浮気・不倫の慰謝料の時効とは? 3年・20年の時効の意味と進行を止める方法

浮気・不倫の慰謝料の時効とは? 3年・20年の時効の意味と進行を止める方法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

浮気・不倫をされたら、配偶者や相手に慰謝料を請求したいと思うものです。しかし、慰謝料請求はいつまでもしたいときにできるというものではなく、「時効」という期間制限があります。

本コラムでは、浮気・不倫の慰謝料請求権の時効について解説します。

1. 浮気・不倫の慰謝料請求権の時効とは

(1)時効とは何か

時効とは、一定期間、ある事実状態が継続したことにより、その事実状態に基づく権利を取得させたり、あるいは消滅させたりする制度のことをいいます。権利が取得される場合は「取得時効」、権利が消滅する場合は「消滅時効」と呼ばれます。

いずれも、期間が経過しただけでは効力が発生せず、時効の利益を受ける旨の意思表示(援用)を行う必要があります。

このうち、浮気・不倫の慰謝料請求権について問題となるのは「消滅時効」です。

なお、消滅時効に似た制度に「除斥期間」というものがあります。除斥期間とは、ある権利について権利を行使しないまま一定の期間が経過すると権利が消滅するしくみです。

消滅時効との違いは、援用を必要とせず、時間の経過によって当然に権利が消滅することです。

(2)時効の効力が発生する仕組みと時効完成の止め方

(1)でも触れたとおり、時効の効力を発生させるには、時効期間の経過に加え「援用」が必要です。

たとえば、貸金債務の消滅時効であれば、債務者は支払日が経過したことを知った日から5年が経過した後に時効の援用をすることによって消滅時効が完成します(民法166条1項1号参照)。

これに対し、債権者は時効の完成を妨げることができます。「時効の完成猶予」といいます。貸金債権の場合、履行を請求して裁判を起こすことなどが挙げられます(民法147条1項1号)。

この点については後で詳しく解説します。

2. 「時効」には2種類ある

浮気・不倫の慰謝料請求権(損害賠償請求権)は、浮気・不倫が民法上の「不法行為」(民法709条)に該当する場合に発生します。

そして、不法行為に基づく損害賠償請求権には2種類の時効が定められています(民法724条)。

(1)「知った時から3年」の時効

第一に「損害および加害者を知った時から3年」という消滅時効期間が定められています(同条1号)。浮気・不倫の場合、不倫された人が、不倫の事実と不倫相手の双方を知った時から3年です。消滅時効の成否が問題となるケースのほとんどがこちらです。

(2)「不法行為から20年」の時効

もうひとつの消滅時効期間は「不法行為の時から20年」というものです(同条2号)。

同じ相手と複数回の浮気・不倫があった場合には最後の浮気・不倫の時点から期間を計算することになります。

この時効が問題となるのは、(1)の「損害および加害者を知った時」が行為時から20年経過した後だったケースです。3年の時効期間が経過していなくても、浮気・不倫の時点から20年経過していれば、慰謝料請求権が消滅します。

ただし、こちらの消滅時効の完成が援用されるのは、特殊なケースです。

なお、この20年の消滅時効はかつて「除斥期間」とされていましたが、法改正により「時効」という扱いになりました。

3. 時効期間が過ぎたあとでも慰謝料請求はできる

消滅時効期間が経過したからといって、必ずしも慰謝料請求ができなくなるというわけではありません。

浮気・不倫をした配偶者や相手方が時効の援用をしない限り、慰謝料請求をすることが可能です。相手方の良心しだいということです。

ただし、時効期間の経過は、浮気・不倫をした配偶者や相手方に、時効援用を許すリスクが高いものなので、本来は、時効を完成させないように手当をしておくことが必要です。次に解説します。

4. 浮気・不倫の慰謝料請求権の時効を止める方法(時効の完成猶予、更新)

時効の完成猶予とは、一定の事由によって時効の完成が先延ばしにされる制度です。

(1)時効の完成を猶予する事由

民法に定められている完成猶予事由は、以下のとおりです

①裁判上の請求等(民法147条1項各号)

