家賃滞納でいつ強制退去になる? 立ち退きにならないための対処法

家賃滞納でいつ強制退去になる? 立ち退きにならないための対処法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

借金などで家賃を延滞している場合、強制退去がなされるのではないかと不安になる人もいるかもしれません。しかし、強制退去までには順序を踏むことが一般的で、すぐに立ち退きしなければならないケースはまれです。

本コラムでは、家賃滞納後の強制退去までの流れや対処法などを解説しています。ぜひ参考にしてください。

1. 家賃滞納から3か月以上で強制退去のリスクが高くなる

数か月に及ぶ家賃滞納の場合、借り主が義務を果たしていないことを理由に、大家や管理会社などの賃貸物件の所有者から、賃貸借契約を解除されたり、強制的に退去させられたりする可能性が高まります。

(1)強制退去が行われるまでの目安

賃貸契約書には家賃の未払いに関する規定が明記されています。法律では明確な期間が定められていないものの、3か月以上の未払いがある場合には、裁判所が明け渡しを命じる判決が出る可能性は高いといえます。その後、賃貸人が強制執行を申し立て、強制退去が行われることが一般的です。

なお、公営住宅の場合は、公営住宅法第32条第1項第2号により「入居者が家賃を三月以上滞納したとき。」(三月=3か月)に明け渡しを請求することができると取り決められています。

出典:e-Gov法令検索「公営住宅法

(2)家賃滞納はどこまでセーフ?

家賃滞納による強制退去において、いつまでならセーフ、という法律は存在しません。ただし、滞納が1~2か月であれば、一時的な不払いであって今後賃料の支払が行われる可能性が十分にあるため、住居という生活基盤を脅かす強制退去を認めない判断がなされることが一般的と考えられます。

しかし、そもそも家賃滞納は賃借人としての信頼性が損なわれる行為であり、信頼関係を築くためにも継続して支払う必要があります。

2. 家賃滞納から強制退去にいたる流れ

家賃を滞納したからといって、すぐ強制退去に至るわけではありません。滞納した期間や家主・管理人への対応によって異なります。

以下で、賃貸家賃の滞納から立ち退きや強制退去までの一般的な流れを解説します。

(1)賃貸人への督促

家賃の滞納後、通常は家主や管理会社から、1日~1週間以内に電話や手紙による催促がなされます。通常は電話による督促ですが、手紙(催促状)が届くこともあります。この段階の通知はそこまで厳しいものではなく、支払いの約束がされれば、一定の期間待ってもらえるケースがほとんどです。

(2)連帯保証人への督促

家賃の滞納が続くと、連帯保証人に対しても催促が行われる可能性があります。家主によっては、滞納後2〜3か月は状況を見守ることもありますが、早い場合には1か月程度で連帯保証人への催促が始まることもあります。

この段階では、家主や管理会社は家賃未納によるリスクを考慮し、より強く家賃支払いを求める傾向があります。

 

(3)内容証明郵便での督促

連帯保証人がいない、または家賃を支払わない場合には、一般的に、次のアクションとして内容証明郵便が届きます。内容証明郵便が届くのは、一般的に家賃の滞納が3~6か月ほど続いた場合であり、契約解除の通知を伴います。

(4)明渡訴訟を起こされる

内容証明郵便による催促や契約解除の通知を受けても家賃の滞納が続くと、家主が明渡訴訟を提起してくることになります。内容証明郵便での催促から明渡訴訟を起こすまでの期間は、おおよそ1か月程度です。

明渡訴訟が起こされた場合、賃借人は裁判所に出席して言い分を述べる必要があります。一般的には、賃料を支払うことについての約束や支払計画などを提案して、賃貸人と和解できるように交渉を進めます。

 

(5)強制退去

裁判で明渡しを認める判決が下されて確定すると、賃貸人は強制執行手続きを開始します。賃借人は強制的に退去させられることになります。

なお、裁判所による強制執行で発生した退去費用は、退去させられた賃借人が支払うのが基本です。

3. 家賃の滞納は強制退去以外にもリスクがある

強制退去以外で挙げられる家賃滞納のリスクとしては、以下のような点です。

  • 延滞(遅延)損害金の発生
  • 連帯保証人からの信頼損失
  • 訴訟費用の発生
  • 信用情報への「事故」登録

特に信用情報への「事故」登録は、いわゆる「ブラックリスト入り」の状態になることを指しています。一定期間、賃貸物件やローン契約、クレジットカードの申請などが困難になる場合があるため、注意しましょう。

4. 家賃を滞納したときの3つの対処法

(1)家主や管理会社との交渉を試みる

特定の事情により1~2か月程度家賃支払いが遅れる場合などは、まず家主や管理会社に相談してみましょう。いつまでに支払いが可能かを伝えるなど、支払いの「意思」を示すことで、一時的に待ってもらえるケースもあります。

これに対し、何も伝えずに家賃を滞納すると、信頼関係が崩れてしまい、厳しい督促や法的手段に移行される可能性があります。まずは謝罪し、誠実に状況を伝え、解決策を提案する姿勢を示すことが大切です。

(2)出費を見直し、支払い計画を立てる

家賃を滞納したときの対処法として、出費を見直し、支払い計画を立てることも大切です。

毎月のライフラインにかかる費用が高い場合や、遊びや趣味に使い込んでいる場合など、支出が高くなりすぎていることが家賃の支払いに影響を及ぼしている可能性があります。さらに、借金返済が家計を圧迫している場合には、繰り上げ返済も視野に入れましょう。

まずは出費の大きいものを洗い出し、必要性を見直すことで、おのずと支払い計画が立てられるようになります。

(3)引っ越すことも選択肢に入れる

家賃を払い続けられないと感じた場合は、今よりも家賃が安い所へ引っ越すことも選択肢に入れましょう。礼金・仲介手数料・更新料・保証人が不要の賃貸を検討するのもひとつの手です。できるだけ初期費用をかけずに引っ越すことで、今後の負担も軽減しやすくなります。

5. 家賃以外にも複数の支払い滞納がある場合の対処法

家賃滞納の背景にはさまざまな事情がありますが、借金が要因となっている場合は、根本的な対策を模索する必要があります。その場合は、債務整理を行うことがおすすめです。

以下で、債務整理の主な方法を解説します。

(1)任意整理

任意整理とは、債権者と直接話し合いを行い、返済方法などについて新たな取り決めをする手続きのことです。

任意整理のメリットとしては、柔軟な返済計画を立てられる点や、引き直し計算によって借金額を減額可能な点が挙げられます。

(2)個人再生

個人再生とは、債務者が返済できない状況にある場合に、債権者に対する返済総額を減額し、その後の金額を原則3年間で分割して返済する再生計画を立てる手続きのことです。

裁判所が認めれば、計画通りの返済を行うことで、残りの債務が免除される点がメリットです(養育費や税金など一部の債務は除外)。

(3)自己破産

自己破産とは、自身の収入だけでは返済ができないほどの借金を抱えた場合に、その個人が裁判所に申し立てを行い、破産法に基づいて債務整理を行う手続きのことです。基本的には「最後の切り札」として利用される手続きです。ただし、養育費や税金など一部の債務は、免責されません。

破産手続きが開始されると、破産者が保有していた財産は基本的に全て破産管財人によって管理され、現金化され、債権者への支払いに充てられます。

家賃滞納はひとりで悩む必要はありません。不安に感じている場合は、弁護士などの専門家への相談を検討してください。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年06月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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