逮捕後に実名報道される基準はあるのか? 回避する方法は?
テレビのニュースや新聞を見ていると、警察に逮捕された被疑者の氏名を明かした「実名報道」を目にしない日はありません。
一般の市民にとっては、事件の発生を知る機会がニュース・新聞などの報道に限られるため「事件を起こせば実名報道される」と考えがちですが、実はすべての事件が実名報道されているわけではありません。
1. 実名報道される基準は?
罪を犯したからといって、必ず実名で報道されるとは限りません。
令和2年版の犯罪白書によると、令和元年中に刑法犯で検挙されたのは19万2607人、危険運転や過失運転によって相手を死傷させた交通事故を含めると、57万1442人が検挙されています。
1日に換算するとおよそ1500件の事件が検挙されていることになるため、すべての事件が報道されているわけではないのです。
また、事件の報道には「無職の男性」や「男子高校生」といった肩書きで報じて実名を伏せる場合もあります。
実名報道されるケースがあれば、実名報道されない、あるいは報道されないケースもあるのです。
(1)「逮捕された事件」は実名で報道されるおそれが高い
実名報道される危険が非常に高いのは、警察に「逮捕された事件」です。
警察は、被疑者を逮捕した事件について、新聞社・テレビ局などに報道発表をおこないます。
一部、発表によって共犯者が逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあるなどの場合を除いて、警察と報道機関との間には協定があるため、被疑者が逮捕された事件については報道機関への発表は避けられないのが実情のようです。
逮捕された事件は報道発表されるため、実名報道される危険性も高まります。
一方で、原則として被疑者を逮捕していない任意の在宅事件については、とくに悪質であったり、社会の耳目を集める内容であったりしない限り、報道機関には発表されない傾向にあります。
年間の検挙件数と比較すると報道されたケースのほうが少ないのは、大部分が任意の在宅事件として検挙されているからなのです。
(2)実名報道されやすいケース
次のようなケースでは、逮捕された場合はもちろん、任意の在宅事件でも実名報道される危険が高くなります。
- 殺人・放火などの重大犯罪
- 組織的な詐欺や巨額の横領など、悪質な事件
- 贈収賄事件などの公務員による犯罪
- 有名企業の役員や社員、警察官、教師、医師など、社会的地位が高い人物が起こした事件
- 世間で注目されやすい、話題を集める事件
(3)実名報道されにくいケース
次のようなケースでは、たとえ逮捕されても実名報道を受けるおそれは低いでしょう。ただし、あくまでも「実名報道されにくい」だけであり「実名報道されない」わけではないので注意が必要です。
- 被害がわずかで、逮捕されてただちに示談が成立して即日で釈放された事件
- 飲酒運転やあおり運転などの危険行為ではない事故で相手にケガを負わせた
- 未成年が起こした事件
なお、未成年者の実名報道については、少年法第61条の規定によって、氏名・年齢・職業・住居・容ぼうなどにより、本人であることを推知できる記事・写真の掲載が禁止されているため、基本的に実名報道されることはありません。
ただし、令和4年4月から改正少年法が施行されるため、18歳・19歳は「特定少年」として起訴後に限り実名報道への抑制がなくなります。
2. 実名報道を避ける方法
事件を起こしても実名報道を避ける方法はあるのでしょうか? 実名報道を避けるためのポイントを解説します。
(1)実名報道の判断は報道機関に委ねられている
警察による報道機関への発表は、国民の「知る権利」に基づいて結ばれた協定に従うものです。
事件を担当している警察に対して「報道発表しないでほしい」と申し入れても、報道機関との協定があることを理由に拒否されるでしょう。
発表を受けた報道機関が自社のメディアで公表するのか、公表する際は実名にするのか、それともイニシャルや肩書きにして実名を伏せるのかは、すべて報道各社の判断に委ねられています。
警察が「実名で報道してほしい」「実名報道は避けてほしい」と申し入れているわけではありません。
誌面の都合で事件の情報そのものが掲載されないことがあれば、軽微な事件でも掲載されることもあるので、報道機関へのはたらきかけが重要です。
(2)弁護士に依頼すれば回避できる可能性がある
実名報道を回避するには、まず「逮捕されないこと」がもっとも重要です。
容疑をかけられてしまった段階で、ただちに被害者との示談交渉を進めれば、逮捕を避けて事件を解決できる可能性があります。
もし逮捕されてしまった場合は、警察と報道機関との間に協定が結ばれているため、報道発表を避けるのは難しいでしょう。
そのため、逮捕に至らない形で事件を進められるよう、前もって早めに動いていくことが、報道を避ける上では重要です。
捜査中、逮捕されていない段階では、国選制度もなく、自ら依頼しない限り弁護士のサポートを得られません。
不安に感じられている方は、弁護士に相談して依頼することを検討すべきでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2021年12月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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