- (更新:2024年04月19日)
- 犯罪・刑事事件
暴行罪の成立要件とは|殴った相手に怪我がない場合でも逮捕される?
友人・知人や会社の同僚などの親しい間柄だとしても、ケンカなどで相手に暴力を振るってしまえば、刑法上の「暴行罪」が成立することがあります。
相手に怪我をさせてしまえば罪に問われるのは当然だと理解できるはずですが、たとえば暴行を振るった結果、相手がよろけて尻もちをついただけで、怪我がないようなケースでも暴行罪は成立するのでしょうか?また、逮捕されることはあるのでしょうか?
1. 相手が怪我をしていなくても暴行罪は成立する
暴行罪は、相手に暴力を振るうことで成立する犯罪です。
【刑法第208条(暴行)】
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
条文に明記されているとおり「人を傷害するに至らなかったとき」、つまり「怪我をさせなかった場合」は暴行罪が成立するのです。
(1)相手が怪我をすれば傷害罪
暴行を加えて相手に怪我を負わせた場合は、暴行罪ではなく刑法上の「傷害罪」が成立します。怪我の程度は問いません。
【刑法第204条(傷害)】
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
条文に明記されているとおり、傷害罪は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金という非常に厳しい刑罰が科せられます。
軽い打撲から、一生完治しないような障害が残るけがでも同じ傷害罪として扱われます。日常のトラブルでもあり得る喧嘩での殴り合いでけがをさせてしまった場合は初犯であれば不起訴の可能性も十分にありますが、被害者が今までどおりの生活を送れないような重大な傷害を負わせてしまった場合は長い懲役を受ける可能性があるでしょう。
(2)暴行罪に問われる可能性のある行為
暴行罪は身体に対する不法な有形力の行使があれば成立する犯罪です。
身体に対する不法な有形力の行使に該当するのは、殴る・蹴る・つかむ・引っ張る・押すといった相手の身体に接触するものが代表的ですが、必ずしも身体への接触を要するわけではありません。相手に水をかける、石を投げつける、狭い室内で太鼓を連打するといった行為でも暴行罪の成立が認められる可能性があります。
もちろん、身体に対する有形力の行使が不法なものでなければ、暴行罪は成立しません。たとえば、ボクシングの選手が相手の選手を殴ったとしても、スポーツという正当業務のなかでおこなわれた暴行なので、犯罪にはなりません。
また、暴行罪が成立するのは、不法な有形力の行使が「故意」のもとにおこなわれた場合に限られます。つまり、腕を振り上げたところ偶然そばにいた人に当たってしまったなどのケースでは、暴行罪の成立が否定されることになります。
(3)暴行罪の罰則
冒頭で述べた通り、刑法第208条により「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」と規定されている暴行罪。もし有罪判決を受けた場合、それぞれの処罰は以下のような形になります。
- 懲役:2年以下
- 拘留:1日以上30日未満
- 罰金:1万円以上30万円以下
- 科料:1000円以上1万円未満
実務上では、懲役もしくは罰金を科されることが多く、拘留や科料が科されることはまれです。特に悪質性が高いケースではないかぎり、罰金が課せられる傾向があります。
2. 暴行罪で逮捕されることはある?
暴行罪にあたる行為をはたらいてしまった場合でも、必ずしも逮捕されるわけではありません。
令和2年版の犯罪白書によると、令和元年中に検察庁で処理された暴行事件の総数は1万6182件でした。うち、逮捕されずに事件処理されたのは8885件だったので、54.9%は逮捕されなかったことになります。
(1)暴行罪で逮捕されるケース
逮捕が認められるのは、裁判官が逮捕の理由と必要性を認めて発付した逮捕状に基づく場合か、現行犯の場合のいずれかに限られることがほとんどです。
暴行を振るい、その場から逃走した、暴行を目撃した周囲の知人などに「絶対に警察に通報するな」などと口封じをしたといったケースでは、逃亡・証拠隠滅を図ったとして逮捕される可能性が高いでしょう。
また、通りがかりの見ず知らずの相手に暴行を振るうなどの悪質なケースでも、やはり逮捕される可能性が高くなります。
(2)逮捕後の流れ
警察に逮捕されると、そこから48時間以内に留置の必要がないとして釈放されない限り、検察官へ送致されます。検察官は、送致から24時間以内に、引き続き身柄を拘束する「勾留」を請求するかを検討します。
裁判官が勾留を認めると、最長で20日間にわたって身柄を拘束されたまま、取り調べを受けることになります。一方で、勾留請求がなされなかった場合は在宅事件となり、身柄は解放されます。ただし在宅事件の場合も身柄が解放されるだけで、捜査自体は続くことになります。
その後、検察官によって起訴・不起訴を判断されることになります。
3. お酒に酔っていた場合も罪に問われる?
暴行罪に問われるケースでは、お酒に酔っていたということも少なくありません。
ただし、記憶をなくすほどに泥酔しており、事件のことをまったく覚えていないとしても、罪が軽くなる可能性は低いでしょう。さらに泥酔していたことを理由に捜査に協力しなければ、逮捕されてしまう可能性もあります。
目が覚めたら暴行罪に問われていたという状況であったとしても、まずは落ち着いて事件の日のことを思い出す努力をすることが大切です。もっとも記憶がないにもかかわらず、安易に犯行を認めることは得策とはいえません。
このようなケースでは、弁護士に依頼し、助言を得ながら対応するのが望ましいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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