- (更新:2024年11月25日)
- 離婚・男女問題
不倫関係の女性が妊娠。相手が出産を望む場合にどう対応すべきか?
不倫相手の女性が妊娠した場合、ご自身の配偶者(妻)・不倫相手・不倫相手の配偶者の多方面に対して、誠実な対応が求められます。
今回は、不倫相手の女性が妊娠した場合における、男性側の対処法や発生する費用について、中絶の場合と出産の場合の両方を含めて解説します。
1. 不倫相手の妊娠が発覚した場合にすべきこと
不倫相手の妊娠が発覚した場合、短期間の間に数多くの対応を行う必要があります。
具体的に対応が必要となるおもな事項は、以下のとおりです。
妊娠の事実確認を行う
中絶か出産かを早めに判断する
出産する場合は、養育について話し合う
必要に応じて配偶者(妻)に報告する
出産する場合は、養育について話し合う
離婚するかしないかを決める
上記のすべてに共通して言えることは、不倫相手との話し合いを先延ばしにしてはならないということです。
中絶・出産の判断が遅れれば、仮に中絶となった際の母体への負担も大きくなります。また、対応の遅れによって、ご自身の配偶者や不倫相手に不誠実な印象を与えてしまうと、ただでさえ大変なトラブルがいっそう複雑化してしまうでしょう。
不倫相手の妊娠から目を背けたいという気持ちがあったとしても、ご自身を奮い立たせて、迅速・誠実に対応することが肝心です。
それでは、前述した対応すべきおもな事項の内容についてくわしく解説します。
(1)妊娠の事実確認を行う
不倫相手から妊娠の報告を受けた場合、まずは冷静に妊娠の事実確認を行うことが大切です。妊娠の確認方法として、病院での診断書やエコー写真を提示してもらうなどの方法が考えられます。妊娠したということが不倫相手の嘘である可能性も完全には否定できないため、病院に同行し、医師の診断結果を確認するのも良いかもしれません。
また、不倫相手に配偶者がいる場合は、その不倫相手の配偶者が妊娠の事実を把握しているかを確認することも必要です。
妊娠が事実であるかを確認することで、今後の話し合いや対応に備えた冷静な準備が可能になります。事実確認は感情的にならず、誠実に行うことが求められます。
(2)中絶か出産かを早めに判断する
母体保護法に基づく人工妊娠中絶は、「胎児が母体外において生命を保続することができない時期」(母体保護法第2条第2項)、現在では妊娠22週未満の段階でしか認められません。
また、妊娠が進むほど中絶手術は母体への負担が大きくなるため、迅速な判断が求められます。感情的にならず、双方が冷静に話し合うことで、適切な選択を導くことができるでしょう。
(3)出産する場合は、養育について話し合う
もし不倫相手が出産を希望する場合、無理やり中絶させることはできませんので、生まれてくる子どもの養育について話し合うことが必要があります。
養育費の分担はどうするのか、どこで誰が子どもの世話をするのか、子どもと同居しない親がどのように子どもと面会するのか、子どもを認知するかどうかなど、さまざまな事項を決めておかなければなりません。
また、その決定が配偶者(妻)に与える影響や、家庭内の調整についても考えたうえで進めることが大切です。
(4)必要に応じて配偶者(妻)に報告する
特に不倫相手が子どもを出産することになった場合、養育費の支払い義務などが発生するため、ご自身の配偶者(妻)に対する説明も早晩必要になるでしょう。
不倫を秘密にしておきたいと考える気持ちも分かりますが、時間がたってから発覚した場合のインパクトを考えると、できる限り早めに配偶者に報告することも大事です。報告した場合には、配偶者がご自身や不倫相手に対して慰謝料請求を行うことや離婚に向けた話し合いや調停、訴訟となることも考えられますので、予め想定しておきましょう。
(5)離婚するかしないかを決める
①配偶者(妻)と離婚する場合
不倫相手の妊娠が発覚した際、配偶者(妻)との信頼関係が大きく損なわれ、離婚を選ぶ場合があります。この場合、離婚にともない慰謝料や財産分与が発生することが一般的です。また、不倫に対する慰謝料は、不倫相手にも請求される可能性があるため注意が必要です。子どもがいる場合には、養育費や親権についても取り決めが求められます。法律的な問題を円滑に進めるため、弁護士への相談が推奨されます。
②配偶者(妻)と離婚して不倫相手と再婚する場合
離婚後、不倫相手との再婚を考える場合には、妊娠した子どもとともに新たな家庭を築くことを目指すことになります。不倫の経緯から、元配偶者から慰謝料を請求される可能性があるため、経済的負担を十分に考慮することが大切です。
