養育費保証サービスとは? 知っておきたい注意点は
配偶者との離婚を考えている方のうち、とくに子どもの親権を得て養育していく予定の立場の方であれば、離婚後の「養育費」をしっかりと確保したいと望むのは当然です。しかし、たとえ養育費の取り決めがあっても、しっかりと支払いが守られるとは限りません。
内閣府が令和4年3月に公表した「養育費の確保に関する取組状況について」によると、離婚に際して養育費の取り決めがあった人のうち、35%が「取り決めた額や期間を適切に受け取れなかった」、27%が「まったく受け取れなかった」と回答しています。
また、養育費を受け取れなくなった時期の最多は「1年目」で52%、「2年目」は24%で、たとえ取り決めがあっても1〜2年で支払いが途絶えるケースが多いという実情が浮き彫りになりました。
いわゆる「養育費の未払い」は、とくに母子家庭が困窮する原因として問題視されています。そこで、令和2年の民事執行法の改正を機に登場したのが「養育費保証サービス」です。
養育費保証サービスとはどのような制度なのでしょうか? 利用方法や利用に際しておぼえておきたい注意点を解説します。
1. 養育費保証サービスとは?
養育費保証サービスとは、離婚後に養育費の支払いを約束しているのにその支払いが正しく履行されなかったときに、支払い義務のある人に代わって保証会社が養育費を立て替えて支払ってくれるサービスです。
養育費が約束どおり支払われない理由はさまざまですが、やはり最大の問題は支払人が「約束どおり支払わなければならない」という意識をもっていないという点でしょう。
保証会社が介在することで、支払いが遅滞すれば保証会社が立て替え、さらに求償権を理由に立て替え分の支払いを求められるので、支払人側には強い義務感が生じます。
立て替えによって養育費が確実に支払われることで監護親の経済的な負担を軽減できるだけでなく、支払人側の意識を高めて養育費の支払いを確保するというのが本サービスの特徴です。
2. 養育費保証サービスの利用方法
養育費保証サービスを提供しているのは、民間の保証会社です。一部の地域では自治体主導で支援する取り組みが広がっていますが、実際の保証実務は民間の保証会社がおこなっています。
ここでは、養育費保証サービスを利用するための契約や実際に支払い遅滞が発生したときの利用について、基本的な流れを紹介しましょう。
(1)養育費保証サービスを契約するまでの流れ
養育費保証サービスを利用する前提として、まずは離婚する当事者同士の間に養育費の約束を取り決めなければなりません。支払金額や支払い時期・期間、支払いの方法などを確認できるように、離婚協議書や合意書、公正証書や調停調書といったかたちで確保しましょう。
養育費保証サービスを利用するには、保証会社との契約が必要です。当然、契約には審査があります。
ここで覚えておきたいのは、審査対象となるのはあくまでも支払人だという点です。支払人の名前・住所・連絡先などの項目が必要になるので、すでに別居中でも住所や連絡先などの情報を確保してください。
保証会社の審査に通過すると、養育費の受取人と保証会社の間で、保証会社が支払人の連帯保証人となる保証契約を結びます。初回の保証契約料を支払えば、保証開始です。
保証会社によっては、支払人との保証契約は不要で受取人のみと契約できるプランが用意されているところもありますが、基本的には支払人もサービスの利用に合意していなければならないという点は覚えておきましょう。
(2)養育費の支払い遅滞が発生したときの流れ
実際に養育費の支払い遅滞が発生した場合は、保証会社の窓口に連絡すれば取り決められた養育費から手数料が差し引かれた分の金額が立て替えられて指定口座に振り込まれるのが基本的な流れです。
保証会社やプランによっては、保証会社が支払人の口座から養育費分を自動で引き落としたうえで毎月の指定日に受取人に支払うといった方式のものもあります。
この場合は、残高不足などで引き落としができなくても保証会社が立て替えて受取人に支払い、あとで保証会社が支払人から回収するので、受取人の手間はほとんどありません。
3. 養育費保証サービスを利用する際におぼえておきたい注意点
養育費の支払いを確保するという意味では、養育費保証サービスは大いに有益なものだといえるでしょう。ただし、利用に際しておぼえておきたい注意点も存在します。
(1)養育費を支払う側の合意が必要
養育費保証サービスでは、保証会社が支払人の連帯保証人となって養育費の支払いを約束するかたちになります。
つまり、養育費を支払う側が利用に合意しなければ、原則として本サービスは利用できません。もちろん、養育費の支払いの取り決めがない場合も利用できないので、離婚を検討するタイミングで養育費の約束を取り決めておく必要があります。
また、支払人の経済的な事情などによっては保証会社の審査に通過しないこともあるので、誰でも確実に利用できるわけではないという点はおぼえておいたほうがよいでしょう。
(2)初期費用・手数料・更新料などがかかる
養育費保証サービスを利用するためには、契約料や初回保証料などの初期費用に加えて、毎月の事務手数料や立て替え時の手数料、年間の更新料といった費用がかかります。保証会社やプランによって変動しますが、手元に入ってくるお金が目減りしてしまうのは確実です。
養育費保証は比較的新しいサービスで、事業に参入している保証会社も少数なので、適正額がわかりにくいという面があります。思いがけずコストが高額になってしまうこともあるので、契約内容・プラン内容などを十分に理解して保証会社を選びましょう。
(3)保証契約が途中で解除される可能性もある
残念ながら、養育費保証サービスは長く利用できるものではありません。
まず、保証の期間に限度があり、おおむね1〜2年のプランが主流です。契約更新も可能ですが、その際には養育費の月額に応じた更新料を支払う必要があり、更新しなければ契約が解除されます。
また、保証会社はあくまでも民間の企業なので、経営が悪化すれば事業をやめてしまうリスクがあることも否定できません。
加えて、保証会社が債権回収のような行為をおこなったり、離婚に際する交渉や文書作成といった法律事務をおこなったりすることは、弁護士法に抵触する可能性があります。
今のところ養育費保証サービスを提供している保証会社が摘発されたケースは報告されていませんが、参入者が増えてくると、コンプライアンス意識が低い事業者が紛れ込んでしまうかもしれません。
もちろん、利用者が処罰されることはありませんが、突然の事業停止や廃業などにもつながるので、結果として不利益を被るおそれがあることも心得ておくべきです。
養育費保証サービスの利用に不安を感じるなら、まずは弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。離婚を検討している段階で弁護士のサポートを受けていれば、一方的に不利な条件で離婚を強いられたり、養育費の取り決めを得られないままで離婚したりといった事態も回避できるはずです。
- こちらに掲載されている情報は、2023年05月22日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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