養育費をもっともらう方法はある? 増額請求できるケースを紹介
離婚した当初に取り決めた養育費の金額が、失業や病気などの事情の変化により、不足するケースは珍しくありません。養育費の増額は必ず認められるわけではありませんが、予想外の事情変更が生じた場合には認められることがあります。
本コラムでは、家庭裁判所に養育費の増額を認められやすいケースや弁護士を利用する効果などを解説します。
1. 養育費の増額請求、まずは話し合いから
養育費を受け取ってはいるものの、その金額が少ない・足りないと感じている方は少なくないはずです。そういった場合、元配偶者との関係が比較的良好なのであれば、直接の話し合いによって養育費の金額を決め直すことは可能です。
事情にもよりますが、養育費の金額は、裁判所のWebサイトで公表されている「養育費算定表」を参考に算出するのが一般的です。
子どもの人数、年齢、双方の年収などに応じて養育費の目安は変わるので、受け取っている養育費が平均的なのかどうか、まずは一度確認しましょう。双方が合意するのであれば、算定表よりも高い金額にしても、もちろん問題はありません。
養育費の金額を決め直したら、たとえ現在の関係性が良好であっても、今後トラブルが発生した場合などに備えて「公正証書」を作成しておくと安心です。この公正証書に、あらかじめ「支払いが滞ったら強制執行をする」といった内容を加えておけば、もしも養育費の支払いが滞ったとしても、裁判をすることなく直ちに差し押さえなどが行えるようになります。
2. 合意が得られなくても、増額が認められるケースとは?
元配偶者と円満に協議できた場合は問題ありませんが、合意が得られない場合や、そもそも元配偶者が話し合いに応じない場合、どうすればよいのでしょうか。
まずは、元配偶者に「養育費の増額を請求する」という旨の内容証明郵便を送付するのが有効です。相手に心理的な圧力を与えることができ、何かしらのアクションが期待できます。何も反応がなかったとしても、差出人や受取日、内容などを郵便局に証明してもらえるため、調停の際に意思表明をしたことの証拠となります。
審判で増額が認められた場合、内容証明郵便の受取日が「増額請求をした日」として扱われ、その日までさかのぼって増額分の養育費を請求できる可能性も高まります。
内容証明郵便を送付しても元配偶者が話し合いに応じない場合には、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員による仲介のもとで問題の解決を図ります。
それでも合意できない場合には最終的には審判という手続きで、裁判官に増額が適切かどうかの判断をしてもらいます。そこで認められれば、元配偶者は定められた金額の養育費を支払わなければいけません。
とはいえ、審判によって増額が認められるためには、「最初に養育費の金額を決めた時点では予測ができなかった何らかの事情が生じたことにより、増額をしなければいけない状況」になっていると判断される必要があります。これを「事情変更の原則」といい、次に挙げるような事情の変更があった場合が該当します。
(1)子どもが病気になった
子どもの病気によって継続的な医療費がかかるようになった場合や、子どもの発達障害などによって見守りが必要となり安定した仕事に就くのが難しく収入が減少した場合などは、増額を認められる可能性が高まります。子どものけがや病気で高額な医療費がかかる場合に、一時的に増額が認められることもあります。
(2)子どもの教育費が増加した
養育費算定表は、公立学校の学費しか考慮されていません。そのため、部活動、塾、習い事の費用、私立学校・大学の学費などが発生する場合、元夫婦としての養育・教育方針をふまえて、元配偶者に費用を分担させるのが妥当かどうかを判断されます。
「当初の養育費にそれらの教育費が加味されていたのか」「元夫は同意(黙示も含む)していたのか」「元夫の収入に見合っているのか」といったことなども考慮されます。
(3)元夫婦の一方に大幅な収入の増減があった
養育費を支払う側の収入が大きく増えた場合や、養育費を受け取る側が病気などで収入が激減した場合なども、事情を考慮した上で増額が認められる可能性が高いケースです。ただし、昇進や昇給といった予測できる範囲内での、小規模な収入の変化では増額が認められないこともあります。
以上3つの例を挙げましたが、たとえこれらの事情にあてはまっていても、必ず増額が認められるとは限りません。たとえばこれまでに算定表よりも大幅に高い金額を養育費として支払われてきた場合などは、それ以上の増額が認められないこともあります。
3. まずは弁護士に相談を
調停・審判によって養育費の増額を請求するためには、「予想外の事情の変化が生じた」と家庭裁判所に判断してもらえるよう、適切な証拠をそろえ、それに基づく論理的な主張をする準備をしなければいけません。
しかし、たったひとりで育児・家事をしながら仕事をし、さらに調停の準備まで進めることは、非常に心身への負荷がかかります。早い段階から弁護士が間に入れば、元配偶者と会わずに任意での話し合いを進めやすくなります。
また、調停・審判を利用する段階に入った場合でも、多数ある書類の収集や専門知識の必要な書類の作成なども速やかに行えるようになります。調停・審判にも代理で出席してもらえるため、証拠の提示や的確な主張・交渉により、有利な結果を獲得できる可能性が高まります。
元配偶者との交渉は、自分だけで進めようとせず、専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
- こちらに掲載されている情報は、2024年07月02日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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