投資に失敗してしまった…借金の解決方法は?

投資に失敗してしまった…借金の解決方法は?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

日本弁護士連合会の調査によると、2020年に個人再生や自己破産をした人の1.53%が投資の失敗で借金を作っています。

投資は余剰資金で行うことが前提であり、それを守らないと借金を背負うリスクがあります。また、投資手法のなかには、失敗した場合に投資額を上回る損失を生じるリスクを抱えているものも見受けられます。

そこで今回は、投資で借金を作ってしまった場合の解決方法について解説していきます。

1. 株式やFXなどの投資に失敗してしまったら

(1)なぜ投資で失敗してしまうのか

高額の借金を負うのは、株式やFXなどの投資で失敗してその分を穴埋めしようと借り入れを行う場合です。

投資で失敗する主な理由は以下のとおりです。

  • よく考えずに株式の銘柄を購入する

    株式投資の場合、「ランキングに乗っているし有名企業の株だから大丈夫だろう」とよく考えずに銘柄を選び、値下がりなどによって失敗することが多いといわれています。

  • 損失を取り返したいとムキになる

    投資で損失を被ると自己資金が減りますが、そうすると平常心を保ちにくくなり、「損失分を何としても取り返したい」といった気持ちのままトレードを行い、結果、冷静な判断ができずに損失を大きくするといったことが往々にしてあります。

  • 成功した経験から自信過剰になる

    一度うまくいくと気分が良くなり、「自分は投資の才能があるのかもしれない」と自信過剰になると、実力を過信してしまいがちです。その結果、投資額を増やし、大きな損失を被ることもあります。

  • 余剰資金以上で投資する

    投資に回すお金の範囲をあらかじめ決めず、損失が出た場合に、生活費や使う目的が決まったお金に手を出して回収ができないというケースもあります。特に危険なのが、証券会社に現金や株式を担保として預けて借入をして行う「信用取引」です。預けた担保の数倍の取引を行うことができるので、投資額よりも損失が大きく上回るリスクがあります。

(2)借金問題を放置するとどうなる?

借金を返済せずに放置しておくと、以下のようなリスクが発生します。

  • 遅延損害金が膨らむ

    借金を返済せずにいると遅延損害金が膨らみます。

    本来、毎月予定している返済日には、元金と利息を払うこととなります。支払日に間に合わずに滞納すると、1日ごとに遅延損害金が加算され、元々返済しなければなかった総額と合わせ、トータルの負債が速いスピードでどんどん大きくなります。

  • ブラックリストに登録される

    借金を2、3か月分滞納すると、いわゆる「ブラックリスト」に登録されて、新たに借り入れをしたり、クレジットカードを作成したりするのが困難になります。

    「ブラックリストに登録される」とは、個人信用情報機関に、借金を滞納したという「事故情報」が登録されることを意味します。

    貸金会社や信販会社などは、審査を行うために、個人信用情報機関の信用情報にアクセスします。

    借金を2、3か月滞納すると、金融事故として、個人信用情報機関に記録が残ることとなります。そのため、新たな借り入れが困難となります。

  • 法的措置をとられ、給料や不動産などを差し押さえられる

    返済しない状態が続くと、最終的に債権者から訴訟を提起され、それでも支払わなければ、支払を命じる判決が言い渡されます。

    これを無視すると、強制執行を受けることになります。

    まず、預金口座の差押えが行われます。また、不動産や車などの財産が差し押さえられて、没収・換金され借金の返済に充てられることもあります。

    それ以外にも、給料を差し押さえられて、毎月の給料から一定額が損失の返済に充てられる可能性があります。

    月給に対する差押えについては、以下の通り、手取り額(総支給額から所得税・住民税、社会保険料、通勤手当を除いた額)を基準とする限度額が設けられています。

    • 手取り額が月44万円以下の場合:手取り額の4分の1
    • 手取り額が月44万円超の場合:手取り額−33万円

2. 投資の失敗でできた借金の解決方法

(1)自力で借金を返済できない場合の債務整理とは

投資で失敗して借金ができた場合でも、債務整理をすることで、減額・免除してもらえる可能性があります。

具体的な借金の整理方法には、任意整理、個人破産、自己破産の3種類があります。

以下では、それぞれの方法のメリット・デメリットについて解説します。

(2)任意整理のメリット・デメリット

任意整理とは、裁判所を通さずに、債権者と直接借金の減額交渉をする手続です。

投資で借金を作ってしまった人も利用可能です。

任意整理は、当事者同士あるいは弁護士が介入して話し合いを行う私的な手続であり、交渉によって和解の条件や内容が異なります。

多くの場合、将来利息や遅延損害金をカットしてもらう形で交渉を進めることになります。

メリットとしては、裁判所を通さない手続なので、柔軟に解決してもらうことが可能ということが挙げられます。

場合によっては元金のみの返還で済むこともありますし、長期間の分割を認めてもらえる場合もあります。

デメリットとしては、①債権者ごとに和解基準が異なっており、長期分割になる場合には、将来利息をカットしてもらえないなど大きな減額を期待できない場合もあること、②定職についておらず安定した収入がない場合には応じてもらえない場合もあることが挙げられます。

