“ネリカン”は嫌だ!? 少年鑑別所に行かない方法 ~逮捕勾留:少年編~
「自分は逮捕されるんですか!?」
犯罪の疑いをかけられた時、真っ先によぎる不安だと思います。実際、日々の相談を受けていても、逮捕されるのかという不安を抱えて相談される方は多いです。3日間の逮捕、そして20日間の勾留は、あらゆる犯罪について行うわけではなく、証拠をつぶす罪証隠滅と逃亡を防ぐために行うこと、その目的に比して勾留されることによる不利益が大きくなく「勾留の必要性」が認められることを条件として、裁判によって決定されることは、以前の基礎知識編(逮捕・勾留からの自由を勝ち取れ~身柄解放:基礎知識編~)で説明しました。
今回は、そのような逮捕・勾留の応用編として、「少年鑑別所」に行くのを回避するための方法等について、具体的なエピソードを交えながら紹介したいと思います。
1. 少年は逮捕勾留段階においてもチャンスが多い
少年であっても、逮捕勾留された場合は、大人と同じように警察署の留置所に入り、捜査の手続きを受けることになります。もっとも少年法48条1項では、「やむを得ない」場合にのみ勾留状を発行することができるとしており、成人よりも勾留を認めるハードルを上げています。
また、後述する観護措置として、鑑別所にも4週間ばかりいることになるため、成人なら20日の勾留を当然視している捜査機関も、少年だとできる限り10日で捜査を終えようとするなど、成人の時よりは謙抑的です。
本当に法律が定める「やむを得ない」という言葉通り、勾留を例外的に扱っているかはともかく、成人よりも交渉の余地が多いのは確かであるため、逮捕直後から弁護士を雇うメリットは、逮捕勾留段階でも大きいです。また、この後述べるように、鑑別所に行かないためには、逮捕勾留されている間の準備が大切になります。
2. 少年鑑別所は、観護措置によって行く、裁判までいる場所
東京であれば、練馬にあることから「ネリカン」とも呼ばれる少年鑑別所へは、捜査機関による捜査が終わると、家庭裁判所の観護措置に関する裁判で、入るかどうかが決まります。
時々、少年院と並べて述べられることもありますが、少年鑑別所は、あくまで少年審判の結論を出すまでそこにいて、日常生活の様子を観察したり、心理テストなどから少年の特性を発見する場所であり、入るから悪いということではありません。
ただ、この鑑別所の良い側面が、「身柄」という観点からは、障害にもなります。少年鑑別所は、勾留と同じ罪証隠滅や逃亡のおそれに加えて、「鑑別の必要性」という理由でも入れることができます。もう少し具体的に言えば、その少年をもっとよく知る必要があると裁判所が考えれば、鑑別所に入ることになるのです。
3. 鑑別所で知りたいことを先に明らかにせよ
当たり前といえば当たり前ですが、鑑別所に入りたくないという希望をかなえるには、鑑別所に入れなくてもその少年のことはある程度分かっており、後は家庭裁判所における調査官の調査で十分と思ってもらう必要があります。
そのためには、弁護士が逮捕勾留段階から、少年の特徴・特性を聴取し、分析し、観護措置の裁判時点で資料を提出する必要があります。このような点については、犯罪があったかを調べる捜査機関の関心事ではないため、弁護士しか調べて聴き出すことはできません。また、成人と少年との違いを強く意識できている弁護士でないと、早い段階から着手することはできません。
裁判所が鑑別所を通して特に知りたいのは、ざくっと言えば「なぜそのような犯罪を行ってしまったのか」「自分が行ったことについて少年が何を考えているか」です。
私は、逮捕勾留されている段階の時点で、複数の「なぜやったか」を聞き出し、それにあわせた教育プログラムを設けます。薬物の知識を欠いたまま違法薬物に手を出していればドラッグ教育を、性的知識に欠いたまま性犯罪に手を染めていれば性教育を、法学ではなく犯罪心理学などの観点から、そちらの専門書などを用いて行います。
「自分が行ったこと」をよく理解するには、被害者がいれば被害者の言葉を聞くのが1番です。私が被害者と接触し、その生々しい声を届けます。被害者がいない犯罪であったり、直接話すのがまだ難しい状態である場合、その少年が行った犯罪に関与し、その結果人生にダメージを負った人の手記などを読んでもらいます。自分がかかわってしまったことがもたらす結果を、さまざまな角度からリアルなものとして受け止めてもらいます。
そうして、新たな刺激を受けた結果、少年が何を考えたかを「資料化」します。鑑別所で行われることを先取りすることで、鑑別の必要性を失わせるのです。
4. 鑑別所は怖くない ~時には利用し、そして覆すことも重要~
このようにさまざまな取り組みを行っても、犯罪の性質上、少年鑑別所の鑑別は受けておくべきという判断が出ることもあります。
私は、これ自体は悪くないことだと思っています。というのも、逮捕勾留段階で十分に少年の分析ができていれば、後から少年鑑別所が指摘してくる問題点などについても、すでに対処済みの状態で審判へ望めるからです。
少年の問題は、法学の観点だけでは処理しきれないからこそ、家庭裁判所は専門的な調査機関として、少年鑑別所を利用します。逆に言えば、少年鑑別所の指摘にもちゃんと応えられている弁護士の意見や、それに応えられている状態の少年に対しては、肯定的な評価を持たざるを得ません。
鑑別所は回避できるなら回避し、回避できない時は、鑑別所を上回り先んじた活動をもって、裁判所を説得するのに用いるのが、結局は最終的な結論で、少年院に行くかどうかといった点では有益です。実際、私は何度も、鑑別所の少年院に行くべきという結論を覆しています。
5. 大局観を持った少年事件対応のススメ
少年事件では、直近の身柄解放という視点だけでなく、先にある少年鑑別所の手続き、あるいはその先にある審判を見通して、法学に拘泥しない、大局観を持った対応が必要です、そのためには、刑事だけでなく少年事件と、人間への深い理解を持つ弁護士がオススメです。
- こちらに掲載されている情報は、2021年10月14日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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