離婚時にペットはどちらが引き取る？ 権利の決め方の基準とは
弁護士JP編集部
離婚時には飼っていたペットをどうするのか問題になることがあります。
どちらもペットを引き取ることを望んだ場合、どうやって決めればいいのでしょうか？ また、引き取れなかった場合、もう会うことはできないのでしょうか？
本コラムでは、離婚時のペットの所有権について解説します。
1. 離婚時にペットを引き取る権利はどうやって決まる？
離婚時に飼育していたペットをどちらが引き取るかを決めるにあたって、まずはその前提となるペットの法的な扱いについてみていきましょう。
（1）法律上ペットは「物」として扱われる
どんなにペットを家族のように思っていても、法律上ペットは「物」として扱われます。
そのため、子どもをどちらが引き取るのかという「親権争い」とペットをどちらが引き取るのかという争いは全くの別問題として扱われるのです。
（2）ペットは財産分与の対象になる
離婚時、ペットは財産分与の対象になります。「財産分与」は婚姻期間に夫婦で築き上げた財産を離婚時に分けることです。なお、財産分与は離婚から2年以内に請求する必要があることを留意しておきましょう。
法律上ペットは「物」として扱われることから財産分与の対象になりますが、どちらが所有権を取得するのかが問題になります。
所有権をどちらが獲得するのかは、「独身時代から飼っていたペット」なのか「結婚後に飼い始めたペット」なのかによって異なるため、2つのケースごとに所有権がどうなるのかみていきましょう。
①独身時代から飼っていたペット
財産分与とは「婚姻期間中」に夫婦が築き上げた財産を分けることです。そのため、独身時代から飼っていたペットは財産分与の対象にはなりません。所有権は独身時代からそのペットを飼っていた飼い主にあるのです。
つまり、たとえば妻が独身時代から飼っていたペットを結婚後大切にしていた夫が、離婚時に引き取りたいと申し出た場合、引き取ることができるのは所有権がある妻ということになります。
ただし、話し合いによって夫が引き取ることに合意すれば、夫が引き取ることも可能です。
②結婚後に飼い始めたペット
結婚後に飼い始めたペットは財産分与の対象になります。問題は所有権がどちらにあるのかということです。
この点に関しては、いくつかの判断基準をもとに所有権をどちらが持つのか話し合いで決めていくことになります。次章で詳しく解説します。
2. 離婚時にペットを引き取る権利を得られる基準とは
離婚時にペットの所有権を争う場合に、どういった基準で引き取る権利を決めるべきなのでしょうか？4つの判断基準を紹介します。
（1）どちらの方が懐いているか
ペットが懐いている方が飼い主になった方がペットの幸せに繋がると考えられることから、ペットの所有権争いでは懐いている方が有利になる可能性が高いでしょう。
（2）どちらが世話をたくさんしたか
どちらが世話をたくさんしたのかも重要な判断基準のひとつです。
離婚するまでの飼育実績は、離婚後に引き取った場合も飼育を怠らないであろうという一種の目安になります。そのため、あまり世話をしていなかった場合や虐待をしていた場合、ペットを引き取ることは難しいでしょう。
（3）どちらが経済的に余裕があるのか
ペットを飼育していくためには費用がかかります。たとえば犬の場合、餌代、予防接種代、病院代、トリミング代などです。
ペットを引き取る側は、子どもを引き取る「親権者」と違って、ペットを引き取れなかった側から原則として養育費を受け取ることができません。
そのため、ペットに必要な費用を十分に用意できる経済的余裕があるのかというのも、引き取り手を決める際の大切な判断基準になるのです。
（4）離婚後の飼育状況はどちらが整っているか
婚姻中は一軒家に暮らしていても離婚後に引っ越す場合、飼育状況が整っている方が有利になります。
たとえば、引越し先がペット不可の物件の場合や引越し先の実家にペットアレルギーを持つ家族がいる場合は、ペットを飼育する環境としては不十分です。
より飼育環境が整っている方が引き取れる可能性が高くなります。
3. 離婚時にペットを引き取る「所有権」を決める方法
離婚時にペットを引き取る「所有権」を決める手続きの流れをみていきましょう。
（1）当事者同士でよく話し合う
まずは当事者同士で協議をし、どちらが引き取るのか決めていきます。ここで合意に至ればその内容を書面にしましょう。
その際は、他の離婚条件と共に「公正証書」にすることをおすすめします。「公正証書」は公証役場で公証人に作成してもらう公文書です。
「離婚協議書」などの私文書に比べて証拠能力が高く、偽造や紛失のおそれがないという特徴があるため、離婚後のトラブル防止にもなります。
離婚協議で所有権について決められなかった場合は「離婚調停」を家庭裁判所に申し立てましょう。
（2）離婚調停で争う
話し合いで解決できなかった場合「離婚調停」を行います。「離婚調停」は裁判官や調停委員の仲介のもと当事者同士で話し合って争いを解決する方法です。
ここで合意に至れば「調停調書」を作成してもらいますが、調停不成立の場合は「離婚訴訟」を行う必要があります。
（3）離婚訴訟で争う
調停が決裂した場合に提起するのが「離婚訴訟」です。離婚訴訟では、当事者の主張や提出された資料をもとに裁判官によって判断を下されます。そのため、ペットの所有者をどちらにするのか裁判官によって決めてもらうことができるのです。
その際には自分が所有者に相応しいと認めてもらえるように、前述した「離婚時にペットを引き取る権利を得られる 4つの判断基準」を満たす証拠を提出しましょう。
4. ペットを引き取れなかったらもう会えない？
子どもの場合、子どもを引き取れなかった親には面会交流権が与えられ、定期的に会うことができますが、ペットには基本的に面会交流権はありません。
また、子どもの場合、親権者が暴力やネグレクトといった親権者に相応しくないことをしている場合、親権者変更の訴えを起こすことができますが、ペットの場合は、引き取った側が離婚後に虐待をしていても、引き渡し要求をするための法的な決まりがないため、引き渡しを要求することもできません。
ただし、話し合い次第では「面会交流権」や「引き渡し」についても取り決めることもできるため、それを望む場合は、面会交流の頻度や引き渡しの条件（虐待をした場合や飼育環境が悪くなった場合には所有権を譲るなど）についての話し合いを行いましょう。
そして取り決めた内容は後のトラブル防止のためにも必ず書面化しておくことをおすすめします。
ペットの所有権に関する争いでお困りの方は、一度、離婚問題に詳しい弁護士にご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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