傷害罪の時効は何年? 逮捕される可能性も解説
過去に友人とけんかをして怪我をさせてしまったという経験がある方もいるかもしれません。「昔の怪我のことで罪に問われることがあるのだろうか」と不安を抱いている方は、傷害罪の時効について理解しておくことが大切です。
今回は、傷害罪の時効の基礎知識と適切な対処法について解説します。
1. 傷害罪の時効はいつ
傷害罪の時効はいつ成立するのでしょうか。以下では、傷害罪の基本と傷害罪の時効について説明します。
(1)傷害罪とは
傷害罪とは、被害者に対して怪我を負わせることによって成立する犯罪です(刑法204条)。加害者が殴る、蹴るなどの暴行によって、被害者に打撲や骨折などの怪我が生じるというケースが傷害罪の典型的なケースです。
友人との口論でつい手が出たり、お酒の勢いでけんかをしてしまうなど誰でも傷害罪の加害者になる可能性はあります。なお、傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
(2)傷害罪の時効
犯罪には、罪を犯したとしても一定期間が経過すれば処罰されることはなくなる期間が存在します。このような期間のことを「公訴時効」といいます。公訴時効が経過した後は、検察官は事件を起訴することができなくなりますので、その結果裁判で裁かれ、刑事罰を科せられることもなくなります。
傷害罪の公訴時効期間は10年とされていますので(刑事訴訟法250条2項3号)、過去に被害者に怪我をさせてしまったとしても10年以上前のことであれば、公訴時効の成立によって処罰されることはありません。
2. 民事の時効と刑事の時効
被害者を負傷させてしまったという場合には、刑事上の時効だけでなく民事上の時効についても意識する必要があります。以下では、民事の時効と刑事の時効の違いについて説明します。
(1)民事と刑事の時効の違い
被害者に怪我をさせてしまったという場合には、加害者は、被害者の怪我の治療費を負担しなければなりません。また、怪我の程度によっては後遺症となることもあります。このように傷害事件の被害者には損害が生じますので、加害者は刑事上の責任だけでなく、民事上の責任も負わなければなりません。
刑事事件としての傷害罪の時効は、10年とされていますが、民事上の損害賠償請求権の時効は、それとは異なる定めとなっています。傷害罪の場合は、「人の身体を害する不法行為」に該当しますので、民事上の損害賠償請求権の時効は、5年とされています。
(2)時効の起算点
刑事上の時効が10年で、民事上の時効が5年であれば、「刑事事件の時効が成立すれば、民事事件の時効も成立しているのでは?」と考える方も多いでしょう。しかし、刑事事件の時効と民事事件の時効では、どの時点から時効期間をスタートさせるかという「起算点」が異なります。そのため、場合によっては、刑事事件の時効が成立しているにもかかわらず、民事事件の時効が成立していないという事態が生じることもあります。
①刑事事件の時効の起算点
刑事事件としての傷害罪の公訴時効の起算点は、傷害の結果が発生した時点です。殴る、蹴るといった暴行によって被害者に怪我を負わせた場合には、その時点から刑事事件の時効がスタートします。
②民事事件の時効の起算点
民事事件の時効の起算点は、被害者が「損害および加害者を知った時点」です。被害者が加害者によって怪我を負わされたとしても、加害者と面識がないという場合には「加害者を知った」とはいえませんので、怪我をした時点では時効期間はスタートしません。そのため、被害者が加害者を知ったのが何年も後であったという場合には、刑事事件の時効は成立していても民事事件の時効は成立していないという事態が生じます。
もっとも、民事上の請求も、「損害および加害者」が分からなくても「不法行為の時から20年間行使しないとき」には時効によって成立します。
傷害罪の加害者として捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられているという場合には、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。
傷害罪は、被害者が存在する犯罪ですので、早期に被害者との間で示談を成立させることができれば、逮捕・勾留といった身柄拘束や前科が付くことを回避することができる可能性が高くなります。加害者自身で被害者と示談交渉をしようとしても、被害者は、怪我をさせられた加害者との接触を避ける傾向にありますので、加害者自身では被害者と接触することも困難なことが多いです。弁護士が示談交渉の窓口となることによって、被害者としても安心して話し合いを進めることができるといえます。
少しでも有利な処分を獲得するためにも早めに弁護士に相談をするようにしましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2022年07月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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