示談交渉を自分でするには|刑事事件で弁護士をつけない場合の注意点

示談交渉を自分でするには|刑事事件で弁護士をつけない場合の注意点

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

刑事事件で自分が加害者となった際、不起訴処分や刑罰の減軽を望むのであれば、示談の成立は重要なポイントです。一般的に、示談交渉では弁護士が話し合いを進めますが、状況によって加害者が自分で示談を進めることも可能です。

本コラムでは、加害者が自分で示談交渉を進めるときの流れと注意点、弁護士に依頼するメリットを解説します。

1. 弁護士がいなくても刑事事件の示談は可能

刑事事件において、加害者が被害者に示談交渉を行うこと自体は可能です。示談交渉を進める際は、以下の手順で行います。

(1)被害者とコンタクトをとる

被害者にコンタクトをとるところから示談交渉がスタートします。詳しくは後述しますが、何らかの理由で被害者に連絡がとれない場合、自分で示談を進めることは困難です。

(2)謝罪し、示談交渉を持ちかける

示談交渉を持ちかけるにあたり、まずは丁寧に謝罪することが大切です。被害者が交渉に応じてもよいと思えるよう、真摯(しんし)に謝罪の気持ちを伝えましょう。お互いに非があると思っているケースでは、謝罪を伝えることが困難かもしれません。そのような場合には、弁護士などの専門家に間に入ってもらった方が円滑に話し合いを進められます。

(3)加害と被害の状況を確認する

被害者が示談の交渉に応じる意向を示してくれたのちに、加害と被害の状況をそれぞれ確認しなければなりません。どのような加害行為によって、どれほどの被害が生じたのか確認することで、被害弁償額が決まります。

(4)具体的な話し合いを行う

状況の確認を終えたら具体的な話し合いに移ります。この段階では、弁償を含む示談金額、被害者による許し(宥恕:ゆうじょ)、親告罪であれば告訴取り消しなどについて話し合いを進めます。蒸し返しによるトラブルを防止するため、示談で決まった内容以外は請求しないという清算条項を盛り込むことも忘れないようにしましょう。

(5)合意できた内容を示談書にまとめる

話し合いで取り決めた内容は、認識の相違を防ぐため書面(示談書)にまとめます。自分で示談を進める場合、適切な形式・内容で示談書を作成できない可能性があります。抜け漏れによるリスクを防ぐためにも、弁護士にチェックしてもらったほうが安心です。

2. 刑事事件の示談交渉、自分でできるか否かの判断基準

示談交渉は、弁護士に依頼したほうが望ましいケースと、自分で進められるケースがあります。自分のケースがどちらに該当するか、判断するための基準を以下にまとめました。

(1)弁護士に任せるべきケース

  • 自分(加害者)が逮捕・勾留されている
  • 被害者との面識がない
  • 罪証隠滅や証人威迫を疑われるおそれがある
  • 被害者が連絡を拒絶している

加害者本人が身柄拘束されている場合は、自由に行動できないため、示談交渉は弁護士に任せる必要があります。また、被害者との面識がなければ、連絡先を知り得る方法がないため、交渉が難航するかもしれません。そのため、このようなケースも弁護士に任せたほうがよいと考えられます。

さらに、被害者と会うこと自体が証拠の隠滅や証人(この場合は被害者)への脅しを目的とするものだと、検察官や裁判官に疑われるおそれもあります。心証が悪くなりかねないため、弁護士に任せたほうが無難です。この他にも、被害者が連絡を拒絶するケースにおいて、弁護士ならば会ってもらえるなど、弁護士に依頼したほうが円滑なケースは多数挙げられます。

(2)自分で示談交渉ができそうなケース

  • 上記の弁護士に任せるべきケースに該当しない
  • 許してもらえそうな見込みがある

これらに該当するケースでは、自分で示談交渉を進められる可能性があります。ただし、示談の必要があるほどの加害行為をしてしまっている以上、被害者との交渉がスムーズに進むとは言い切れません。慰謝料などを取り決める過程で決裂してしまうことも大いに考えられます。自分で示談交渉を進められそうな場合でも、慎重に臨むようにしましょう。

3. 刑事事件の示談交渉を自分でするときの注意点

(1)刑事事件の示談はスピード勝負

刑事事件で警察による取り調べから刑事裁判に至るまでには、いくつかの段階があります。身体拘束されている事件の場合、逮捕されてから48時間以内の検察官送致、それから24時間以内の勾留判断、最長20日間の勾留を経て、起訴されるかどうかといった判断がなされます。それぞれの段階へと移る前に示談が成立すれば、身柄がすぐに解放されるかもしれません。このように、示談はスピードが勝負です。

(2)自分で示談交渉を始めることが困難なケースも

被害者の連絡先がわからないケースや交渉に応じてもらえない場合、示談交渉を始めること自体が困難になります。警察や検察は、原則として加害者に被害者の情報を開示しません。そのため、弁護士経由でなければ示談を進められないケースもあります。

(3)高額な示談金を提示される

法律の専門家ではない加害者は、被害に応じた示談金の相場もわからないため、適正な金額交渉が行えません。被害者が要求してきた金額に対して「高すぎる」と感じる場合でも、その根拠や適切な額がいくらなのかを示せなければ、被害者は納得してくれないはずです。場合によっては、弁護士に依頼した場合と変わらない額を支払わなければならない可能性もあります。

(4)十分な示談交渉ができずにトラブルにつながる

交渉内容の抜け漏れや示談書の不備、話し合いの内容が不十分だった場合、のちのトラブルを引き起こしかねません。

4. 刑事事件の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

弁護士に示談交渉を任せることで、話し合いをスムーズに進められます。警察や検察の捜査段階で示談が成立した場合、被害者からの「処罰を求めない」という文書によって早期釈放や不起訴処分が期待できます。また、弁護士は加害者本人ではないため、被害者と冷静に交渉を進めることが可能です。

裁判所の判断や示談金の相場を踏まえた主張や提案もできるため、円滑に話し合いをまとめられるのも利点のひとつです。その他にも、自身の労力を抑えられるなど弁護士に依頼するメリットはさまざまです。

示談交渉は自分で行うことも可能ですが、示談が無事まとまるといった保証はありません。示談交渉の成功を目指すのであれば、弁護士へ依頼することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年06月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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