
- (更新:2025年02月18日)
- 離婚・男女問題
交際相手に妊娠中絶の慰謝料は請求できる? 相場や請求方法を解説
「交際していた男性との性交渉で、望まない妊娠をしてしまった。中絶せざるを得ないけれど、相手に慰謝料は請求できるだろうか?」
中絶による女性の心身への負担は多大なものであり、また、経済的負担も少なくありません。そのため、このようなことでお悩みの方もいらっしゃると思います。
本コラムでは、妊娠中絶の慰謝料請求が可能か、また、可能な場合の相場や請求方法について解説します。
1. 中絶の慰謝料が請求できるケースと相場金額
残念ながら中絶したすべてのケースで慰謝料を請求できるわけではありません。
以下では、慰謝料が請求できるケースと請求できる場合の金額の相場について解説します。
(1)中絶の慰謝料が請求できるケース
中絶による慰謝料が請求できるのは、中絶したことについて、妊娠させた男性に民法上の「不法行為」(709条)に該当する行為があったといえる場合となります。
具体的には、以下のような要件がある場合に限られます。
-
相手に故意又は過失による違法な行為があること
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それにより自分の権利や法的利益が侵害されたこと
このような観点から検討すると、中絶のみを理由とする慰謝料の請求は基本的には困難だと考えられますが、以下のようなケースでは慰謝料を請求できる可能性が高いでしょう。
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性交渉について同意がない場合
同意がない性交渉は性的自由を侵害する違法な行為であるためです。
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妊娠について同意がない場合
たとえば相手から避妊していると嘘をつかれて性交渉し、妊娠した場合には、妊娠するかどうかの自己決定権を侵害しているといえます。
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結婚を前提としていた交際だったが相手が既婚者だった場合
相手が独身であると嘘をついて性交渉した場合には、貞操権の侵害となります。
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性行為や妊娠の合意があっても、その後の男性の対応が不誠実な場合
たとえば妊娠を告げたあと、連絡がとれなくなる、中絶を強要する、産むならひとりで産んでほしいなどと言って、妊娠後に女性に生ずる不利益を放置しようとする場合には、不法行為が成立し、慰謝料が請求できます。
(2)妊娠中絶に対する慰謝料の相場
中絶に至る事情はさまざまなので、慰謝料請求が認められる場合でも、その金額の相場には幅がありますが、おおよそ50万円から300万円程度になります。
慰謝料の金額が高くなるのは、妊娠や中絶に伴う相手の行為の違法性が高く、悪質な場合です。
たとえば、無理やり性交渉をされた強制性交罪に該当するようなケースや中絶の強要にあたり、暴力を振るう、脅迫をしてくるというようなケースでは、相手の行為の違法性が高くなり慰謝料が高額になります。
2. 中絶による慰謝料以外に何を請求できる?
中絶したときに相手に請求できるのは慰謝料だけではありません。他にどのようなものを請求できるのか、以下で解説します。
(1)中絶の手術費用
慰謝料以外に相手に請求できるものとして、中絶の手術費用をあげることができます。
手術費用は慰謝料請求ができないケースでも請求できる可能性が高いものです。
ただし、慰謝料が請求できないケースでは、妊娠したことについて一方的に相手の男性に非があるとはいえません。そのため、通常相手に請求できるのは、2分の1の金額になります。
(2)その他の費用など
手術費用以外で請求できるものとしては、以下のものが挙げられます。
- 妊娠中の診療費・交通費
- 中絶により仕事を休んだ場合の休業損害
- 中絶により後遺症が残った場合の慰謝料、治療費、逸失利益等
これらの費用が実際に請求できるかどうかは個別具体的な事情によります。
また、請求するためには、相手にかかった費用として証拠を提示する必要が生じることもあります。そのため、領収書や診断書、休業証明書などを確保しておくことが必要です。
3. 中絶の費用や慰謝料の請求方法
以下では、中絶費用や慰謝料を請求する場合の方法や、請求する場合の注意点について解説します。
(1)示談交渉
調停や訴訟などの法的手段をとらずに、相手との話し合いで、費用請求や慰謝料を請求する方法です。
ただし、相手が誠実に対応しないことも少なくないこと、相手から無理やり性交渉された場合には協議を持つこと自体が難しいことを考えると、困難を伴うことも多いといえます。
(2)民事調停
裁判所に民事調停を起こし、調停委員の仲介のもとで費用負担や慰謝料の支払いについて話し合いをします。話がまとまって調停が成立した場合には、調停調書という書面が裁判所で作成されます。
調停調書には判決と同じ効果があり、もし慰謝料などの支払いについて調停が成立したのに支払いがない場合には、これに基づいて強制執行を行い、相手方の給与や預金を差し押さえることが可能となります。
ただし、相手方が調停に応じない場合や協議がととのわない場合には、調停は不成立で終了することとなります。
(3)民事訴訟
相手に対して訴訟を提起して、中絶の費用や慰謝料を請求するという方法もあります。
訴訟の場合は、相手方が応じなくても、判決を出してもらうことが可能です。判決が出れば、相手からの支払いがない場合、これに基づいて強制執行を行い、給与や預金を差し押さえて、慰謝料などを取り立てることができます。
また、訴訟手続きの中で、相手方と和解をすることもできます。和解すれば判決と同じ効力が生じ、不払いの場合には、給与や預金などの差し押さえが可能となります。
ただし、民事訴訟はそれなりに費用もかかり、解決までの時間も長くなりやすいというデメリットもあります。
(4)消滅時効に注意
上記のいずれの方法をとるとしても、慰謝料請求権は、3年で時効により消滅しますので、注意しましょう。
4. まとめ
本コラムでは、中絶を理由とする慰謝料請求が可能か、また、可能な場合の金額相場はいくらか、などについて解説しました。
慰謝料の請求にあたっては、自分に不利益を与えた男性との交渉や、どのような方法を選択すべきかといった判断など難しい問題があります。そして、慰謝料を請求する権利は3年で消滅時効にかかります。
そのため、迅速に対応するには、男女問題にくわしい弁護士に相談・依頼することが望ましいといえるでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年02月18日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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