元夫からの養育費が少ない! 増額するための手続きや注意点とは?

元夫からの養育費が少ない! 増額するための手続きや注意点とは?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

離婚した時点では妥当だと感じて同意した養育費の金額でも、子どもの成長などに伴って、それだけでは足りなくなることは少なくありません。

本コラムでは、元配偶者(元夫)からの養育費が足りない・少ない場合の増額請求の進め方、調停・審判で増額が認められるケースなどを解説します。

1. 養育費は合意があれば自由に増額できる

離婚協議書などで一度養育費の金額を定めていても、相手と合意が取れれば、その後に増額することは可能です。

(1)公正証書を作成する重要性

養育費増額の取り決めをする際は、後に「言った・言わない」のトラブルを避けるために、離婚協議書よりも効力の強い「公正証書」を作成するのを忘れないようにしましょう。

公正証書とは、公的文書として扱われる、証拠力が高い書類で、全国にある公証役場で作成することができます。この公正証書に「強制執行認諾の文言」を入れておけば、万が一支払いが滞った場合に、調停や裁判をすることなく、給与や財産、不動産の差し押さえなどができます。

(2)法改正で強制執行の実効性が高まった

これまでは、相手方に財産内容を説明させるための「財産開示手続」において、相手方が強制執行を避けるために虚偽の申告などをしても前科のつかない行政上の罰(過料)しか科されませんでした。しかし、令和2年4月から、このような不誠実な対応をした場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科されることになりました。

また、これまではどの財産がどこにあるのかを、請求する側が見つける必要があり、強制執行の前提として相手方の財産を把握するのが現実的に難しい面がありました。しかし法改正により、相手の財産情報を調べるために金融機関などの第三者機関から情報提供を受けられるようになっています。

このように、養育費の強制執行については以前よりも実効性が高くなっているため、より確実に養育費を受け取るためにも、公正証書にしておくことが有効です。

(3)公正証書を作成する際のポイント

公正証書を作成するにあたっては、原則として当事者であるふたりがそろって公証役場に出向かなければいけません。ただし、弁護士などの代理人に手続を任せることも可能です。

2. 相手が合意しない場合は?

話し合いによってスムーズに増額の合意に至れば良いですが、相手方が合意しない場合は、家庭裁判所に対して「養育費増額調停」を申し立てることになります。

調停でも合意するのが難しければ、裁判所の審判によって、養育費が増額されるかどうかの結論が出されます。調停・審判で増額が認められた場合も、公正証書を作成した場合と同様、不払いの際は差し押さえなどが可能です。

ただし、調停・審判いずれの場合でも、基本的に「養育費算定表」を超えない範囲で、なおかつ「特別な事情」がないと、増額が認められるのは難しくなります。それぞれ解説していきます。

(1)「養育費算定表」を超える増額は難しい

適切な養育費の金額を算定する目安となるのが、裁判所の公式Webサイトで公表されている「養育費算定表」です。令和元年に改定されました。

この養育費算定表は、子どもの年齢、人数、養育費を受け取る側の年収、支払う側の年収などによって、目安となる養育費の金額がわかる表です。この表と照らし合わせながら、それぞれの事情も考慮して、適切な養育費の額が算定されます。

その結果として、すでに妥当とされる金額の養育費を受け取っていると判断された場合などは、それ以上の増額は難しくなります。また、事情によっては、継続的な増額ではなく、一時的な増額のみ認められることもあります。

(2)「特別な事情」とは

増額が認められる「特別な事情」とは、たとえば次に挙げるケースです。

  • 子どもの障害がわかり、それに伴って養育費を受け取る側の親がこれまでの勤務体系では働けなくなり、収入が減った
  • 子どもが持病を抱えることになり、継続的な治療が必要になった
  • 子どもがけがや病気で一時的に高額な治療費が必要になった
  • 子どもが親と同等の教育レベルとして私立大学を志望しており、塾や学費が必要になった
  • 養育費を受け取る側の親が病気になったことで、今までのようには働けなくなり収入が減った
  • 養育費を支払う側の親が、転職によって収入が大きく増えた

ただし、これらにあてはまったとしても、必ず増額が認められるとは限りません。特に教育費用に関して、「養育費を受け取る側は私立へ進学させたいが、支払う側に私立の学費や高額な塾代などに充当させる余裕がなく、公立に進学させたいと考えている」など、養育費を支払う側と教育方針が一致していない場合などは、認められにくくなります。

3. 話し合いの段階から弁護士を入れるとスムーズに

何らかの理由で離婚をしても子どもの親であることは変わりません。親である以上、子どもの健やかな成長を支える責任があります。そのため、養育費の金額は必要に応じて双方がよく話し合って決めなければいけません。

しかし、元夫が話し合いに応じなかったり、交渉を重ねても合意に至らなかったりする場合もあります。さまざまな理由で元夫に会いたくない、話をしたくない、と感じる人も少なくありません。

そういった場合は、なるべく早く弁護士へ相談するのがおすすめです。双方の経済事情と子どもの事情を考慮しながら、代理で元夫と交渉を進めてくれます。元夫との関係性が比較的良好であれば、交渉にあたってのポイントをアドバイスしてもらうのも有効です。

調停・裁判に発展した場合でも手続きや主張などのサポートを続けてくれるため、養育費の増額に関して、必要以上に心身をすり減らすことがありません。専門性が高く難しい書類に関しても弁護士がチェックしてくれるため、抜け漏れを防ぎ、何度もやり直しする手間も減らせます。

養育費の増額は簡単には実現できないため、専門家である弁護士のサポートが欠かせません。増額を求めたい場合は早めに弁護士に相談しましょう。

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