(3)個人再生のメリット・デメリット

個人再生とは、裁判所を通じで借金を5分の1から10分の1程度に減額し、原則3年、場合によっては5年で返済する手続です。投資で借金を作った人も利用することが可能です。

メリットとしては、一律に借金の額を大きく圧縮することができることが挙げられます。任意整理では、借入先ごとに和解基準が異なり、大きく債務を圧縮できないこともありますが、個人再生は少なくとも5分の1程度に減らすことができます。

デメリットとしては、個人の借入が5000万円まででなければ利用できないという点が挙げられます。これ以上の多額の負債を負っている人の場合は、個人再生を利用することができません。任意整理も難しければ、次項で解説する自己破産をすることになります。

(4)自己破産のメリット・デメリット

自己破産は、裁判所を通じて、借金の返済を免除してもらう手続です。

裁判所が認めてさえくれれば、どれだけ高額な借金でもゼロにすることが可能です。個人再生のように利用できる借金の額に制限はありません。

借金の総額に対して収入が少なく返済が事実上困難な人や、借金額が大きすぎる人が利用する手続です。

メリットとしては、先に記載したように、借金を免責してもらうことが可能であることが挙げられます。自己破産後はほとんどの借金から逃れることができるため、経済的な立ち直りがしやすいといえます。

デメリットは、借金の額が大きい場合や借金の理由によっては、免責されるまでの手続が長期間にわたる可能性があることが挙げられます。

自己破産には、「同時廃止手続」「管財手続」があります。

「同時廃止手続」は、破産開始決定時に、債権者に配当する財産がないことが明らかであり、他に調査すべき事由もない場合に採用される簡易な破産手続です。

これに対して「管財手続」は、債権者に配当すべき財産の有無や、次項で説明する「免責不許可事由」の有無を、裁判所が選任する管財人が調査し、破産者の財産を管理する手続です。借金の経緯や財産が複雑な場合には、免責されるまでに時間がかかります。

投資の失敗を原因として自己破産の申立てをする場合には、原則として管財手続が採用されます。

なぜなら、次項で解説する免責不許可事由があるかどうか検討する必要があるからです。

全ての手続が終了して免責されるまでに、長期間かかる可能性があり、場合によっては1年以上の期間を必要とする場合もあります。

また、管財事件になると管財費用の予納金として数十万円が必要となるので、自己破産にかかる費用が高額になるという点もデメリットとして挙げることができます。

(5)投資の失敗による借金では、自己破産が認められない可能性も

投資によって借金を作った場合には、自己破産が認められない場合があります。

投資やギャンブルは射幸行為(偶然による利益を狙う行為)と呼ばれ、射幸行為によって「著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担した場合」は破産法の「免責不許可事由」に該当するのです。

ただし、免責不許可事由がある場合でも、裁判所の総合判断で自己破産が認められる可能性があります。それは自己破産が、借金で生活が破綻した人に対して経済的再生の機会を与えることを目的としているからです。

そのため、投資によって借金ができた場合でも、たとえば、反省の意思を示し、家計簿をつけて家計管理を行うなど生活態度を改め、破産手続きに積極的に協力しているなどの事情があれば、裁判所の裁量で免責され、借金をゼロにすることが可能な場合もあります。

ただし、過去に投資による借金を理由として自己破産の申立てを行って免責を得た人が、再度同じ理由で自己破産を申し立てた場合には、免責が認められない可能性が極めて高くなります。

3. 投資の失敗による借金で悩んでいる方は弁護士に相談を

投資の失敗で借金ができた場合、どのような方法で整理すべきかは、借金の総額やその人の収入などの事情に負うところが大きく、自分自身では判断することが難しいといえます。

自己破産がどうしてもいやだからと任意整理をしても、結局返すことができず自己破産することになれば、二度手間になり、その分弁護士費用もかさむこととなります。

そのため、投資の失敗で借金が膨らんだ人は、いち早く弁護士に相談することが必要です。

弁護士が受任通知を債権者に送付すれば督促行為は止まります。その後の債権者対応は全て弁護士にしてもらうことができるので、精神的に追い詰められることもなくなります。

そうすれば、弁護士とともに最善の債務整理の方針を検討することができます。

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  • こちらに掲載されている情報は、2025年01月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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