個人再生の流れ、手続きや期間、方法などを解説

個人再生の流れ、手続きや期間、方法などを解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

個人再生(小規模個人再生)は、財産を手元に残しながら債務を大幅にカットできる可能性のある、利用価値の高い債務整理手続きです。

今回は、個人再生手続きの流れ・メリット・注意点などを解説します。

1. 個人再生手続きの流れ・所要期間

個人再生手続きは、大まかに以下の流れによって進行します。

(1)個人再生手続き開始の申し立て

債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(民事再生法第5条第1項)に、個人再生手続きの開始を申し立てます。

(2)個人再生手続き開始の決定

以下の要件をすべて満たしていることを条件として、裁判所が個人再生手続きの開始を決定します。

  • 支払い不能が生じるおそれがあること(同法第21条第1項)
  • 再生手続きの費用が予納されたこと(同法第25条第1号)
  • 係属中の破産手続きまたは特別清算手続きと比べて、個人再生手続きによる方が債権者の一般の利益に適合すること(同条第2号。清算価値保障原則)
  • 再生計画の作成・可決・認可の見込みがあること(同条第3号)
  • 不当な目的による申し立てなど、申し立てが不誠実にされたものでないこと(同条第4号)
  • 将来において継続的に、または反復して収入を得る見込みがあること(同法第221条第1項)
  • 再生債権の総額が5000万円以下であること(同)

なお、個人再生手続きの開始が決定されると同時に、債務者の財産調査等を行う個人再生委員も選任されます。

(3)再生債権の確定

債権者からの届け出および債務者の認否を基に、弁済の対象となる再生債権を確定します。

(4)再生計画の作成

債務の減額幅や、減額後の債務の弁済スケジュールなどを内容とする「再生計画」を債務者が作成し、裁判所に提出します。

(5)債権者による再生計画の決議

債権者の頭数の過半数および債権額の2分の1以上の賛成をもって、再生計画を決議します(同法第230条第6項)。

(6)裁判所による再生計画の認可

債務者に安定収入の見込みがあること、最低弁済額をクリアしていることなどを条件として(同法第231条第2項)、裁判所が再生計画認可決定を行います。

(7)再生計画の遂行

認可された再生計画に沿って、債務者が債権者に対して、減額後の債務を弁済します。

個人再生手続き開始の申し立てから、裁判所による再生計画の認可が確定するまでの期間は、おおむね半年程度です。その前に、申し立ての準備期間が数か月程度かかります。

よって、個人再生に基づく債務の減額が実現するには、だいたい1年弱の期間が必要となります。

なお、弁護士に個人再生手続きの代理を依頼すれば、この期間中、債権者からの取り立ては行われません。

2. 個人再生のメリット

個人再生手続きは、他の債務整理手続きである任意整理や自己破産と比較した場合、主に以下のメリットがあります。

(1)債務を大幅にカットできる可能性がある

個人再生では、100万円、債務総額の一定割合、財産をすべて処分した場合に得られる金額などのうち、最も高い数字が最低弁済額になります。たとえば、債務総額が3000万円から5000万円の時は、債務総額の10分の1が基準とされるため、最大10分の1まで債務を減額できることもあります。

元本のカットがほとんど認められない任意整理に比べると、個人再生の債務減額効果は大きいといえるでしょう。

(2)担保権付きでない財産は処分されない

個人再生手続きでは、担保権が設定されていない財産は処分の対象になりません。

自己破産では財産の多くが処分されてしまうことと比較すると、個人再生は、生活への影響を最小限に抑えられる債務整理手続きといえます。

(3)マイホームを手元に残せる場合がある

担保権付きの財産は、原則として個人再生の手続き外で担保実行により処分されてしまいます。

しかし、自宅の土地・建物に限っては、「住宅資金特別条項」によって住宅ローンを減額の対象外とすることで、住宅ローンに基づく抵当権が設定されていても手元に残すことができます。

3. 個人再生をする際の注意点は?

個人再生には、上記のとおり多くのメリットがある一方で、以下に挙げる注意点が存在します。

どの債務整理手続きを利用すべきかについては、ご自身の状況に合わせて検討する必要がありますので、一度弁護士にご相談ください。

(1)安定収入がないと利用できない

個人再生手続きの利用には、将来において継続的に、または反復して収入を得る見込みがあることが要件とされています(民事再生法第221条第1項)。

会社員として一定期間以上勤務している方であれば問題ありませんが、自営業で収入のばらつきが大きい方や、定職に就いていない方は、個人再生を利用できない可能性があるので注意が必要です。

(2)再生計画案につき、債権者の決議が必要

再生計画案の決議には、債権者の頭数の過半数、および債権総額の2分の1以上という2つの賛成要件を満たす必要があります(民事再生法第230条第6項)。

債権者の同意を得るためには、弁済が確実に行われることをきちんと示しながら、債権者に対する説得を丁寧に行いましょう。

(3)事故情報が登録される

個人再生手続きを利用すると、個人信用情報機関に事故情報が登録されてしまい、一定期間新規融資を受けられなくなったり、クレジットカードが使えなくなったりするデメリットが生じます。

もっとも、このような弊害は自己破産や任意整理でも共通して発生するので、債務整理を行う前に覚悟しておきましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年05月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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