弁護士法で受任できない案件がある? 利益相反とは
弁護士と相談者の間に利益相反が生じる場合、弁護士は依頼を受けることができません。
今回は、弁護士に依頼する際に問題となる利益相反について解説します。
1. 利益相反とは
「利益相反」とは、複数の人の利害が対立している状況を意味します。
弁護士は、依頼者のために誠実・公正に職務を行う義務を負っています。
その一方で、弁護士は複数の依頼者から事件処理を受任しています。場合によっては、新規に相談を受けた人と、すでに事件を受任している依頼者の間で利益相反が生じることもあり得ます。
この場合、一方の依頼者の利益を図るために、もう一方の依頼者の利益を害するという事態が生じかねないので、弁護士は後から来た相談者の依頼を断らなければなりません。
また弁護士自身や、弁護士の近親者・関係者との間で利益相反が生じる人からの依頼も、弁護士は断らなければならないとされています。
弁護士が依頼者のために全力を尽くし、誠実・公正に職務を行うことができない事態が生じるおそれがある場合に、受任を禁止して依頼者の利益を守ることが、弁護士に対する利益相反規制の目的です。
2. 弁護士の利益相反規定
どのような場合が利益相反に当たるのか?
弁護士が利益相反によって受任を禁止されている案件の種類は、弁護士法および弁護士職務基本規程において定められています。
(1)弁護士法第25条・弁護士職務基本規程第27条・57条
弁護士法第25条では、以下の事件について弁護士による受任を禁止しています。ただし3.から7.については、受任している事件の依頼者が同意した場合には、例外的に受任が可能です。
- 相手方の協議を受けて賛助し、またはその依頼を承諾した事件
- 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
- 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
- 弁護士法人または弁護士・外国法事務弁護士共同法人・外国法事務弁護士法人(以下「弁護士法人等」)の社員または使用人弁護士として業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人等が相手方の協議を受けて賛助し、または依頼を承諾した事件であって、自ら関与したもの
- 弁護士法人等の社員または使用人弁護士として業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人等が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであって、自ら関与したもの
- 弁護士法人等の社員または使用人である場合に、当該弁護士法人等が相手方から受任している事件
- 弁護士法人等の社員または使用人である場合に、当該弁護士法人等が受任している事件(自ら関与しているものに限る)の相手方からの依頼による他の事件
上記の利益相反による受任の禁止は、弁護士職務基本規程第27条および第57条にも同等の内容が定められています。
(2)弁護士職務基本規程第28条
さらに、弁護士法第25条所定の受任禁止に加えて、弁護士職務基本規程第28条では、以下の事件について弁護士による受任を禁止しています。
- 相手方が弁護士の配偶者・直系血族・兄弟姉妹・同居の親族である事件
- 弁護士が受任している他の事件の依頼者、または継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件
- 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
- 依頼者の利益と弁護士自身の経済的利益が相反する事件
なお、1.と4.については依頼者が同意した場合、2.については依頼者と相手方が同意した場合、3.については依頼者と他の依頼者が全員同意した場合には、例外的に受任可能です。
ただし、依頼者の利益を最大限図ることが難しくなるリスクがあるため、上記に該当する事件については、依頼者の同意があっても受任を断る弁護士が大半であると考えられます。
3. 弁護士は利益相反に当たる案件を受任できない
弁護士法および弁護士職務基本規程において、利益相反に該当するとされている案件については、弁護士は受任を禁止されています。利益相反規制に違反した弁護士は、弁護士会による懲戒の対象となります。
もし利益相反を理由に、法律相談の段階で弁護士から受任を断られた場合には、別の弁護士(法律事務所)に依頼しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2022年12月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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