「裁判上の請求」「支払督促」「訴え提起前の和解・調停」「破産手続参加・再生手続参加又は更生手続参加」が行われた場合、手続き終了まで時効完成が猶予されます。取り下げられた場合や却下された場合でも、6か月を経過するまで時効完成が猶予されます。

②強制執行等(民法148条1項各号)

「強制執行」「担保権の実行」「形式競売」「財産開示手続」が行われた場合、手続終了まで時効完成が猶予されます。申立の取り下げや取り消しがあっても、6か月が経過するまで、時効完成が猶予されます。

③仮差押え・仮処分(民法149条)

訴え提起の前に執行逃れを防ぐなどの目的で行われる「仮差押え」や「仮処分」があった場合、これらの事由が終了した時から6か月を経過するまで、時効完成が猶予されます。

④催告(民法150条1項)

催告とは、内容証明郵便を送るなど、裁判外で債務の履行を求める行為です。催告があった時から6か月を経過するまで、時効の完成は猶予されます。

ただし、催告を繰り返し行っても、時効完成猶予は延長されませんので、さらに時効を延ばしたい場合、催告をしてから6か月以内に訴訟を提起する必要があります。

⑤協議を行う旨の合意(民法151条1項)

権利についての協議を行う旨の合意が書面でなされたときは、

  1. 合意があった時から1年を経過した時
  2. 合意において定められた協議を行う期間(1年未満に限る)が経過した時
  3. 当事者の一方から他方に対して協議の続行を拒絶する旨の書面による通知がされた時から6か月

のいずれか早い時点まで、時効完成が猶予されます。

(2)時効完成猶予についての特別ルール

時効完成猶予については、特別ルールが設けられています。以下のとおりです。

①未成年者・成年被後見人についての特別ルール(民法158条)

時効期間満了前6か月以内に、未成年者または成年被後見人に法定代理人がいない場合、「未成年者または成年被後見人が行為能力者となった時」か「法定代理人が就職した時」のいずれかの時点から6か月間、時効完成が猶予されます。

②夫婦間の権利についての特別ルール(民法159条)

夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻解消時から6か月を経過するまで、時効完成が猶予されます。

③相続財産についての特別ルール

相続財産については、相続人が確定した時、管理人が選任された時または破産手続開始の決定があった時から6か月を経過するまで、時効完成が猶予されます。

(3)時効の更新

時効の更新とは、進行していた消滅時効期間がリセットされて、新しくゼロからスタートすることをいいます。

時効の更新が認められるのは、以下の場合です。

①裁判により確定判決を得るか、あるいは確定判決と同一の効力がある事由(支払督促、訴訟上の和解、調停が成立した場合)によって権利が確定したとき

この場合は、手続が終了した時点で時効が更新され、新たに時効期間が進行することとなります。

消滅時効の場合、元々の時効期間が10年未満のものは、上記の事由により時効が更新されると時効期間が10年となります。

そのため、浮気・不倫による慰謝料請求権が勝訴判決により確定した場合には、新たな時効期間は10年となります。

 

②権利の承認があったとき

時効完成により利益を受ける者が、時効完成前に権利を承認した場合には、時効が更新されます。

たとえば、浮気・不倫の相手方に対して慰謝料を請求した場合に、相手方が支払いの猶予を求めたり、分割払いを申し出たりした場合には、時効が更新されることとなります。

5. まとめ

浮気・不倫による慰謝料請求権には、3年の消滅時効が設けられています。3年は短く、浮気・不倫が発覚したら、あまり間をおかずに慰謝料の請求に向けて動き出す必要があります。

3年の時効期間が経過しそうなときには、内容証明を出して時効完成の猶予を図るなどの措置も必要です。

しかし、独力で浮気・不倫をした配偶者や相手方に対して対応しようとしても、うまく逃げられてしまう場合や、心理的に対峙するのが難しい場合もあります。

したがって、時効が完成しないうちに慰謝料請求するには、いち早く弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年10月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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