却の裁判が確定すると、再度公訴時効のカウントはスタートします。
-
犯人が国外にいる場合
犯人が国外にいる間は、公訴時効は停止します。つまり、海外逃亡していたとしても公訴時効は完成することはありません。
犯人が再び国内に戻って来ると、再度公訴時効のカウントがスタートします。
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犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の送達ができない場合
犯人が国内にいても逃げ隠れているため、有効に起訴状の送達などができない場合は、公訴時効は停止します。
3. 万引き事件は、逮捕前の示談交渉が望ましい
万引き事件は、その場から逃げきれたとしても、防犯カメラなどから犯人が特定され、後日逮捕となる可能性があります。そのため、時効待ちではなく、被害者との示談による解決を目指すようにしましょう。
(1)万引きで示談を成立させることで得られるメリット
示談とは、加害者が被害者に対して、一定の金銭の支払いをすることで、被害者が刑事処罰を求めない意思を表示することをいいます。万引きで示談を成立させると、以下のようなメリットがあります。
①刑事告訴の回避
示談が成立すれば万引きによるトラブルは解決済みとなりますので、被害者から刑事告訴されるのを回避することができます。また、すでに告訴されている事件については、告訴を取り下げてもらうことができます。
②早期の身柄解放
示談が成立すると、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれは少なくなります。そのため、万引きにより逮捕・勾留されている場合、示談が成立すれば早期に身柄を解放される可能性が高くなります。
③不起訴処分の獲得
被害者との間で示談が成立しているかどうかは、検察官が起訴または不起訴を判断する際の重要な要素となります。検察官による処分決定前に示談を成立させれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。
④民事責任の減免
刑事事件の示談では、民事上の損害賠償に関する問題も一緒に解決することができます。
示談により万引きで被害者が被った損害の支払いを行えば、被害者の損害の全部または一部が回復されますので、その後民事上の責任を追及されるリスクが少なくなります。
(2)弁護士に依頼した場合の示談交渉の流れ
弁護士に依頼すると以下のような流れで示談交渉を行ってくれます。
①被害者に対して連絡
まずは被害者に連絡をして、示談の意向がある旨を伝えます。
②被害者との間で示談条件の交渉
被害者が示談交渉に応じてくれる場合は、被害者との間で示談金の額、支払い方法、支払い時期などの詳細な示談条件を決めていきます。
③示談書の作成
被害者との間で示談条件の合意に至ったときは、示談書を作成して、お互いに示談書の取り交わしを行います。
④示談金の支払い
示談書記載の合意内容にしたがって、加害者から被害者に対して示談金の支払いを行います。
⑤捜査機関に示談の報告
示談が成立したという事情は、加害者にとって有利な情状となりますので、弁護士から捜査機関に対して示談の報告を行います。
(3)弁護士に示談交渉を依頼するメリット
弁護士に示談交渉を依頼すると以下のようなメリットがあります。
①精神的な負担を軽減できる
弁護士に示談交渉を依頼すると、被害者との交渉をすべて弁護士に任せることができます。
被害者と示談交渉をするのは本人にとっては精神的負担も大きいですが、弁護士に依頼することでそのような負担を大幅に軽減することができます。
②示談交渉をスムーズに進められる
弁護士は、示談交渉の方法や流れを熟知していますので、被害者との示談交渉をスムーズに進めることができ、早期に示談を成立させられる可能性があります。
刑事事件はスピードが命ですので、早期に示談を成立させるためにも弁護士に依頼した方がよいでしょう。
③適正な条件で示談を成立させられる
万引きの示談金としては、盗んだ商品の価額に一定程度の迷惑料などを加算して支払うことが多いです。弁護士であれば万引きの示談金相場を熟知していますので、適正な条件で示談を成立させることが可能です。
- こちらに掲載されている情報は、2024年12月12日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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