- (更新:2024年07月12日)
- 犯罪・刑事事件
女性を狙って「わざとぶつかる人」は捕まえられる?
道や駅構内などを歩いている最中、突然誰かにぶつかられた経験がある方もいらっしゃるかと思います。特に、女性が男性にぶつかられた場合には、強い恐怖心を感じてしまうことでしょう。
この記事では、突然わざとぶつかってくる人について成立する法律上の責任について解説します。
1. 「わざとぶつかる人」のパターン
路上でわざとぶつかってくる人の目的としては、主に以下のパターンが挙げられます。
(1)道を譲らずにぶつかってくる
進路を変えたくない、道を譲りたくないという気持ちからぶつかってくるパターンです。
積極的な加害の意図はないものの、他人との協調性がない人や、自分に自信があり過ぎる人に見られがちなパターンと言えます。
(2)八つ当たり的に暴行を加えてくる
嫌なことがあったなどの理由から、無差別に暴力を振るう目的でぶつかってくるパターンです。
被害者がケガをする可能性が高く、極めて悪質なパターンと言えるでしょう。
(3)わいせつ目的でぶつかってくる
男性が女性にわざとぶつかってくる場合には、女性の身体に触れたいというわいせつ目的を持っているケースもあります。
被害者女性に嫌悪感を与えるばかりでなく、男女の筋力の差も相まってトラウマを植え付ける可能性もあるため、こちらも非常に悪質なパターンです。
2. 「わざとぶつかる人」が負う法的責任
路上でわざとぶつかってくる人には、以下に挙げる犯罪のほか、民法上の不法行為が成立する可能性があります。
(1)暴行罪・傷害罪
他人に対してわざとぶつかる行為は「暴行」に当たるため、「暴行罪」が成立します(刑法第208条)。暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。
また、わざとぶつかった結果として、被害者がケガをした場合には「傷害罪」が成立します(刑法第204条)。傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
(2)強制わいせつ罪・迷惑防止条例違反
わいせつ目的でわざとぶつかる行為については、「強制わいせつ罪」(刑法第176条)や「迷惑防止条例違反」が成立する可能性があります。
強制わいせつ罪は、暴行が被害者の反抗を著しく困難にした場合に成立します。
例えば非常に強い勢いでぶつかり、被害者が驚いて反抗する余裕がない状態で、被害者の身体に触れた場合には、強制わいせつ罪が成立する可能性があるでしょう。強制わいせつ罪の法定刑は「6か月以上10年以下の懲役」です。
また、各都道府県が制定する迷惑防止条例では、一般に痴漢行為が禁止されています。
例えば東京都の迷惑防止条例第5条第1項第1号では、公共の場で衣服等の上から(または直接に)他人の身体に触れることを禁止しています。同規定違反の法定刑は「6か月以下の懲役または50万円以下の懲役」です(同条例第8条第1項第2号)。
(3)民法上の不法行為
損害賠償責任
他人にわざとぶつかる行為には、上記の犯罪のほか、民法上の不法行為も成立します(民法第709条)。
被害者は不法行為に基づき、加害者に損害賠償を請求できます。賠償の対象となる損害は、ケガの治療費や精神的損害に対応する慰謝料などです。
3. 「わざとぶつかる人」の責任を追及するには?
路上でわざとぶつかってくる人の法的責任を追及したい場合、最も効果的な方法は、その場で加害者を呼び止めて、氏名や住所を確認することです。その場で被害を訴えて、周囲の人の協力を得ながら加害者を呼び止める等の方法が良いでしょう。また、私人であっても現行犯逮捕が可能な場合もあります。
仮にその場で加害者を呼び止めることができなかったとしても、施設管理者や警察に被害を申告することをお勧めいたします。わざとぶつかる行為の常習犯であれば、施設管理者や警察が加害者をマークしているかもしれません。被害の申告が積み重なれば、加害者の検挙等につながる可能性があります。
なお、加害者に刑事責任を負わせたい(刑罰を科してほしい)場合には、ぶつかってきたのが「わざと」であること(=故意)を証明する必要があります。
ぶつかってきた加害者の意図を証明するハードルは、一般に高いのが実情です。しかし客観的な証拠があれば、故意を立証できる可能性もあります。
例えば、あまりにも強くぶつかったことが明らかであれば、ぶつかる行為が「わざと」であったことが推認されます。強くぶつかったことを立証するためには、接触部位のケガの重症度を示す診断書などが有力な証拠となるでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年07月12日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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