動物虐待を見かけたら...通報方法を解説
動物虐待とは、動物に対して肉体的・精神的に苦痛を与えることを言います。危害を加えるだけでなく、必要な世話を怠ること、怪我や病気の治療をせず放置することも動物虐待に該当します。
本コラムでは、動物虐待の種類と動物虐待を取り締まる法律、動物虐待を発見した場合の通報先について解説します。
1. 「動物虐待」は2つの種類にわかれる
動物虐待といえば、ペットなどの動物に危害を加える行為をイメージするでしょう。しかし、動物虐待と呼ばれる行為には複数の種類があります。
(1)積極的な虐待
動物を殴ったり蹴ったりして積極的に暴行を加える行為は、動物虐待にあたります。過去には、矢が刺さったままの鴨が発見されて世間をにぎわせた「矢ガモ」騒動と呼ばれる事件もありましたが、まさに虐待の典型的な事例だといえます。
(2)飼育放棄(遺棄・ネグレクト)
暴力などの積極的な虐待だけでなく、捨てる、餌を与えないなどの飼育放棄は「ネグレクト」と呼ばれており、動物虐待の形態として認知されています。ほかにも、不衛生な環境で飼育する、無制限に繁殖する状況を放置するといった状況があると、動物虐待にあたります。
2. 動物虐待は犯罪!
以前から、動物虐待は法律に違反する犯罪行為でしたが、法規制が弱くて不十分な効力しかないという批判がありました。そこで、令和元年6月に法律が改正され、動物虐待に対する罰則が強化されました。
(1)動物愛護管理法に違反する
動物虐待は「動物愛護管理法」という法律に違反します。動物をみだりに殺傷すると5年以下の懲役または500万円以下の罰金に、動物に対してみだりに暴行を加えたり、餌や水を与えなかったりすると1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。動物を捨てた場合も、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
この法律で保護・管理の対象となるのは「愛護動物」に限られています。具体的には、牛・馬・豚・めん羊・犬・猫・いえうさぎ・鶏・いえばと・あひるが掲げられていますが、さらに「人が専有している哺乳類・鳥類・は虫類」も含まれるので、おおむね「ペット」と呼ばれる動物はすべて保護対象だと考えて間違いないでしょう。
(2)実際に処罰された事例
令和3年11月、猫6匹を空気銃で撃って死傷させた男が動物愛護管理法違反などの疑いで懲役1年6か月、執行猶予3年の有罪判決を受けました。被告の男は、特定の飼い主がなく、地域住民が世話をしている「地域猫」をターゲットに、これまで80~100匹の猫を空気銃で撃ったと証言し、捕獲して熱湯をかけるなどの虐待も行っていたそうです。裁判では「撃ったときの高揚感が忘れられなかった」「弱いものをいじめたかった」などと述べており、裁判官は判決で「心の貧しさを表している」と指摘しました。
3. 動物虐待を発見した! どこに通報すればいい?
法律の改正やペットブームがあいまって、社会の動物愛護に対する意識は高まっており、動物虐待を相談できる通報先も整備されています。
(1)緊急性が高ければ警察へ
まさに目の前で動物に対して執拗な暴力を加えている人がいる、狩猟でもないのに銃で動物を撃っている人がいるなど、緊急性が高い場合はただちに110番通報をしましょう。危険な加害者に対してみずから注意をしていると、逆恨みを受けて思わぬ被害につながるかもしれませんので、個人で直接注意することは避けた方がいいと思われます。とくに武器をもって虐待行為をはたらいている場合は、暴行・傷害といった被害にもつながるので危険です。警察に通報して対応を任せましょう。
(2)遺棄の発見・ネグレクトの疑いは保健所や動物愛護センターへ
捨てられた動物を発見した、きわめて劣悪な環境で飼育されている動物がいるなど、遺棄・ネグレクトの疑いがある場合は、各地の保健所や動物愛護センターに通報しましょう。個人で動物を保護するには限界がありますが、これらの機関に通報すれば適切な保護が期待できます。飼い主への調査や指導といった権限もあり、必要に応じて警察と連携し事件化することも可能です。動物虐待が疑われる理由や詳しい状況を説明する必要がありますが、積極的に協力することで卑劣な動物虐待を止められるかもしれません。
(3)不確実な時はホットラインへ
動物虐待をしている様子はあるが状況がはっきりしない場合は、警察が設置している専用相談窓口「アニマルポリス」への通報で解決できるかもしれません。ただし、専用窓口を設置している警察は限られているので、地域限定の通報先だといえます。
ほかにも、インターネットで動物を虐待している様子の画像・動画を公開しているサイトやユーザーを見かけたときは、「インターネット・ホットラインセンター」への通報も有効です。センター経由での警察への情報提供や、サイト管理者に送信防止措置を依頼して公開をやめさせるといった対応が期待できます。
動物虐待をやめさせるには、適切な機関への通報が大切です。「もしかして」と感じたら、通報を検討しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2022年10月18日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
犯罪・刑事事件に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?
関連コラム
-
- 2024年09月05日
- 犯罪・刑事事件