慰謝料を払ってでも離婚したい! 相手が同意してくれない場合の対応
離婚をしたくても配偶者に離婚を拒否されてしまう場合は、離婚調停や離婚裁判で離婚請求をするのが一般的です。
しかし、法律で認められている離婚原因(法定離婚事由)がない相手と離婚したい場合は、離婚請求をしても認められにくいため、離婚協議の場で離婚に同意してもらうことが重要になります。
ではどうすれば相手に納得してもらい離婚を成立させることができるのでしょうか。
本コラムでは、相手に慰謝料を払ってでも離婚したい場合の対応方法と注意点を解説します。
1. 慰謝料を払ってでも離婚したい場合は、相手に好条件を提示する
離婚を拒否している相手に離婚に同意してもらうためには、相手が納得する好条件を提示することが重要です。相手を納得させやすい条件の内容を5つ解説します。
(1)相場よりも高い慰謝料を払う
「不倫」や「暴力」などの離婚原因を作った配偶者のことを「有責配偶者」といいますが、「有責配偶者」は相手から慰謝料請求をされることがあります。たとえば、あなたが「不倫」をしていた場合は「不貞慰謝料(不倫慰謝料)請求」あるいは「離婚慰謝料請求」を受けることがあるのです。
「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」は以下のような違いがあります。
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不貞慰謝料
「不貞慰謝料」は配偶者の不貞行為によって精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料です。「配偶者」に加えて「不倫相手」にも請求することが可能で、離婚をしない場合も請求できます。
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離婚慰謝料
「離婚慰謝料」は離婚によって精神的苦痛を受けた場合に有責配偶者に請求する慰謝料です。仮に離婚原因が不貞行為であったとしても、離婚慰謝料を請求できる相手は原則「配偶者」のみで、「不倫相手」に請求することは困難です。
離婚をする場合に請求される可能性が高いのは「離婚慰謝料」です。離婚慰謝料の相場は50〜300万円と幅があります。
相手に離婚を拒否されている場合は、事案に応じた相場よりも高い金額の慰謝料を提示することで離婚に同意してもらえる可能性があります。
(2)財産分与で相手の割合を2分の1以上とする
「財産分与」は夫婦が婚姻関係中に築き上げた財産を離婚時に分けることで、分ける割合は原則半分ずつです。
離婚を拒否する相手に対しては、原則を上回る割合の提示をすることで離婚に同意してもらえる可能性が高くなります。財産分与の対象になる財産は住宅や車などの高額な財産も含まれるため、それを相手に譲るという提案も有効でしょう。
(3)親権を相手に渡し、相場よりも高い養育費を支払う
子どもがいる場合は親権をどちらの親が持つのかでもめるケースが多いです。相手が親権を希望している場合は、親権を相手に渡しましょう。
また養育費の金額については夫婦の話し合いで自由に決めることができますが、金額の相場として「養育費算定表」が参考になります。「養育費算定表」は、裁判所が公開している、夫婦の年収や未成熟子の年齢、人数を考慮した養育費の計算表のことです。
「養育費算定表」を参考に自分のケースにおける養育費の金額の相場を示した上で、それよりも高い金額を提示することで離婚に同意してもらえる可能性があります。
(4)解決金を支払う
前述した「慰謝料」は精神的苦痛を受けた相手に対して支払うお金です。それに対して、離婚原因がない相手に離婚を拒否されている場合などに支払うお金を「離婚解決金」といいます。
離婚解決金は慰謝料とは異なり法的な根拠がないため必ず払わなければいけないお金ではありませんが、これを支払うことで離婚を拒否する相手に納得してもらえる可能性もあるでしょう。
(5)相手の要望を聞き入れる
離婚をする際に取り決めることは、以下のように多岐にわたります。
- 財産分与
- 慰謝料
- 親権
- 養育費
- 面会交流
- 年金分割
上記事項への相手の要望をできるだけ聞き入れることで離婚に同意してもらえる可能性が高まるでしょう。
ただし、あまりにも自分に不利な条件を聞き入れてしまうと離婚後の自分の生活が苦しくなったり結果的に約束した金額を払えなくなったりするおそれがあります。自分ができる範囲で相手の要望を聞き入れるようにしましょう。
2. 慰謝料を払ってでも離婚したい場合の注意点
離婚を拒む相手と慰謝料を払ってでも離婚したい場合に留意するべきことを2点解説します。
(1)相手の合意なしに離婚することはできない
夫婦間の話し合いで離婚を決める「協議離婚」は、相手の合意なしに成立することはありません。相手の合意を得られなかった場合は「離婚調停」を行います。
「離婚調停」は、家庭裁判所で調停委員や裁判官を交えて離婚についての話し合いを行って争いを解決する制度です。第三者が入ることで冷静に話し合うことや、調停委員からアドバイスを受けたりすることができます。ただし、あくまでも話し合いによって争いを解決する制度のため、離婚をするためには相手の同意が必要です。
離婚調停が不成立の場合は「離婚裁判」を行って裁判官に離婚を認めてもらう必要があります。「離婚裁判」では、法律上離婚原因として認められる事由(法定離婚事由)があるかどうかが重要な判断基準になるため、それに当てはまらない場合は原則として離婚が認められません。法定離婚事由は以下の5つです。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
法定離婚事由に当てはまらないケースでは原則離婚が認められないため、それでも離婚したい場合は再度話し合いで相手からの同意を得られるように交渉するしかないでしょう。
(2)有責配偶者の場合は離婚裁判で離婚請求しても認められない可能性が高い
離婚協議、離婚調停が決裂して離婚裁判を提起したとします。この時に有責配偶者から離婚を請求したとしても相手がこれを拒否している場合は、原則として離婚が認められません。
「長期間の別居」や「未成熟の子どもがいないこと」、「離婚後に配偶者が困窮しないこと」といった条件を満たすことで離婚を認められるケースも中にはありますが、基本的には「有責配偶者からの離婚請求は認められない」ということを留意しておきましょう。
相手に好条件を提示しても離婚に合意してもらえない場合もあります。離婚協議や離婚調停で相手に合意してもらうためには弁護士に相談することがおすすめです。弁護士であれば代わりに相手と話し合いをして離婚に合意してもらえる可能性が高くなります。
また離婚調停や離婚裁判に発展した場合、弁護士であれば法的な主張や手続きを行うことが可能です。「離婚を拒否する相手とどうにか離婚をしたい」とお困りの際には、ぜひ弁護士に相談してみてください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年08月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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