未成年者の犯罪(少年事件)で問われる親の責任を弁護士が解説
未成年者も、罪を犯せば逮捕されることがあります。もしも未成年の子どもが逮捕されたら、どのような処分が下されるのでしょうか。また、未成年者の子どもが罪を犯した場合、親はどれだけの責任を問われるのか、ご存じの方は少ないでしょう。
本コラムでは、未成年の犯罪で問われる親の責任について見ていきましょう。
1. 未成年者が罪を犯した場合に責任を負う人物とは
未成年が罪を犯した場合に責任を負うべき人物と、責任の内容について解説します。
(1)未成年が犯罪を起こした場合の、損害賠償義務は親が負う
未成年者が万引きや傷害などの事件を起こした際に責任を負うのは、保護者(親)です。
ただし、保護者が負う責任とは、子どもの代わりに罪を償うことではありません。保護者が負う責任は、子どもが被害者に与えた損害を賠償することです。たとえば、万引きの場合は万引きした物の弁済、傷害の場合は治療費や通院費、精神的苦痛に対する賠償金の支払いなどを指します。
(2)子どもが負う責任
罪を犯した未成年者の処分については、同じ未成年者でも年齢によって異なります。
①13歳以下の未成年の場合
13歳以下の未成年が法に触れる行為をした場合、触法事件といいます。この場合は児童相談所長に事件が送致されることがあります。児童相談所による調査によって、家庭裁判所での審判が必要だと判断されれば、家庭裁判所に送致されます。
②14歳以上の未成年の場合
14歳以上の子どもが事件を起こした場合は、家庭裁判所に送致されて少年審判が行われます。殺人など重大な犯罪の場合は、検察官に逆走されて成人の事件と同様の手続きによって事件が裁かれることもあります。
2. 少年事件の手続きの進み方を解説
14歳以上の未成年が罪を犯した場合、逮捕されてから検察官に送致されるまでは成人と同様の手続きが進められます。
その後は、家庭裁判所にて処分が決定されます。家庭裁判所が少年審判の必要性を判断し、必要と判断すれば少年審判が始まります。少年審判の必要性を判断する間は少年を自宅へ戻すケースもありますが、少年の身柄を少年鑑別所で拘束する場合もあります。
(1)14歳以上の罪を犯した未成年への処分内容
少年法では14歳以上の未成年が罪を犯した場合は、未成年を更生するために以下の処分が規定されています。これらの処分は未成年を罰するためのものではなく、教育、更生するためのものです。
①保護観察
保護観察とは、保護観察官や保護司の指導を受け、日常生活を送りながら更生を目指す処分です。保護観察官や保護司との面会が月に1~2回行われ、近況の報告をしたり指導を受けたりします。原則として少年が20歳に達するまでですが、決定のときから少年が20歳に達するまでの期間が2年に満たないときは2年とされています。もっとも、少年の改善更生に資すると認められるときは、期間を定めて保護観察を一時的に解除することができ、また、保護観察を継続する必要がなくなったと認められるときは、保護観察は解除されます。
②少年院送致
通常の生活へ戻れば非行を繰り返すおそれが高い場合には、少年を少年院へ収容します。強制的に少年の自由を奪う処分であることから、少年事件で下す処分の中でもっとも重い保護処分です。
少年院に収容された少年は、矯正教育課程の中で生活指導や教科指導、職業指導、体育指導、特別活動指導を受けます。法定収容期間は、原則として20歳までです。ただし、少年院送致決定のあった日から1年を経過していないときは、その日から起算して1年間に限り収容を継続することができます。
③児童自立支援施設等送致
児童自立支援施設等送致とは、罪を犯した少年が原則18歳未満の場合に科される処分です。少年の家庭環境に問題がある場合は、自宅へ帰さずに児童自立支援施設や児童養護施設へ収容して少年を保護し、更生を図ります。
④検察送致(逆送)
検察送致(逆送)とは、検察へ送致する処分を指します。刑事罰を科す必要があると判断された少年は、家庭裁判所から検察へ送致されます。検察送致にいたるケースとは、たとえば少年が殺人事件を起こした場合や、調査・審判の間に少年が20歳以上になった場合などです。
検察送致になった事件のほとんどは、起訴されて刑事裁判が開かれます。
⑤不処分
不処分とは、何も処分を受けないことです。
今回が初めての非行だった場合や本人が深く反省している場合など、非行を繰り返す可能性が極めて低い場合や被害者との間で示談が成立している場合には不処分となる可能性があります。
処分を受けることなく日常生活へ戻れるため、少年審判ではこの処分を目指すことになるでしょう。
3. 少年事件で逮捕された場合に弁護士に依頼するメリット
未成年者が逮捕され場合に弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。
(1)逮捕後の接見が可能
未成年者であっても、事件の内容や状況によっては警察に逮捕されるおそれがあります。逮捕されると、最長で48時間、さらに検察に送致され勾留の有無が決定するまでの24時間の間は身柄を留置場などに拘束されたまま、取り調べを受けることになります。
この間、たとえ未成年者であっても、ご家族や友人などと面会をしたり連絡を取ったりすることができません。しかし、弁護士であれば自由な接見(直接会って話をすること)が認められています。
ご家族は、弁護士を依頼することによって、接見をしてもらい、ご家族からのメッセージを伝えてもらうことができます。孤独な思いをしているお子さんにとって、大きな心の支えとなるでしょう。
さらに弁護士は、接見を通じて取り調べの対応について、アドバイスを行います。やってもいない罪を認めてしまったり、味方がいない不安から自暴自棄になってしまったりする事態を回避することができるでしょう。
①身柄拘束からの解放を目指せる
罪を犯したことが明白であり、その犯罪が悪質な場合は少年鑑別所へ送致される可能性もあります。拘束時間が長引けば、学校によっては留年や退学などの厳しい処分を受けるおそれもあるでしょう。
一方、なるべく早い段階で弁護士が活動を始めれば、少年の身柄を解放し、留年や退学といった事態を防げる可能性が高まります。
②示談交渉
弁護士は本人の代理人として示談交渉を行います。早い段階で示談を成立させることができれば、処分の決定にもよい影響を与えられる可能性を高めることができます。
本人の身柄を一日も早く解放することはもちろんのこと、被害者へ支払う金額を適切な水準に抑えるためにも一刻も早く弁護士へ相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年06月30日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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