共同親権とは? 子の養育上のメリット、利用上のポイントなどを解説
1. 離婚後の共同親権とは
2024年5月に成立した改正民法には、従来認められていなかった離婚後の共同親権を認める改正が盛り込まれました。
離婚後の共同親権が認められるに至ったのは、国際的には離婚後の共同親権を認める国が多いことや、父母が共同で子どもを養育することの意義などが考慮されたためです。
離婚後も虐待やDVが続くことにつながるなどの懸念が示されていましたが、制度上一定の手当(後述)を行った上で、離婚後の共同親権の導入が決定されました。
なお、離婚後の共同親権に関する制度は、改正民法の施行後5年を目処として再検討が行われるものとされています(改正附則19条2項)。
(1)親権とは
「親権」とは、子どもに対する監護や教育、子どもの財産の管理などを行う権利および義務です。
具体的には、以下の権利が親権に含まれます。
- 財産の管理権(民法824条)
- 子どもの法律行為に関する同意権・取消権(民法5条)
- 監護教育権(民法821条)
- 居所指定権(民法822条)
- 職業許可権(民法823条)
- 身分行為の代理権(民法775条、787条、804条)
親権のうち、監護教育権・居所指定権・職業許可権・身分行為の代理権は「監護権」と呼ばれています。民法上、監護権とその他の親権を別の親が持つことも認められています。
(2)共同親権と単独親権の違い
「共同親権」とは父母が共同で親権を行使すること、「単独親権」とは父母の一方のみが親権を行使することをいいます。
従来の民法では、婚姻中は父母の共同親権であるものの、離婚後は父母の一方の単独親権とすることが義務付けられていました。
しかし改正民法が施行されれば、離婚後は共同親権と単独親権のいずれかを選択できるようになります。
単独親権の場合、子どもに対する監護・教育や財産の管理などに関する事項は、すべて親権者が単独で決めることができます。
これに対して共同親権の場合は、原則として父母が話し合ってこれらの事項を決めなければなりません。ただし、監護・教育に関する日常の行為については、いずれかの親権者が単独で親権を行使できるものとされています(改正民法824条の2)。
離婚後の共同親権は選択的|単独親権も選べる
離婚後の共同親権は必須ではなく、単独親権も選択することができます。
共同親権と単独親権のどちらを選択するかは、原則として父母の協議により決定します(改正民法819条1項)。協議が調(ととの)わないときは、離婚訴訟などを通じて裁判所が親権者を決定します(同条2項)。
2. 離婚後の共同親権導入のメリット
離婚後の共同親権には、単独親権と比べて以下のようなメリットが期待されています。
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養育費の不払い防止
子どもと同居しない親にも、子どもの養育について責任と権限を持たせることにより、養育費の不払いが少なくなる可能性が考えられます。
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面会交流の機会の確保
双方の親が親権者として子どもと関わることにより、親子間の面会交流の機会が増え、子どもの情操教育にとってプラスに働く可能性が考えられます。
子どもと同居する親が再婚した後でも、もう一方の親が親権を有していれば、子どもと会うためのハードルが幾分下がる可能性が考えられます。
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離婚時の親権争いの回避・緩和
共同親権という妥協点を選択できるようになることで、離婚時の親権争いを回避または緩和できる可能性が考えられます。
3. 離婚後の共同親権に関する懸念点|虐待やDVにどう対処するか?
離婚後の共同親権について懸念される点として、虐待やDVをしていた親との関係を切ることができず、離婚後も虐待やDVが継続するおそれが挙げられます。
この点、家庭裁判所は、以下のいずれかに該当するときは、共同親権を認めず単独親権を決定しなければならないものとされています(改正民法819条7項)。
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父または母が、子どもの心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき
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以下の事情を考慮して、父母が共同して親権を行使することが困難であると認められるとき
1. 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力等を受けるおそれの有無
2. 父母間の協議が調わない理由
3. 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力等を受けるおそれの有無
4. その他の事情 -
①②のほか、父母の双方を親権者と定めることにより、子どもの利益を害すると認められるとき
また、離婚後に虐待やDVなどが行われるようになった場合には、家庭裁判所に対して単独親権への変更を申し立てることも認められています(同条8項)。
4. 離婚後の共同親権を選択する場合の注意点
離婚後の共同親権を選択する際には、以下の各点に留意しつつ検討を行うべきです。
(1)共同親権を選ぶかどうかは、子の利益の観点から決める
離婚後の子どもの親権者を誰にするかを決める際には、子の利益を最も優先して考慮しなければなりません(民法766条1項)。
共同親権を選択するかどうかも、親のエゴで決めるのではなく、あくまでも子どもにとって最善かどうかという観点から判断しましょう。
(2)養育費の分担を明確化する
共同親権であっても、離婚後は一方の親が子どもと同居し、もう一方の親は子どもと別居するのが一般的です。
この場合、別居親は同居親に対して、子どもの養育費を支払う義務を負います(民法877条1項)。
離婚後の経済的な不安を解消するため、離婚協議などを通じて養育費の分担を取り決めましょう。公正証書で養育費の支払い義務を定めておけば、不払いとなった場合には直ちに強制執行を申し立てることができます。
(3)コミュニケーションの取り方や、トラブルの解決方法を決めておく
共同親権の場合、離婚後も親同士が子どもの養育費について話し合うべき機会が多くなります。父母の間で、離婚後のコミュニケーションの方法を決めておくとよいでしょう。
なお、共同親権者の間で意見が食い違っている事柄については、家庭裁判所に対して、当該事項について単独での親権行使を認める審判を申し立てることができます(改正民法824条の23項)。
家庭裁判所の審判を利用すべきケースなどについても、あらかじめ話し合っておくことが望ましいでしょう。
5. 離婚時の親権問題に悩んでいる方は弁護士に相談を
離婚に伴う親権争いが生じた場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、親権者をどのように決めるべきかについてアドバイスを受けられるとともに、相手方との協議や裁判手続きにも代理で対応してもらえます。
共同親権制度に関する疑問点についても、弁護士と話をすれば解消することができるでしょう。
また弁護士には、親権以外の離婚に関する問題(財産分与・慰謝料・婚姻費用・養育費・面会交流など)についても相談できます。離婚問題を円滑に適切な形で解消したい方は、お早めに弁護士へご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月14日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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