③配偶者(妻)とは離婚せずに不倫相手と別れる場合
配偶者(妻)との婚姻関係を維持し、不倫相手との関係を終える選択もあります。この場合、配偶者と話し合い、誠実に謝罪することで信頼の回復を目指す必要があります。不倫相手の妊娠に伴う費用や責任については、認知や養育費の支払いを含めて合意が求められることがあります。また、配偶者が慰謝料を求めた場合、その請求に対応する覚悟も必要です。
2. 不倫による妊娠・出産で発生する費用
不倫相手の女性が妊娠した場合、後にさまざまな出費が発生することになります。各方面に対応を行うため、資金調達のめどをつけるように努めましょう。
具体的に発生する費用は、以下のとおりです。
(1)配偶者(妻)に対する慰謝料
ご自身の配偶者(妻)に対しては、不倫慰謝料を支払う必要があります。
民法第709条(不法行為)
他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
出典:民法 |e-Gov 法令検索民法第710条(慰謝料の賠償)
他人の身体、自由、または名誉を侵害した場合には、財産以外の損害についてもその賠償を請求することができる。
不倫慰謝料の相場は50万円~300万円程度です。
不倫慰謝料として相当な金額を支払ったら、支払った額について責任割合に応じて不倫相手と分担することができます。配偶者(妻)と離婚をする場合、離婚しない場合と比べて高額になります。また、不倫相手が妊娠や出産をした場合には慰謝料の増額要素となると考えられています。また感情的になりやすい状況と言えますので、特に不倫相手の妊娠や出産という事情がある場合には、慰謝料についての交渉は弁護士にご相談・ご依頼されるのがよいでしょう。
(2)不倫相手が既婚者の場合、不倫相手の配偶者に対する慰謝料
不倫相手にも配偶者がいる場合(いわゆる「ダブル不倫」)、不倫相手の配偶者に対しても慰謝料を支払わなければなりません。
ご自身の配偶者(妻)に対する場合と同様に、慰謝料の相場は50万円~300万円程度で、こちらも不倫相手の配偶者に対して慰謝料を支払ったら、不倫相手との間で責任割合に応じて分担することができます。
慰謝料金額を算定する際には、以下のような事情が考慮されます。
- 婚姻期間や不倫の期間
- 不倫相手が妊娠・出産した場合(増額要因となることが多い)
- 配偶者への影響(精神的損害の程度)
不倫相手の配偶者から厳しく慰謝料を請求された場合には、早めに弁護士に相談しましょう。
(3)中絶または出産の費用
不倫相手が妊娠している子どもを中絶・出産する際、いずれにしてもまとまった金額が必要になります。
中絶の場合の費用は、初期妊娠(4週~11週)の段階では10万円前後ですが、中期妊娠(12週以降)は40万円前後からと高額になります。
出産の場合の費用は、正常分娩であれば40万円~50万円程度が平均的です。ただし、健康保険から出産育児一時金等が給付される場合があります。
中絶または出産の費用については、不倫相手との間で負担割合などを話し合っておきましょう。
(4)出産する場合、子どもの養育費
不倫相手との間に子どもが生まれた場合、父親はその子どもを扶養する義務を負います。この扶養義務は、婚姻関係の有無に関わらず、父親と子どもの親子関係が認められることで発生します。
出典:民法 |e-Gov 法令検索民法第877条(扶養義務)
直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
養育費について家庭裁判所での調停や審判となった場合には、子どもと同居しない親が支払うべき養育費の金額は、裁判所が定める養育費算定表を基準に決められることが通常です。
参考:「養育費・婚姻費用算定表」(裁判所))親同士の収入バランスなどによりますが、月額数万円程度になることが多いです。
不倫による出産で、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた非嫡出子(ひちゃくしゅつし)の場合であっても、養育費は、子どもが20歳前後になるまで発生するため、継続的に資金を工面する必要があります。当然ながら、家計からお金が出ていくことになりますので、夫婦間で報告・相談を行うことは必須になるでしょう。
3. 胎児認知
妊娠した不倫相手と婚姻しない場合又は婚姻まで時間がかかる場合には、子どもの認知の問題が生じます。認知をすると、法的に親子関係が生じますので、扶養義務が発生して互いに相続権も生じます。
