闇バイトで問われる刑罰｜逮捕されると実刑になる？
弁護士JP編集部
SNSなどを使い、高額で犯罪の実行役を募るのが闇バイトです。「バイト」という軽い響きに惑わされ、一時の金欲しさに応募する若者が後を絶ちません。しかし闇バイトは犯罪なので、事件が発覚すれば初犯でも有罪になる可能性があります。
本コラムでは、闇バイトの実態と刑罰、犯罪グループに関わった後に弁護士ができることを解説します。
1. 闇バイトの刑罰
闇バイトで募集されるのは、犯罪の実行役です。いわゆるアルバイトではなく、法律に触れる行為です。にもかかわらず、闇バイトによって実行される事件は多発しています。
（1）なぜ、闇バイトに応募してしまうのか？
闇バイトに関わるきっかけは、さまざまです。お金欲しさにインターネットで「高額報酬」「闇バイト」で検索して自ら応募するほか、X（旧Twitter）やInstagramで「お金に困っている」「解雇」などのハッシュタグをつけて投稿した後に、犯行グループからメッセージが来ることもあります。先輩や友人に誘われて関わってしまうケースもあります。闇バイトは、特殊なサイトだけで募集されるものではありません。一般的な求人サイトで「単価条件の良い案件」として募集されることもあります。
闇バイトに応募すると、犯人グループから、名前や住所、顔や健康保険証、住民票、運転免許証などの写真といった個人情報や家族の勤務先を送るように指示されます。交際相手の個人情報を送るように言われたり、マンションの入り口から自室までの動画を送るように指示されたりするケースもあります。この時犯人グループは「アルバイトとして登録するために必要」など、言葉巧みに個人情報を引き出そうとします。
なお、やりとりにはTelegram（テレグラム）、Signal（シグナル）など、一定時間が過ぎると通信履歴が消去される、匿名性の高いアプリが使われることが一般的です。
個人情報の送信が終わると、犯行グループから仕事の詳細が伝達され、ここで初めて犯罪に加担することがわかります。拒否しようとすると、犯行グループは聞き出した個人情報を基に「家に押し掛ける」「殺すぞ」などと脅しをかけてきます。きっかけは軽い気持ちでも、犯罪グループから抜け出すのは、容易ではありません。
（2）闇バイトの種類と刑罰
闇バイトには、次のような種類があります。
- 叩き
強盗のことです。店舗などに押し入るほか、アポ電強盗（※）も叩きの一種です。 - かけ子・受け子・出し子
特殊詐欺の実行役です。被害者に電話をかけて話をもちかけるのがかけ子、現金やキャッシュカードなどを受け取るのが受け子、ATMでお金を引き出すのが出し子です。 - 口座売買
自分名義の銀行口座やスマートフォンを売却して利益を得る行為です。 - 運び屋
違法薬物などを運搬します。
（※）「アポイントメント電話強盗」の略。電話をかけてターゲットから資産や家族の有無を聞き出し、住人がいない（少ない）時間帯などを狙って行う強盗
闇バイトという名称でも、行為は犯罪なので、有罪になる可能性は大きいのが実情です。
叩きは住居侵入罪（刑法第130条）、窃盗罪（刑法第235条）に問われますし、暴力を振るうなどして強奪すれば、強盗罪（刑法第236条）が成立する可能性があります。
強盗罪で有罪となると「五年以上の有期懲役」が命じられます。一定期間、刑の執行が引き延ばされる執行猶予がつく条件は「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」なので、強盗罪の場合は執行猶予がつきません（刑法第25条）。
また、かけ子・受け子・出し子は、詐欺罪（刑法第246条）、窃盗罪となる可能性があります。
口座提供や売買は、犯罪による収益の移転防止に関する法律第28条に違反しますし、運搬役は違法薬物を所持したとして、覚醒剤所持罪（覚醒剤取締法第41条の2）などに問われます。
有罪が確定すると前科がつきます。前科がつくと、就職や結婚に際して大きな足かせとなり、人生を大きく狂わせることになりかねません。
出典：e-Gov法令検索「刑法」 出典：e-Gov法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」 出典：e-Gov法令検索「覚醒剤取締法」2. 闇バイトは実刑になる？
自分に近しい人が闇バイトに関わったら、気がかりなのは刑務所に行くどうかです。この点を中心に解説します。
（1）初犯や末端の役割でも実刑になるケースがある
闇バイトに関与すると、たとえ初犯であっても、実刑になる可能性があります。受け子などの末端の役割をこなしただけだとしても、関係ありません。また、犯罪に関与した回数が多いほど、刑罰も重くなります。ある事例では、複数の特殊詐欺に関わって、初犯でも3年以上の懲役に科せられました。特殊詐欺の場合、組織的かつ計画的な犯罪で、非常に悪質性が高いことから、このように重い刑罰になります。
（2）闇バイトだと知らなかったとしても逮捕される？
闇バイトが犯罪だと「知らなかった」としても、逮捕される可能性はあります。
犯罪が成立するには「故意」が必要です。故意は日常生活では「わざと」を意味しますが、刑法上では「自分の行為が犯罪だと認識し、それでもかまわないとする」ことを意味します。しかし「これってちょっと怪しいバイトでは？」くらいの軽い認識であっても、故意があった、つまり「犯罪だとわかってやった」とみなされる可能性があります。
3. 闇バイトに手を染めてしまったら
闇バイトに応募してしまったら、警察へ相談、出頭をすることが適切な判断です。出頭する際に、弁護士が付き添うことも可能です。
すでに被害を出してしまった場合は、被害者に謝罪して示談金を払ったうえで、被害届や刑事告訴を取り消してもらうことや、検察官や裁判官に「刑罰は望まない」という意思表示をしてもらうこともできる可能性があります。
被害者が警察へ届け出る前に示談が成立すれば、事件発覚前に問題を解決させることも可能です。また、逮捕や勾留された後であっても示談が成立すれば、検察官が不起訴処分を下して釈放される可能性もあります。
このような被害者に対する被害弁償、示談については弁護士が交渉できます。また、取り調べに際して、間違った供述調書が作成されないように、被疑者へ適切なアドバイスをすることも可能です。
闇バイトは犯罪行為で、重い刑罰に処せられる可能性があります。もし関わってしまったら、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年06月08日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
犯罪・刑事事件に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか？
関連コラム
犯罪・刑事事件に強い弁護士
-
メールでお問い合わせ電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00 -
メールでお問い合わせ電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00 -
メールでお問い合わせ電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00 -
メールでお問い合わせ電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00 -
メールでお問い合わせ電話番号を表示する 050-2018-0940現在営業中 6:00〜23:00