別居は何年したら離婚できる? 認められる条件と期間を弁護士が解説

別居は何年したら離婚できる? 認められる条件と期間を弁護士が解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

配偶者になかなか離婚に同意してもらえず、別居をして離婚を進めていきたいと考える方は少なくありません。では実際、どのくらいの期間別居をしたら離婚できるのでしょうか?

本コラムでは、別居による離婚が認められる条件や期間について解説します。

1. 別居に必要な年数は何年?

別居から離婚までにはどのくらいの年数が必要なのでしょうか? そもそも別居をすれば離婚できるものなのでしょうか?

別居と離婚の関係性や、別居から離婚までにかかる期間についてみていきましょう。

(1)別居していれば離婚はすぐできるのか

そもそも、離婚は配偶者の同意を得れば、成立させることができます(協議離婚)。離婚協議が決裂した場合は「離婚調停」を行い、家庭裁判所において調停委員や裁判官の仲介のもとで離婚について話し合い、さらに合意に至らなければ「離婚裁判」を提起して裁判官に離婚を認めるか否かの判断を下してもらうのが離婚までの流れです。

裁判で離婚を認めてもらうためには、法律(民法770条1項)で定められた離婚原因である「法定離婚事由」が必要になります。

法定離婚事由は以下の5つです。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明
  • 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

別居が長期間に及ぶ場合、この中の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があります。

また、同居はしていても「会話がない」「家計を分けている」などのいわゆる「家庭内別居」が長期間続いている場合も、夫婦関係が破綻していると判断され、離婚が認められる可能性があるでしょう。ただし、別居と比べると、家庭内別居は夫婦関係が破綻しているかどうかの証明、判断が難しい傾向にあります。

(2)世間では別居してから離婚まで何年かかっている?

厚生労働省の公表している「人口動態統計特殊報告」(以下同データ)によると、令和2年の離婚総数の中で、別居から離婚までの期間は「1年未満」の割合が82.8%で、多くの夫婦が別居から「1年未満」で離婚が成立していることがわかりました。

(3)離婚の仕方によっても離婚までの期間は変わる

多くの夫婦が別居から1年も経たずに離婚していますが、離婚の仕方次第で、離婚までの期間は変わります。「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つに分けて、平均的な別居期間についてみていきましょう。

①協議離婚

同データによると、令和2年、協議離婚の中で86.2%の人が「1年未満」の別居期間で離婚しています。

協議離婚は裁判所での手続きを経ずに当事者の話し合いで成立させることができるため、1年未満という別居期間で離婚が成立するケースが多いのです。

なお、同データによると、「離婚の種類別にみた離婚全体に占める割合」は協議離婚が85%以上に及ぶため、別居期間が1年未満の人の多くは「協議離婚」であることがわかります。

②調停離婚

「調停離婚」は、離婚調停で双方が離婚に合意することで成立する離婚方法です。調停離婚の平均的な別居期間がわかる明確なデータはありません。

しかし、調停離婚は申し立てから調停成立まで通常6か月からそれ以上かかることが多く、別居期間が1年以上となるケースが多いでしょう。

③裁判離婚

「裁判離婚」は、調停を経た上でそれが不成立となり、離婚裁判で裁判官に離婚が認められることで離婚が成立する方法です。

同データによると、別居から裁判離婚が成立するまでの平均的期間は「1年未満」が56.8%となっており、協議離婚の場合よりも、1年未満の別居期間で離婚が成立している割合が減っていることがわかります。

別居を理由に裁判官から離婚を認めてもらうためには、通常3年から4年以上の別居期間が必要です。また、別居の原因によっては、それ以上別居をしても離婚が認められないケースもあります。

2. 離婚までの期間が長期になるケース

離婚理由によっては別居期間が長期になってしまうケースと、短期で済むケースがあります。3つのケースをみていきましょう。

(1)離婚理由が性格の不一致のみ

性格の不一致のみを理由に離婚したい場合は、裁判官から「夫婦関係が破綻している」と判断してもらうために、比較的長期間の別居が必要になります。

(2)自身が有責配偶者で離婚をしたい

法定離婚事由に該当する行為(例えば不貞など)をした配偶者を「有責配偶者」といいますが、有責配偶者からの離婚は、原則裁判では認められず、認められる場合も別居が10年以上の長期にわたる場合となる傾向にあります。

離婚原因になる言動で相手を傷つけ、そのうえさらに相手が望まない離婚を求めることは、「信義誠実の原則」に反すると考えられているからです。

そのため、この場合は別居しても離婚が認められない可能性が高く、ケース・バイ・ケースではありますが離婚が成立するまで10〜20年はかかるでしょう。

(3)相手に離婚の原因がある

相手が不貞行為やDVをしていた場合は、裁判において離婚請求が認められやすく、別居は短期で済む場合があります。

3. 別居中の不貞行為は慰謝料請求ができる

別居中の不貞行為で慰謝料を請求するための法的基準と、請求の流れをみていきましょう。

(1)別居中の不貞行為で慰謝料が請求できる法的基準

別居中の不貞行為で慰謝料が請求できるのは、不貞行為が「婚姻関係(夫婦関係)が破綻していたとされる前」に行われた場合に限られます。

そもそも、不貞行為が慰謝料請求の対象になるのは、「貞操義務違反により夫婦が平穏な生活を送る権利を侵害されるから」です。婚姻関係が破綻している状態は「すでに法律上保護されるべき夫婦の利益が失われている状態」であるため、その状態で行われた不貞行為は慰謝料請求の対象になりません。

