【犯罪・刑事事件】自首したらどれくらい減刑される?
罪を犯してしまったその時、その場では気が動転して逃げてしまうのは、決してめずらしいことではありません。あとで冷静になって「悪いことをした」と後悔し、警察に自首すると「減刑」されるというのは本当なのでしょうか? 減刑されるのであれば、どのくらい刑が軽くなるのかも気になるところです。
自首と減刑の関係をみていきましょう。
1. 自首すると減刑される?
自首とは、まだ警察・検察官といった捜査機関が認知していない犯罪について、犯人がみずから犯した罪を捜査機関に申告したうえで、その処分を求めるという刑事手続きです。 捜査機関に発覚していない事件をわざわざ申告するのだから、刑が軽くなるくらいのことは期待したいでしょう。
自首すると減刑される可能性はあるのでしょうか?
(1)減刑とは?
自首をしても「減刑」は期待できません。減刑とは、すでに刑事裁判を経て言い渡された刑罰について、あとから軽くする処分を指します(恩赦法6条、7条)。
減刑は「恩赦」のひとつです。恩赦には大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除・復権の5種類があり、減刑が実施されると、たとえば懲役や禁錮の言い渡しを受けて刑務所に服役している人の刑期が短縮されて釈放されるといった効果があります。
恩赦がおこなわれるのは天皇の即位や皇族の誕生・崩御などの機会で、しかもかならず減刑されるわけではありません。近年では令和即位の礼に伴い約55万人規模の恩赦が与えられましたが、対象となったのは復権であり、減刑はおこなわれませんでした。
(2)自首すると刑が軽くなる可能性がある
自首をしても減刑は期待できませんが、同じく「げんけい」と読む「減軽」を受ける可能性はあります。減軽とは、刑事裁判において、刑罰の範囲を、法律上原則として規定されたものよりも軽くすることです。
例えば、強盗罪は「5年以上の有期懲役」に処されるのが原則ですが(刑法236条1項)、「減軽」されると、「2年6か月以上10年以下の懲役」の懲役で済むということになります。減軽される前は一番軽くても懲役5年ですから、執行猶予はつきません。しかし、減軽されて懲役2年6か月であれば、執行猶予の可能性もあるので、これは大きな違いです。
「刑が減じられる」というイメージから、本来より軽い刑が言い渡されるのを「減刑」と思いがちですが、このイメージと結びつくのは「減軽」のほうです。
刑法第42条1項によると、犯人が自首したときは「その刑を減軽することができる」と明記されています。自首によってかならず減軽されるわけではありませんが、本人の反省の深さ、被害の大きさや悪質性の高さ、示談成立の有無などから、裁判官が減軽の可否を判断します。
2. 自首の方法とは? 気を付けるべきこと
単に「私が犯人だ」と申告すれば自首が成立するわけではありません。自首が認められるには、法律で定められた手続きの方法や条件を満たす必要があります。
(1)自首の方法は書面または口頭
刑事訴訟法第254条、241条によると、自首の方法は「書面または口頭」で、検察官または司法警察員にすると定められています。
犯人みずからが警察署などに赴く「口頭」による方法が定石ですが、ほかにも自首報告書を作成したうえで弁護士が代理人として提出するなどの「書面」による方法でも有効です。
もっとも、書面による方法では、罪を犯したことを申告したうえで、いつでも捜査機関の支配下に入る態勢があることも求められるので、一方的に自首報告書を郵送してその後に出頭しないといったケースでは自首とは認められません。
反面、ただちに捜査機関の支配下に入る態勢が整っていれば自首と認められるので、たとえば事件を起こした直後でみずから110番通報をして「今すぐ来てほしい」と求めれば、電話であっても口頭による方法で自首したことになります。
(2)「捜査機関に発覚する前」でなければ自首にならない
自首が認められるのは「捜査機関に発覚する前」のタイミングにあたる場合に限られます。
たとえば、すでに被害者からの届け出を受けて警察が捜査を開始し容疑者としてマークされている、逮捕状が発付されて指名手配を受けているといった段階だと、みずから警察に出向いても「出頭」として扱われるだけで、自首は成立せず、減軽を受けられません。
なお、すでに警察が犯罪を認知して捜査を開始していても、容疑者がまったくわからない状況であれば「発覚する前」として扱われます。
一方、例えばひき逃げ事件で、犯人の乗車していた車両の車体登録番号などがすでに発覚している場合など、容疑者を特定するに足りる状況がある場合には、すでに「発覚した後」になります。
3. 自首に弁護士のサポートは必要?
自首の考え方や成立の条件は意外と難しいので、個人で判断することはおすすめしません。自首を検討しているなら、まず弁護士に相談し、必要なサポートを求めましょう。
(1)自首の有効性を判断できる
自首の最も難しい点は「現時点で自首が有効に成立するのか?」の判断です。刑が軽くなる減軽を期待していたとしても、すでに捜査機関に発覚したあとでは自首による減軽は望めません。
弁護士に事件の詳しい内容を伝えれば、自首が有効に成立する可能性があるのかを正確に判断できます。もし自首が成立しないとしても、できる限り処分が軽くなるように被害者との示談交渉をはじめとした弁護活動を依頼できるので、弁護士への相談・依頼が無駄になることはありません。
(2)警察への同行を依頼できる
罪を犯した人にとって、減軽の可能性があるとしてもみずから警察に出向いて犯罪を申告するのは大変な気力を要する行為です。自分ひとりでは心細いので、自首をしようにもなかなか踏み出せないのは仕方がありません。
弁護士に相談すれば、警察への自首の同行を依頼できます。ひとりよりも心強いだけでなく、弁護士が帯同することで警察へのけん制にもなり、不当な扱いを受ける事態の予防にもなるので安心して自首に臨めるはずです。
(3)取り調べ中のアドバイスも得られる
口頭・書面にかかわらず、警察に自首するとどのような罪を犯したのかなどの具体的な取り調べがおこなわれます。取り調べの最中は厳しい追及を受けることも多いので、どのように答えればよいのか迷う場面も多いでしょう。
弁護士といえども、取り調べへの同席は警察に拒否されるのでできません。もっとも、警察署の庁舎内で弁護士が待機していることは、警察へのけん制にもなるので、不当な取り調べを受けることを抑止することができます。
自首によって得られる法的な効果を最大限に高めるためには、弁護士のサポートが欠かせません。自分だけの判断で自首に踏み出すのではなく、まずは弁護士への相談を急ぎましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年04月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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