離婚裁判で負けるとどうなる? もう離婚できない?

離婚裁判で負けるとどうなる? もう離婚できない?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

離婚についての争いが、夫婦の話し合いでは解決せず、最終的に離婚裁判にまで発展することがあります。

「離婚したい」という主張が認められず、裁判で負けてしまった場合、もう離婚することはできないのでしょうか?

本コラムでは、離婚裁判や離婚裁判に負けた場合の対処法、そして離婚裁判で負けないためにできることを解説します。

1. 離婚裁判とは

離婚についてもめている場合、まずは夫婦間で離婚協議を行い、協議がまとまらなければ「離婚調停」を行います。離婚調停は、調停委員や裁判官の仲介の元、話し合いで紛争を解決する制度です。合意に至れば「調停離婚」が成立しますが、これも決裂した場合に行うのが「離婚裁判(離婚訴訟)」です。

つまり、「離婚裁判」は、離婚についての争いを解決するための最終手段ということになります。離婚裁判を家庭裁判所に申し立てると、当事者の主張や提出された証拠を元に、裁判官によって紛争内容に対する判断が下されるのですが、争われる主な内容は以下のとおりです。

  • 離婚の認否
  • 親権
  • 養育費
  • 面会交流権
  • 財産分与
  • 年金分割
  • 慰謝料

など

なお、離婚協議がうまくいかなかったからといって、離婚調停を行わず、いきなり離婚裁判を行うことはできません。「調停前置主義」といって、離婚裁判をするには原則、その前に離婚調停の手続きを行わなければならないという法律上のルールがあるからです。そのため、離婚裁判を行うためには先に離婚調停を行う必要があります。

さらに、離婚裁判で離婚が認められて「裁判離婚」を成立させるためには、法律上の離婚理由である「法定離婚事由」が必要です。法定離婚事由は以下の5つあります。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明
  • 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

また、厚生労働省が令和4年8月24日付けで発表した「令和4年度『離婚に関する統計』の概況/人口動態統計特殊報告」によると、令和2年に成立した離婚のうち、「協議離婚」が88%以上を占めており、離婚裁判まで発展するのは少数といえるでしょう。

しかし、それでも毎年離婚についての争いが離婚裁判にまで発展しているケースが少なからずあることも、また事実なのです。

出典:厚生労働省「令和4年度「離婚に関する統計」の概況 人口動態統計特殊報告

そして、離婚裁判の判決が確定した場合、同じ離婚理由で再度裁判を起こすことは認められていません。

2. 離婚裁判で負けても離婚したいときの方法は?

離婚裁判まで起こし、離婚を求めたにもかかわらず、裁判官から離婚を認められなかった場合、もう離婚することはできないのでしょうか? その場合の対処法を3つ紹介します。

(1)判決内容に不服がある場合には控訴をする

離婚裁判で判決が出ても、その内容に不服があれば「控訴」をすることができます。控訴ができる期間は、判決の送達を受けた日の翌日から「2週間以内」と限られているため、控訴期間内に高等裁判所へ控訴の手続きを行いましょう。

また、高等裁判所の控訴審判決に不服がある場合は、最高裁判所に上告することができます。ただし、上告するためには「原判決が違憲」または「明らかに法令に違反している」等の理由が必要です。これら以外の理由を上告理由にすることは原則できないことに留意しましょう。

(2)事情変更を理由に再度裁判を起こす

前述のとおり、離婚裁判の判決が確定した場合、同じ離婚理由で再度裁判を起こすことはできません。しかし、判決後に事情の変更があれば、それを理由に再度裁判を起こすことはできる可能性があります。

たとえば、判決確定後に5年以上の別居の実績ができたケースです。この場合、再度離婚裁判を提起できる可能性があるでしょう。

(3)再度話し合いでの離婚を目指す

離婚裁判で負けてしまっても、夫婦で再度協議をすることはできます。

たとえば、財産分与を相手に有利な条件にする、解決金の支払いを提示するなど、相手に有利な離婚条件を提案することで、相手が離婚に合意してくれる可能性もあるでしょう。

3. 離婚裁判で負けないようにするには

離婚裁判で負けてしまっても前述のような対処をすることはできますが、できることなら離婚裁判で負けること自体を回避したいものです。

そこで、離婚裁判で負けてしまう理由と、負けないために必要な準備について説明します。

(1)離婚裁判で負けてしまう理由

離婚裁判で負けてしまう主な理由をみていきましょう。

①弁護士に依頼していない

裁判というと弁護士に依頼するイメージが強いですが、必ずしも弁護士が必要というわけではありません。弁護士費用を考えて、弁護士に依頼せずご自身で裁判の対応をされるという方もいらっしゃいます。

しかし、離婚裁判を弁護士に依頼しないと、適切な主張を行えない、十分な証拠を提出できないといったことから、裁判で不利になり、負けてしまう可能性が高くなってしまうでしょう。

②法定離婚事由に該当しない

離婚裁判で離婚が認められるためには、法定離婚事由に該当する離婚原因が必要です。

そのため、5つの法定離婚事由に該当する離婚原因がない、と裁判所で判断されれば、離婚を認めてもらうことはできません。

たとえば、相手に不貞行為やDVといった有責行為がなく、性格の不一致のみを理由にして離婚したいというケースでは、法定離婚事由がないと判断されて離婚が認められない可能性が高いでしょう。

③離婚は適切ではないと裁判所が判断した

法定離婚事由に該当するケースであっても、「離婚は適切ではない」と裁判所が判断し、離婚が認められない場合もあります。

たとえば、法定離婚事由のひとつである「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない」という場合に該当していても、離婚後に配偶者の面倒を見られる人がいないようなケースでは、離婚は不適切と判断され、裁判で負けてしまうこともあるのです。

④自分が離婚原因を作った有責配偶者である

法定離婚事由に該当する離婚原因を作った配偶者を「有責配偶者」といいます。

有責配偶者からの離婚請求は、原則、認められていません。離婚原因になる言動で相手を傷つけた有責配偶者が、相手が望まない離婚を求めることは、信義誠実の原則に反すると考えられているからです。

⑤十分な証拠がない

離婚裁判では、裁判官が当事者の主張や証拠をもとに判断を下します。そのため、たとえば配偶者の不貞行為を理由に離婚を請求する場合は、裁判官に配偶者が不貞行為をしたことを立証できる証拠を提出する必要があるのです。

十分な証拠が提出できなければ、「法定離婚事由」があることを証明できず、裁判官から離婚を認められない可能性が高いでしょう。

(2)離婚裁判で負けないために必要な準備とは?

離婚裁判で負けてしまう理由がわかったところで、負けないために必要な準備についてみていきます。

①弁護士に依頼し、綿密に連携する

弁護士に依頼をすると、自身の離婚したい理由が法定離婚事由に該当しているのかどうかを判断してもらい、それをどう主張・立証すればいいのかアドバイスやサポートを受けることが可能です。

また、離婚条件の希望を明確にしておくためにも、適正な養育費の決め方など、弁護士の法的な知識から、自分に不利な条件にならないためのアドバイスを受けることもできます。

弁護士と綿密に連携し、そのサポートを受けることは離婚裁判で勝つためにも重要といえるでしょう。

②有利に離婚を進めるための証拠を集める

有利に離婚を進めるためには、自分の主張が正しいことを証明する証拠集めが重要です。有責配偶者に対して慰謝料請求をするためにも、証拠が必要になります。

裁判で有用な証拠を集めるためにも、弁護士からのアドバイスを受けることをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年11月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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