一気飲み強要で問われる罪は? 損害賠償請求について
「イッキ!イッキ!」のかけ声でグラスやジョッキに満ちたお酒を飲み干す行為を「一気飲み」といいます。飲み会や宴会の場を盛り上げる趣向として好む方も少なくありませんが、大変危険な行為なので、国や行政だけでなく酒造メーカーや学生向けの共済組合なども注意を呼びかけています。
一気飲みは、生命を害するおそれのある危険な行為なので、状況次第では犯罪となり厳しく罰せられます。どのような犯罪にあたるのかを見ていきましょう。
1. 一気飲みを強要するとどんな罪に問われる?
一気飲みの強要は、ここで挙げる犯罪にあたるおそれがあります。
(1)無理やり一気飲みをさせると「強要罪」
断れない相手に対して一気飲みを無理強いさせると、刑法第223条の「強要罪」が成立する可能性があります。暴行や脅迫を用いて相手に義務のない行為をさせる犯罪で、3年以下の懲役が科せられます。
(2)相手が不調に陥れば「傷害罪」
一気飲みをさせて相手を急性アルコール中毒などの不調に陥らせた場合は、刑法第204条の「傷害罪」に問われる可能性があります。
傷害罪といえば、ケンカなどで相手に怪我をさせた場合に適用されるケースが代表的な犯罪ですが、外傷がなくても体調不良に陥らせれば傷害罪が成立するおそれがあります。罰則は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
(3)相手が死亡すると「傷害致死罪」や「過失致死罪」
一気飲みをした相手が急性アルコール中毒などによって死亡した場合は、刑法第205条の「傷害致死罪」が成立する可能性もあり、3年以上の有期懲役が科せられます。有期懲役の上限は20年で、最低でも3年の懲役となるため、厳しい刑罰となるでしょう。
また、一気飲みを強要させたものの、注意や義務を怠ったことで招いた事態だと判断されれば、刑法第210条の「過失致死罪」となる可能性があります。過失致死罪の罰則は50万円以下の罰金です。
刑務所に収監されることはありませんが、有罪となれば罰金でも前科がついてしまうため軽視してはいけません。
(4)介抱を怠れば「保護責任者遺棄罪」
一気飲みをした相手が急激な体調不良などで生命の危険にさらされているのに保護しなかった場合は、刑法第208条の「保護責任者遺棄罪」となります。同じ飲み会に参加していた同僚やサークルのメンバーなどは、たとえ自分が一気飲みを強要したわけではなくても同罪となる危険があるわけです。
保護責任者遺棄罪の罰則は3か月以上5年以下の懲役ですが、相手が死亡した場合は同法第209条の「保護責任者遺棄致死罪」となり、傷害罪と比較して重い刑に処されます。
(5)周囲で一気飲みをはやし立てると「傷害現場助勢罪」
たとえ自分が一気飲みを強要したわけではなくても、周囲で「イッキ!イッキ!」とかけ声をかけたり、「飲め飲め!」とはやし立てたりすれば、刑法第206条の「傷害現場助勢罪」が成立してしまう可能性があります。
傷害がおこなわれる場において「勢いを助けた者」を罰する犯罪で、自分では直接相手に傷害を負わせていなくても、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料が科せられます。
たとえ自分が一気飲みをさせたのではないとしても、周囲で面白がってはやし立てていれば犯罪になる可能性があるということです。
2. 損害賠償も請求される
一気飲みを強要させて相手を死傷させてしまうと、犯罪が成立して厳しく罰せられるだけでなく、民事上の責任を負って損害賠償を請求されるおそれもあります。
(1)治療費や慰謝料などの損害賠償を請求される
相手が急性アルコール中毒などに陥ってしまい、病院での治療・入院が必要となった場合は、治療費・入院費のほか、休業中の給料の補償や精神的苦痛に対する慰謝料を支払う義務が発生します。また、一気飲みの強要が原因で相手が死亡してしまった場合も、慰謝料のほか、将来得ることができたはずの収入分を逸失利益として支払わなくてはなりません。
相手が後遺症を負ってしまった、死亡してしまったなど、重大な結果が生じた場合は、多額の損害賠償を請求されてしまうおそれが高まるでしょう。
(2)責任者として賠償を求められるおそれもある
自分自身が一気飲みを強要したわけではなくても、責任者として損害賠償請求を受けるケースもあります。
たとえば、会社の宴会であれば部署の責任者や会社が、大学のサークル主催の飲み会であればサークルの代表者や学校が、ラウンジやホストクラブなどの営業中のできごとなら店長・オーナー・店舗が「責任者としての注意義務を怠った」として賠償責任を負う事態にもなるでしょう。
(3)一気飲みの強要でトラブルになったら弁護士に相談を
一気飲みの強要は、犯罪として刑事事件になってしまうだけでなく、多額の損害賠償請求にもつながる危険な行為です。トラブルに発展してしまった場合は、逮捕や厳しい刑罰を回避するための対策が必要となるため、被害者との示談交渉が欠かせません。とはいえ、個人での対応では相手にしてもらえないケースも多いため、弁護士に交渉を一任するのが最善策となるでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2022年03月06日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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