産後の離婚で取り決めるべきこと|産後クライシスは離婚理由になる?

産後の離婚で取り決めるべきこと|産後クライシスは離婚理由になる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

産後は「産後クライシス」になりやすく、その結果夫婦仲が悪化して、離婚に至る夫婦は少なくありません。

本コラムでは、産後離婚で取り決めるべきことや、産後クライシスは離婚理由として認められるかについて解説します。

1. 産後の離婚で、産後クライシスは法定離婚事由になる?

産後クライシスは法定離婚事由(法律で定められている離婚事由)として認められるのでしょうか。

産後離婚と産後クライシスの詳しい内容と共に解説します。

(1)産後離婚とは

それまで円満だった夫婦関係が、子どもを出産した後に悪化し、結果として離婚に至ることを「産後離婚」といいます。産後離婚の原因として考えられることのひとつが産後クライシスです。

(2)産後クライシスとは

「産後クライシス」は、出産後2〜3年の間に夫婦の愛情が急激に冷めてしまうことを指します。産後クライシスが起こってしまう主な理由は以下のものが挙げられます。

①生活の変化

まず理由として挙げられるのが生活の変化です。産後は眠りたいときに眠ることもできず、子ども優先の生活になり、自分の自由な時間は少なくなります。特に乳幼児は妻が主体となって子どもの世話をする家庭が多いでしょう。

そんな中、夫が自由に休日も出かけて趣味を楽しんでいる様子や、子供の夜泣きを無視してぐっすり眠っている様子は妻にストレスを与え、夫への愛情が冷める原因になることがあるのです。

②ホルモンバランスの乱れ

女性は妊娠中や産後、ホルモンバランスに大きな変化が起きることで、情緒不安定になり、夫に対して攻撃的になってしまうことがあります。攻撃的になってしまうことで、夫婦関係が悪化することがあるでしょう。

③夫の家事・育児への非協力

夫が家事・育児に協力的でないことも、産後クライシスの原因になります。

ただでさえ、生活の変化や産後クライシスによって身体的・精神的につらい中で、家事・育児に協力をしてくれない夫に対し、妻がよりストレスを感じた結果、夫婦関係が悪化してしまうことは想像に難くないでしょう。

このような夫に対する不満や、ホルモンバランスの乱れからくる苛立ちが産後クライシスの原因になり、結果として産後離婚に至る場合があるのです。

ちなみに、産後クライシスと似た言葉に「産後うつ」があります。どちらもストレスやホルモンバランスの乱れが原因となる一方、「夫婦関係が悪化した状態」を指す産後クライシスとは異なり、産後うつは「出産後の母親がかかる病気」のことです。

(3)産後クライシスや産後うつは法定離婚事由として認められるか?

仮に離婚問題が離婚裁判に発展した場合、離婚裁判で離婚が認められるためには法律で定められた離婚原因である「法定離婚事由」に該当する必要があります。民法770条に規定されている法定離婚事由は以下のとおりです。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明
  • 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

産後クライシスや産後うつが原因で夫婦関係が破綻している場合は「悪意の遺棄」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

2. 産後離婚時に取り決めるべきこと

離婚するときには離婚条件を取り決めることが大切です。離婚時に取り決めるべき離婚条件を解説します。

(1)養育費

養育費は子どものための大切な費用です。家庭裁判所が公表している養育費算定表を参考に毎月の支払金額を決めて、支払日、支払方法、支払期間などを細かく取り決めておきましょう。

(2)財産分与

財産分与は、婚姻期間に夫婦が築き上げた財産を離婚時に分けることで、夫婦で2分の1ずつ分けるのが原則です。

現金や預貯金の他に、家具家電、自動車、家や土地などの不動産、退職金などが対象になります。

(3)婚姻費用

離婚前に別居する場合、別居開始から離婚成立までの期間は婚姻費用を請求することが可能です。婚姻費用には衣食住の費用や医療費、養育費、交通費などが含まれ、その金額は裁判所が公表している婚姻費用算定表を参考に決めていきます。

(4)親権

親権は子どもが成熟子になるまで監護・養育をする大切な権利義務です。夫婦どちらが子どもの親権を持つのか決めましょう。

(5)面会交流

面会交流は子どもと非親権者(非監護親)が定期的に交流することです。以下の内容を取り決めます。

  • 面会交流権を与えるか

  • 面会交流の頻度・時間・場所

  • 面会交流の方法(電話やメール、直接会うかなど)

(6)慰謝料

離婚をすることだけを理由に慰謝料請求することはできません。しかし、離婚原因が不倫やDVの場合や、産後クライシスになった結果、家事・育児の放棄など(悪意の遺棄)がある場合には、慰謝料請求できる可能性があります。

これらの離婚条件を取り決めたら、後のトラブル防止のためにも公正証書を作成しましょう。公正証書は公証役場で公証人に作成してもらう公文書のことです。

特に強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておけば、養育費の支払いが滞った場合などに裁判を起こさず強制執行の手続きをとって相手の財産を差し押さえることができます。

養育費の支払いについて取り決めても支払われないケースは残念ながら少なくありません。そういう場合に備えて、スムーズに金銭を回収できるように公正証書を作成しておきましょう。

3. 産後離婚の流れ

産後離婚は「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の流れで進んでいきます。

(1)協議離婚

協議離婚は夫婦の話し合いで離婚を成立させる方法で、最も多く利用されています。ここで双方が合意をすれば、産後クライシスを理由に離婚することも可能です。

話し合いが決裂した場合は次に解説する調停離婚を目指します。

(2)調停離婚

調停離婚は離婚調停で離婚を成立させる方法です。家庭裁判所に申し立て、調停委員や裁判官のアドバイスを受けながら話し合いを行います。協議離婚と同様、双方の合意があれば、産後クライシスが理由でも離婚することが可能です。

離婚調停不成立の場合は裁判離婚を目指します。

(3)裁判離婚

裁判離婚は前述した離婚裁判によって離婚を成立させる方法です。法定離婚事由に該当する離婚原因が必要で、裁判官に離婚を認める判断を下してもらわないと離婚ができません。

産後クライシスになった結果、家事・育児が放棄された場合や、夫婦関係が破綻した場合は「悪意の遺棄」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、裁判によって離婚が認められる可能性があるでしょう。

4. 産後離婚をする前に知っておきたいこと

産後離婚は、育児や環境の変化が重なり、金銭的・精神的にも負担がかかります。

そのため、いきなり離婚を切り出すのではなく、まずは別居を検討したり、悩みを外部へ相談したりすることも大切です。

また、産後離婚する場合、離婚準備をしっかりと行っておく必要があります。離婚後の生活に必要な新居や初期費用、そして親権や養育費、面会交流などの離婚条件もあらかじめ自分の意見をまとめてから話し合いに挑むことが大切です。

離婚の交渉や離婚条件の取り決めなどを弁護士に相談すれば、負担を軽減しながら、有利な条件で離婚を進められるため、ぜひ早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年10月18日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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