【犯罪・刑事事件】余罪とは|余罪がある場合の刑罰への影響は? 取り調べはどう進められる?

【犯罪・刑事事件】余罪とは|余罪がある場合の刑罰への影響は? 取り調べはどう進められる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

すでに捜査の対象になっている罪とは別の「余罪」が判明した場合、身柄拘束の長期化や刑の加重につながるおそれがあります。

今回は余罪について、刑事処分に与える影響や発覚後の手続きの流れなどを解説します。

1. 余罪とは

「余罪」とは、すでに捜査が行われている犯罪(=本罪)とは別に、同一の被疑者・被告人が犯したと疑われる他の犯罪のことです。

たとえば、すでにコンビニXにおける窃盗の疑いで逮捕されている被疑者が、別のコンビニYでも窃盗事件を起こした疑いが生じたとします。この場合、コンビニXでの窃盗が本罪、コンビニYでの窃盗が余罪です。

余罪が発覚するきっかけとしては、以下の例が挙げられます。

  • 本罪についての取り調べ
  • 共犯者による自白
  • 被害届

など

2. 余罪が刑事処分に与える影響

余罪が発覚した場合、被疑者・被告人に対する刑事処分に影響が生じる可能性があります。

具体的には、捜査段階では再逮捕・再勾留によって身柄拘束が長引き、公判段階では刑が加重されることが多いです。

(1)捜査段階

再逮捕・再勾留によって身柄拘束が長引く

刑事手続きには、被疑者の人権保護の観点から「一罪一逮捕一勾留の原則」が存在し、同一の被疑事実については原則として、逮捕・勾留は各1回ずつしか認められません。

逮捕については最長72時間、勾留については最長20日間の期間制限が設けられています。したがって、捜査段階における逮捕・勾留を合わせた身柄拘束期間は、最長23日間であるのが原則です。

しかし本罪とは別に、余罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があれば、余罪についても被疑者を再逮捕・再勾留することができます。

この場合、本罪とは独立して逮捕・勾留期間がカウントされます。したがって、余罪がたくさんあればあるほど、逮捕・勾留による身柄拘束期間は長引く可能性が高いです。

(2)公判段階

併合罪として処断され、刑が重くなる

確定裁判を経ていない2個以上の罪は「併合罪」に当たります(刑法第45条第1項)。本罪と余罪について、いずれも刑事裁判における判決が確定していない場合、両者は併合罪として取り扱われます。

併合罪については、刑の長期が「最も重い罪の刑の長期の1.5倍」に設定されます(刑法第47条本文)。たとえば、詐欺罪(刑法第246条第1項)の法定刑は「10年以下の懲役」ですが、被害者が2人以上いれば併合罪となり、最長15年の懲役刑が科される可能性があります。

ただし併合罪の刑の長期は、構成犯罪の刑の長期の合計を超えることはできません(刑法第47条但し書き)。たとえば、詐欺罪と住居侵入罪(刑法第130条前段、3年以下の懲役または10万円以下の罰金)が併合罪である場合、懲役刑は最長13年です。

このように、本罪に加えて余罪を犯した場合は、併合罪加重によって重い刑罰を科される可能性が高い点にご注意ください。

3. 余罪が発覚した後の手続きの流れ

余罪が発覚した場合、余罪についても本罪と同様に、警察や検察による捜査(余罪取り調べを含む)が行われます。

捜査の結果を踏まえて、本罪・余罪のそれぞれにつき、検察官が起訴・不起訴を判断します。本罪・余罪の両方について起訴されるパターン、いずれか一方しか起訴されないパターン、いずれも不起訴となるパターンのいずれもあり得ます。

起訴されていない犯罪については、それを実質的に処罰する趣旨で、起訴された犯罪の量刑を加重することはできません。被疑者にとっては本罪・余罪の両方不起訴となることが望ましいですが、いずれか一方でも不起訴になれば、量刑が大幅に軽減される可能性が高いです。

4. 余罪の不起訴を目指すには弁護活動が重要

起訴前の段階で、弁護士(弁護人)が適切な弁護活動を行うことにより、余罪について不起訴となる可能性が高まります。

<起訴前の弁護活動の例>

  • 犯罪の証拠が不十分であることを主張し、検察官に起訴を控えるよう求める
  • 被害者との示談を成立させ、被害弁償と謝罪を行う
  • 反省文の作成をサポートし、家族から監督の約束を取り付け、社会における更生の土壌が整っていることをアピールする

など

上記のような弁護活動を行ってもらうには、できる限り早期に弁護士へ相談することが大切です。複数の罪を犯してしまった方は、刑事事件の対応についてすぐに弁護士へご相談ください。

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  • こちらに掲載されている情報は、2023年05月04日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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