離婚調停中に配偶者が子どもを連れ去り別居! 親権への影響や対処法は

離婚調停中に配偶者が子どもを連れ去り別居! 親権への影響や対処法は

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

夫婦間の離婚調停が進行している最中に、夫婦のいずれかが子どもを連れ去って別居してしまうケースがあります。

連れ去り別居には、子どもの親権を獲得したいという思惑がある場合が多いです。連れ去られた側としては、親権争いにおいて不利にならないように、早急に対処しなければなりません。

今回は、婚姻中に子どもを連れ去って別居する行為の違法性、連れ去り別居が親権者の決定に与える影響、連れ去り別居への対処法などを紹介します。

1. 婚姻中の連れ去り別居は違法?

夫婦が婚姻関係にある間は、子どもに対する親権・監護権は、夫・妻の双方が持っている状態です(共同親権)。

共同親権の状態において、夫婦の一方が勝手に子どもを連れ去って別居する行為は、未成年者略取・誘拐罪(刑法第224条)として違法になる可能性があります。

(1)連れ去り別居が違法となるケース

未成年者略取・誘拐罪は、未成年者を生活環境から不法に離脱させ、自己または第三者の実力的支配下に移した場合に成立します。

未成年者略取・誘拐罪の保護法益は、「未成年者本人の自由および安全」だけでなく、未成年者に対する監護権も含まれるとする説が通説です。

したがって、子どもを連れ去る行為は未成年者略取・誘拐罪にあたりますが、共同親権者が別居の際に連れていくことは違法性が阻却される場合があります。具体的には、以下のような場合に、違法性は阻却されず、未成年者略取・誘拐罪が成立する可能性が高いと言えます。

  • 暴行や脅迫を用いて、子どもの意思に反して連れ去った場合
  • 子どもをだまして連れ去った場合
  • 「○○を買ってあげる」などと誘惑して連れ去った場合
  • 虐待をしようとする意図を秘して連れ去った場合

など

(2)連れ去り別居が違法にならないケース

前述のとおり、未成年者に対する監護権は、未成年者略取・誘拐罪の保護法益に含まれるとする説が多数説です。

共同親権者が子どもを連れて別居する場合も、他方の監護権を侵害することになりますので、未成年者略取・誘拐罪は成立する可能性があります。ただし、親権者が子どもを連れていく場合には、違法性が阻却される場合があり、その結果、未成年者略取・誘拐罪は成立しないことがあります。

例えば、連れ去った側や子どもが、連れ去られた側からDVやモラハラなどを受けていた場合には、連れ去り別居の違法性が否定されることがあります。

2. 連れ去り別居が親権者の決定に与える影響

連れ去り別居が離婚後の親権者の決定にどのような影響を与えるかについては、ケースバイケースなので一概には言えません。

しかし一般的には、別居期間が長引けば長引くほど、連れ去られた側が親権を獲得することが難しくなるため、早急に対処が必要です。

(1)継続性の原則

別居期間が続くと、連れ去った側が有利になる

子どもの親権者を決定する際の考慮要素のひとつとして、「継続性の原則」があります。継続性の原則とは、子どもの生活や精神状態の平穏を保つ観点から、従前の生活環境をできるだけ変えないように親権者を定めるという考え方です。

連れ去り別居が行われた場合、子どもは連れ去った側と一緒に生活を始めます。したがって継続性の原則によれば、別居期間が長引けば長引くほど、子どもとの同居期間が長い連れ去った側が、親権争いにおいて有利になります。

ただし、親権者を決める際には、その監護状態(生活環境)が開始された経緯についても考慮されますので、違法に開始された監護状態は保護しないとして、違法に連れ去った側を親権者と指定しない場合も多いと言えます。

(2)子どもの意思尊重の原則

連れ去った側に子どもが懐いてしまうおそれがある

子どもの年齢が一定以上(おおむね10~12歳以上)の場合、親権者の決定に当たっては子どもの意思が重要な要素として考慮されます(子どもの意思尊重の原則)。

連れ去った側との生活期間が長いと、子どもが連れ去った側に懐いてしまい、連れ去った側が親権を獲得することを望むようになるかもしれません。そうなると、連れ去られた側にとっては、親権争いにおいて不利に働きます。

(3)連れ去り別居行為自体は、親権者の決定に関してネガティブに働くか?

連れ去り別居という行為には未成年者略取・誘拐罪が成立することもあります。

また、離婚後の親権者は、子どもの利益をもっとも優先し考慮したうえで決定されます(民法第766条第1項)。判断の中では、連れ去った経緯や態様も考慮されますので、違法な連れ去りと評価される場合には、親権者の決定に不利益に働く可能性もあります。

ただし、連れ去り別居が違法な態様であるとしても、それだけで親権が判断されるわけではありません。したがって、連れ去られた側が子どもの親権を獲得したいならば、連れ去り行為の違法性ばかりを強調するのではなく、連れ去り前の監護状況を具体的に主張したり、自分と同居することが子どもにとって利益になると説得的に主張したりしなければなりません。

3. 配偶者に子どもを連れ去られた場合の対処法

配偶者に子どもを連れ去られた場合、無理やり連れ戻そうとしてはいけません。連れ戻す行為が未成年者略取・誘拐罪に問われる可能性があるほか、粗暴な振る舞いがマイナス評価され、親権者の決定において不利になってしまうおそれがあります。

子どもを連れ戻すには、法的手続きを通じて配偶者と争うことが必要です。具体的には、家庭裁判所に対して子の引渡しの審判・監護者指定の審判を申し立てましょう。

(参考:「子の監護者の指定調停」(裁判所))

子の監護者指定については調停手続きもありますが、他方配偶者の下で生活する時間が長くなればなるほど監護権や親権の獲得は難しくなりますので、早期に審判を申し立てることが必要です。審判を申し立てる際には、審判前の保全処分も併せて申し立てるのが一般的です。何よりもスピード感が重要な手続きです。早期に弁護士に相談して、申し立てを行いましょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年07月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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