つまり、別居はしているものの、婚姻関係が破綻していない状況で行われた不貞行為に対してのみ、慰謝料請求ができるのです。

以下の場合は、婚姻関係が破綻していたと判断される可能性があるため注意しましょう。

  • 離婚前提の別居
  • 離婚協議や離婚調停、離婚裁判中の別居
  • 事実上、長期間別居している

(2)不貞行為による慰謝料請求の流れ

別居中の不貞行為による慰謝料請求の流れをご紹介します。

①証拠を集める

夫婦関係破綻前から不貞行為があったことを証明できなければ、裁判で不貞行為が夫婦関係破綻後に始まったと判断されてしまう可能性や、相手に言い逃れされてしまうおそれがあるため、証拠を押さえておくことが重要です。

不貞行為に対する慰謝料請求を行う場合、以下のような証拠を集めておきましょう。

  • 性交渉の写真、動画
  • 不貞行為を認める会話の録音、念書
  • 配偶者と相手とのSNS上のやりとり
  • 興信所や探偵事務所からの報告書

など

なお、別居後の不貞行為の場合は、自分で証拠を集めることは難しい場合が多いため、弁護士や探偵事務所に依頼をすることをおすすめします。

②配偶者と話し合う

証拠を集めたら、配偶者と話し合いましょう。

話し合いで慰謝料の支払いに合意した場合、金額や支払い方法などの取り決め内容を「公正証書」にします。公正証書は、公証役場で公証人によって作成される公文書です。

証拠能力が高く、また「債務者は慰謝料の支払いが滞った場合は強制執行を受けることに同意した」などの「強制執行認諾文言」を入れておけば、裁判を経ずに給料や預金を差し押さえして慰謝料を回収できます。

円滑な債権回収のためにも、ぜひ強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておきましょう。

なお、配偶者との話し合いが難しい場合には、「内容証明郵便を送る」という方法があります。内容証明郵便は、発送日や発送場所、文書の内容などを郵便局が証明してくれる制度のことです。

内容証明郵便を送って「慰謝料を請求する」という旨を伝えることで、相手に本気度が伝わり、相手が支払いに応じてくれる場合もあります。

③調停を行う

話し合いが決裂した場合、家庭裁判所に「調停」の申し立てを行う方法があります。

慰謝料請求のみを行う場合は「慰謝料請求調停」を申し立てますが、離婚もしたい場合は「離婚調停」を申し立てて、その中で慰謝料について話し合うことができます。

調停は、調停委員や裁判官からアドバイスを受けながら、当事者同士の話し合いで争いを解決していく制度です。調停で話し合いがまとまれば、調停が成立しますが、決裂した場合は裁判を提起する必要があります。

④裁判を行う

慰謝料にくわえ、離婚も請求している場合は「調停前置主義」といって離婚調停を先に行わなければなりませんが、慰謝料のみを請求する場合は調停を行わずに直ぐに裁判を提起することが可能です。

裁判を提起すると、当事者の主張や証拠を元に裁判官から慰謝料についての判断が下されます。

別居中の不貞行為に対する慰謝料請求ができるか否かのポイントは、「不貞行為が、婚姻関係(夫婦関係)が破綻する前に行われたかどうか」、そして証拠を集められるかどうかです。

弁護士に依頼すると、証拠収集のアドバイスや相手との交渉、調停や裁判に発展した場合の手続きや対応も任せることができます。別居中の不貞行為の慰謝料請求をしたい方は、早めの段階で弁護士へご相談ください。

4. 離婚を考えている場合の別居の注意点

離婚時に不利にならないように、別居をする際の注意点をみていきましょう。

(1)無断で出て行かない

夫婦には民法上「同居義務」があり、正当な理由なく別居することや、配偶者に無断で別居をすることは同居義務違反にあたります。

「相手のDVから逃れるため」といった正当な理由なく、何も告げずに無断で家を出る行為は「悪意の遺棄」に該当すると裁判で判断され、自分が有責配偶者になってしまう可能性があるため、配偶者に理由を説明した上で別居するようにしましょう。置手紙をして意思を伝えることもよいです。

子どもの意思に反して無断で連れ出した場合、配偶者から「子どもを違法に連れ去られた」と言われてしまい、後に不利になるおそれがあるため注意が必要です。

(2)別居中にも婚姻費用が発生する

夫婦は、互いに離婚が成立するまでは、別居中も婚姻費用(衣食住の費用や医療費などの生活費、養育費など)を分担する義務があります。そのため、収入の多い配偶者は、相手の婚姻費用を負担しなければなりません。子どもがいる場合は、子どもと別居している側が養育費を支払う義務があります。

(3)異性との交際は慎重に

別居中、「もう夫婦関係は破綻しているから」という自分の判断で異性と交際した結果、「夫婦関係が破綻する前に不貞行為をした」として裁判で有責配偶者と判断され、慰謝料を請求されてしまう可能性もあります(なお、不貞は同性間でも認められることがあります)。

それを防ぐためにも、まずは弁護士に相談し、自分が不利にならないようにアドバイスを受けてから交際するなど、慎重に行動しましょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年12月03日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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