養育費を支払わない方法|回避は許される? 払えない場合の対処法も解説
この記事の監修弁護士
ベリーベスト法律事務所 町田オフィス
離婚した後、失業や面会交流ができないなどの事情により、養育費の支払いをやめたいと思う方もいらっしゃることでしょう。
本コラムでは、養育費を支払わなくていいケースや減額してもらえるケースがあるのか、養育費が払えない場合、どのような対応をすべきかなどについて解説します。
1. 養育費を支払わなくてよいのか
(1)養育費の支払いは「義務」である
離婚して親権を失った親には、子どもの養育費を支払う義務があります。離婚して親権を失っても、子どもに対する扶養義務を負うことに変わりはないためです。
(2)養育費を支払わない場合の罰則
養育費の不払いそのものに対する罰則はありません。
しかし、調停調書や公正証書があるにもかかわらず支払いをしない義務者に対して、親権者が強制執行に踏み切り、財産開示請求という手続きを行った場合には、刑罰を科されることがあります。
具体的には、裁判所からの開示命令に従わずに、陳述を拒否したり、嘘を述べたりすると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科され、前科がつく可能性があります。
(3)養育費を支払わない場合のリスク
最も大きなリスクのひとつは、給与や預貯金などの財産の差し押さえを受けることがあり得る点です。
調停により金額が定まり、調停調書が作成された場合や、作成した公正証書に「強制執行認諾文言」が付されている場合には、強制執行が行われ、財産を差し押さえられるリスクがあります。
差し押さえの範囲は、給与から税金などを控除した金額の2分の1と、かなり広範囲です。また、会社に養育費の支払いを放置していたことが知られてしまいます。
もうひとつのリスクは、滞納分に遅延損害金が付されてしまうことです。
これは、養育費の不払いを続けていると、実際に支払いを怠った金額よりも大きな額を支払わなければならないことを意味します。
遅延損害金の利率は、特段の合意がない場合、現在は年3%です。大したことがないように思えますが、不払いの期間が長くなると遅延損害金の金額も大きくなるので、注意が必要です。
2. 養育費を支払わなくてよい方法とは?
(1)支払わなくてよいケース
①相手の同意がある場合
離婚の際に相手から養育費を支払わないことについて同意を得た場合には、原則として支払いをしないで済みます。
しかし、離婚の際に放棄が可能なのは親権者の養育費請求権だけです。子どもの扶養請求権は残っているので、親権者が養育費を払わないことに同意しても、子どもから扶養料を請求される場合があります。
また、養育費の支払いをしないことに同意した親権者本人についても、その後、同意当時の事情に変更が生じた場合には(例:子どもの進学や病気、収入の悪化)、請求が認められる可能性があります。
②親権者の再婚相手と子どもが養子縁組した場合
親権者の再婚相手と子どもが養子縁組した場合には、子どもの扶養義務は第一次的には養親が負います。そのため、この場合には、実親の養育費支払義務は免除されることが多いといえます。
ただし、再婚相手に資力がなく子供たちを十分に扶養できない場合などは、実親が養育費を一部ないし全部を支払うことになる可能性が高くなります。
③無収入になった場合
リストラや病気などのために仕事を失い、収入がなくなった場合も、原則的には養育費を支払わなくてよいといえます。
しかし、年齢や健康状態などから十分に働くことができるといえる場合には、一定程度の収入があることを前提に養育費を支払わねばならなくなることもあります。
④相手の収入が自身の収入より高い場合
調停や審判では、一般的に裁判所が作成した「養育費算定表」にしたがって、養育費の金額を決めます。
これによると、親権者の収入が支払義務者の収入より高いからといって、一律に養育費が免除されるわけではありません。支払義務者の収入がかなり少なく、親権者の収入との格差が大きい場合に、支払わずに済むことになります。
⑤子どもが成人した場合
養育費は、未成熟な子どもに対する扶養義務の履行として支払うものなので、子どもが成人した場合には、原則として支払いの義務はありません。
ですが、近年の高学歴化の傾向に伴い、子どもが大学に在学している間は養育費を払うという取り決めをすることも少なくありません。裁判所が審判で大学在学中の養育費の支払いを命じることもあります。
⑥自分と子どもの間に血縁がない場合
例えば、妻の前婚相手との間にできた子どもと婚姻時に養子縁組したものの、離婚時に縁組を解消した場合には、養育費を支払う必要はありません。一方、離婚後も子どもとの養子縁組を解消しない場合は、法律上の親子関係は存続するため、養育費を支払う義務を負います。
⑦未婚で子どもを認知していない場合
婚姻していない相手との間に子どもができても、その子どもを認知していない限りは、養育費を支払う必要はありません。
ただし、子を産んだ女性から裁判を起こされ、判決により強制認知となった場合には、男性と子どもの間に法律上の親子関係が生じることとなるため、養育費の支払義務が発生します。
(2)面会交流を拒否された場合の支払い義務
子どもとの面会交流を拒否されたことを理由に、義務者が養育費の支払いを止めるケースが散見されますが、面会交流と養育費の支払いは全く別な問題です。
子どもとの面会交流を拒否されても、養育費の支払義務が免除されるわけではなく、不払いが続けば、給与等の差し押さえのリスクが生じます。
3. 養育費を減額することは可能?
(1)養育費を減額できるケース
①相手との合意があった場合
相手との間で養育費の減額を合意した場合には、問題なく減額できます。
②自分が再婚し子どもができた場合
再婚して、再婚相手との間に子どもができた場合や、再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合は、扶養義務を負う家族が増えて経済的負担が増すことになるため、養育費の減額ができます。
③収入が減ってしまった場合
収入が減ったからといって、常に養育費の減額が認められるわけではありません。
リストラや病気・ケガなどのやむを得ない事情で収入が減った場合には、比較的減額が認められやすいですが、自己都合による転職で収入が減った場合には、減額が認められないことも少なくありません。
④親権者の収入が増えた場合
親権者の収入が増えた場合も、養育費の減額が認められることがあります。ただし、増収額がそれほど大きくない場合や、養育費の取り決め時に、親権者が無職であっても「就業可能状態」としてある程度の収入があることを前提に金額を決めていた場合には、減額が認められないこともあります。
(2)養育費免除・減額の流れ
養育費の免除や減額を相手に求めるには、まず、相手に協議をもちかけます。協議が整わない場合は、家庭裁判所に調停を起こすことになります。
調停が決裂して不成立になった場合には、裁判所が審判を下して、免除や減額の可否、減額後の養育費の金額を決めることとなります。
4. 養育費を支払えない場合の対処法
(1)まずは相手に交渉してみる
養育費を支払えない場合には、相手に無断で支払いを止めたり減額したりせずに、まず相手に免除や減額の交渉をもちかけることが必要です。
無断で支払いを止めたり減額したりすると、未払い分を後々請求されることになりかねません。トラブルに発展する危険性もあります。まず話し合いをすることを忘れないようにしてください。
(2)弁護士に相談してみる
自分で相手に交渉することが難しいとき、または、自分で交渉したものの相手に断られてしまったときは、ぜひ離婚等の家事事件の経験が豊富な弁護士に相談してください。
弁護士であれば、法的に養育費の免除・減額が認められるケースか検討したうえで、最適な方法で免除や減額ができる方法をアドバイスします。また、代理人として、相手と交渉をしたり調停を申し立てたりして、養育費の免除や減額に向けて有利な主張をすることもできます。
養育費の支払いに困っている方はぜひ、経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。
この記事の監修弁護士
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- こちらに掲載されている情報は、2024年06月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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