子どもが生まれた後にも認知できますが、生まれる前の胎児の時点でも認知が可能です。令和4年の民法改正により嫡出推定の規定が変更されており、認知と嫡出推定についても調整がされていますので、ご自身の状況に応じた適切な対応が必要です。
不倫による妊娠問題は非常にデリケートで複雑です。新しい法改正も含めた正確な情報に基づく判断が重要ですので、専門家である弁護士に相談し、法的なリスクや対応について適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
4. 不倫の妊娠・中絶を弁護士に相談する際の流れ
(1)初回相談の予約と準備
・予約
法律事務所に連絡をし、初回相談の予約を行います。一般的に、初回相談は30分から1時間程度で設定されていることが多く、一部の事務所では初回のみ無料相談を提供しています。
・事前準備
弁護士に相談する際は、不倫や妊娠に至る状況や、今までの不倫相手とのやり取りを明確にしておくことが重要です。LINEやメールのやり取り、不倫相手の妊娠が発覚した経緯など、関連資料があれば用意しておくとスムーズに進みます。
(2)相談内容のヒアリング
弁護士は、現在の状況を詳細にヒアリングします。具体的には、以下のような事項が確認されることが多いです。
- 不倫期間や関係性
- 妊娠の経緯や妊娠週数
- 配偶者(妻)への報告の有無
- 不倫相手が出産を希望しているか、中絶を希望しているか
- 不倫相手や配偶者(妻)が慰謝料請求を示唆しているか
(3)相談内容のヒアリング
・慰謝料や養育費の説明
配偶者(妻)や不倫相手からの慰謝料請求について、金額の目安や支払い責任について説明されます。また、不倫相手が出産した場合の認知や養育費の金額感についても確認します。
・対応方法の検討
弁護士は、依頼者が負担する可能性のある費用や、リスク回避のための対策を提案します。たとえば、慰謝料の減額交渉や不倫相手との合意書作成、または、配偶者(妻)との離婚が避けられない場合の準備などです。
(4)今後の方針決定と弁護士依頼の判断
初回相談をもとに、今後の方針を相談します。たとえば、以下のような対策を取ることが一般的です。
- 不倫相手との慰謝料や費用負担に関する合意書を作成する
- 配偶者(妻)に対して弁護士を通じて説明や交渉を行う
- 出産した場合の認知や養育費支払いに備える
弁護士に継続的に依頼する場合には、ここで依頼の契約を結ぶことになります。
5. 不倫関連の弁護士費用について
不倫関連の弁護士費用は、相談内容や事務所によって異なりますが、一般的な費用項目としては以下の通りです。
(1)初回相談料
相場: 10,000円程度(1時間)
一部の法律事務所では初回無料相談を行っている場合もあります。
(2)着手金
正式に依頼する際に支払う費用です。不倫相手や配偶者(妻)との慰謝料交渉や合意書の作成など、事案ごとの対応内容に応じて費用が設定されます。
相場: 10万円~30万円程度。複雑な案件の場合や交渉が長引く場合はこれ以上になることもあります。
(3)成功報酬
不倫相手や配偶者(妻)との交渉や、慰謝料の減額成功などの結果が得られた場合に発生する報酬です。
相場: 何を依頼するかによって異なりますが、慰謝料についてのみの依頼の場合には、慰謝料を減額した金額の10~20%程度が一般的です。
(4)その他の費用
・文書作成費用
不倫相手との合意書や念書の作成を行う場合、別途費用がかかる場合があります。
・訴訟費用
訴訟に発展した場合は、訴訟費用(訴状の提出費や裁判所の費用)も発生します。また、訴訟対応の弁護士費用も必要になりますので、あわせて確認するようにしましょう。
不倫問題、特に不倫相手が妊娠した場合は非常にデリケートな対応が必要です。相談前に十分な準備を行い、どのように進めていくか慎重な検討が必要です。
また、不倫相手への対応とご自身の配偶者(妻)への対応、不倫相手の配偶者への対応など複数の相手に対する対応が必要になる可能性があり、弁護士費用の負担が大きくなることがあるため、見積もりや支払いスケジュールなども確認してから契約を結ぶと安心です。
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- こちらに掲載されている情報は、2024年11月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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