売春斡旋(あっせん)とは? 売春防止法と逮捕の可能性
令和5年1月、東京都や福岡市などに住む4人が逮捕されました。容疑は「売春斡旋(あっせん)」です。逮捕された4人は共謀のうえで、マッチングアプリを利用して男性7人に女性2人を売春相手として紹介した疑いがもたれています。
売春斡旋とはどんな行為でどの程度の罰則が設けられているのか、逮捕される可能性はあるのかをみていきましょう。
1. 売春斡旋とは?
売春斡旋とはどんな犯罪なのでしょうか?
(1)売春斡旋を禁止するのは「売春防止法」
売春斡旋は「売春防止法」という法律に定められている禁止行為です。この法律は、人としての尊厳を害し、性道徳に反する行為であり、社会の善良な風俗を乱す「売春」について、これを助長する行為を罰するとともに、売春に走ってしまう女子を保護する目的で、昭和31年に定められました。
(2)禁止される斡旋行為とは?
売春防止法によって禁止される行為は、大きく3つに分類されます。
- 街娼型
人を売春の相手となるよう勧誘するなどの行為 - 管理型
売春する場所や資金等の提供、みずから占有・管理する場所に居住させての売春行為(管理売春) - 派遣型
売春の斡旋、人に売春をさせることを内容とする契約をする行為
売春斡旋は、3つのうち派遣型に分類される行為です。警察庁が公開している令和4年版 警察白書によると、令和3年中の売春防止法違反による検挙数は426件でしたが、派遣型のうち売春斡旋は74件でした。
なお、売春斡旋は売春防止法第6条に定められていますが、条文のうえでは斡旋ではなく「周旋(しゅうせん)」と表現されています。周旋は「当事者の間に入って世話をすること」といった意味、斡旋は「紹介」という意味です。
売春には、かならず売る側・買う側が存在しますが、ブローカーのように話をまとめるケースだけでなく、冒頭で挙げた事例のようにSNSなどを通じて売春相手を紹介するといった事例も増えており、周旋・斡旋の違いは薄れているといえるでしょう。
2. 売春斡旋の罰則と逮捕の可能性
売春斡旋にはどのような刑が科せられるのでしょうか? 法律が定めている罰則や、逮捕が迫る可能性を考えていきます。
(1)売春斡旋に対する罰則
売春斡旋には「2年以下の懲役または5万円以下の罰金」という罰則が定められています。数ある犯罪と比べれば決して重い刑罰が予定されているとはいえないので「この程度の刑罰で済むなら、売春斡旋でもうけてしまえばいい」と考える人がいるかもしれませんが、それは不可能です。
「組織犯罪処罰法」には、売春によって得た利益をはじめとした「犯罪収益」を没収できる規定が存在しています。また、刑法にも犯罪行為によって得たり、犯罪行為の報酬として得た物を没収できるとする規定があります。
つまり、売春斡旋で稼いでも、警察に検挙されてしまえば没収されて手元に残せない可能性が高いでしょう。
なお、ほかの禁止行為にも次のような罰則が定められています。
- 売春の勧誘:6か月以下の懲役または1万円以下の罰金
- 売春場所の提供:3年以下の懲役または10万円以下の罰金
※売春場所の提供を業とした者は7年以下の懲役および30万円以下の罰金 - 資金等の提供:5年以下の懲役および20万円以下の罰金
- 管理売春:10年以下の懲役および30万円以下の罰金
- 売春をさせる契約:3年以下の懲役または10万円以下の罰金
(2)売春斡旋に関与すると逮捕される?
売春防止法は、第3条においてすべての人による売春とその相手となる行為を禁止しています。ただし、売春をした者を罰する規定は存在せず、処罰の対象とするのは売春を助長する行為が中心です。
売春斡旋は、売る側・買う側を積極的に結びつける行為なので、厳しく取り締まりを受ける対象になるのは間違いありません。売春による収益を守ろうと逃亡を図ったり、関係者との口裏合わせや証拠隠滅を図ったりするおそれがあると判断されやすいので、逮捕の危険度は非常に高いといえるでしょう。
冒頭で挙げた事例のように複数人がグループで売春を斡旋していたようなケースでは、関与していた全員に逮捕の危険があります。仲間内から「いいもうけ話がある」などと誘われて軽い気持ちで参加しただけでも、逮捕・処罰されてしまうかもしれません。
3. 売春への関与で逮捕されたときに取るべき対応
売春斡旋など、売春に関与した容疑で逮捕されてしまうと、検察官が起訴・不起訴を判断するまでに最大で23日間にわたる身柄拘束を受けることになります。さらに起訴されれば刑事裁判が終わるまで被告人としての勾留が続き、数か月にわたって一般社会から隔離されるので、逮捕前の生活を取り戻すのは簡単ではありません。
身柄拘束からの早期釈放や不起訴・執行猶予などを期待するなら、ただちに弁護士に相談しましょう。売春をする側になってしまった女性への謝罪や賠償、二度と売春には関与しないことの誓約、売春グループとの決別などが評価されれば、有利な処分を得られる可能性が高まります。
売春斡旋に限らず、刑事事件の対応はスピード勝負です。ためらっている暇はないので、売春斡旋の容疑をかけられているなら今すぐ弁護士に相談してください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年05月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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