ワンオペ育児を理由に離婚したい。慰謝料は請求できる?
育児は喜びだけでなく、多くの肉体的・精神的負担も親にもたらします。特にワンオペ育児の場合はなおさらです。育児に対して非協力的な配偶者に悩み、離婚を考えるようになった方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、ワンオペ育児を理由に離婚ができるのか、離婚の際の慰謝料や親権など、離婚前に考慮すべき点や相談先を詳しく解説します。
1. ワンオペ育児を理由に離婚できる?
ワンオペ育児とは、片方の親(多くの場合は母親)がほとんど一人で育児を行っている状態(ワンオペレーション)を指します。もう一方の親(多くの場合は父親)が育児にほとんど参加しなければ、育児の負担が片方の親だけに極端に偏ります。
これが長期化すると、育児によるストレスや疲労が非常に大きくなってしまい、時には育児に非協力的な配偶者に不満を抱く原因となります。
ワンオペ育児に対する不満をためこんだ結果、離婚まで考えてしまうことは十分にあり得ます。しかし、そうした理由による離婚は実際可能なのでしょうか。
(1)合意があれば離婚は可能
そもそも離婚には夫婦間の話し合いで決まる「協議離婚」や、家庭裁判所での調停を経た合意によって決まる「調停離婚」という形態があります。これらの離婚形態では、夫婦双方が離婚に合意さえすれば、ワンオペ育児も含めてどのような理由でも離婚は可能です。
(2)ワンオペ育児のみが理由だと離婚は難しい
夫婦どちらかが強硬に離婚を認めない場合、離婚裁判の手段を講じる必要があります。これは裁判所に「こうした理由なら離婚するのも仕方ない」と認めてもらうことで、配偶者の同意がなくても可能になる離婚です。
この離婚裁判で離婚を認めてもらえる主な理由は民法に定められており、「法定離婚事由」といいます。具体的には、配偶者の不貞や、扶養・扶助義務を悪意によって果たさないことなどです。
この法定離婚事由の中に、あいにくワンオペ育児は明記されていません。たとえ明記されていなくとも、DV被害を受けているなど婚姻状態を続けるのが難しい重大な事情があると判断されれば、離婚が認められるケースはあります。しかし、現状だとワンオペ育児のみでは離婚事由として弱いと判断されることが多いのが実情です。
そのため、もしも協議離婚や調停離婚が成立せず、離婚訴訟の手段を選ぶ必要がある場合、ワンオペ育児以外に法定離婚事由相当の落ち度が相手にないと、離婚できない可能性があります。もしも離婚したい理由がワンオペ育児による負担しかない場合は、なるべく協議離婚や調停離婚の段階で決着をつけることが重要です。
2. 離婚後の親権と養育費は? 慰謝料は請求できるのか
仮に離婚が成立したとして、親権や養育費、慰謝料などはどうなるのでしょうか。
(1)親権について
まず、子どもの親権に関しては、ワンオペ育児をしていた親に帰属する可能性が高いと見られます。というのも、親権者は、それまでの育児実績や子どもとの関係性を踏まえて判断されることが多いからです。
(2)養育費について
次に子どもの養育費に関しては、親権を持たない親に支払ってもらう形となります。養育費の額に関しても、夫婦間の協議や調停で決まらない場合は、裁判によって審判してもらうことが可能です。
この審判では基本的に、夫婦双方の収入状況や子どもの年齢・人数などに応じて妥当な額が算出されますので、ワンオペ育児をしていたことと、養育費額とは直接の関係はありません。養育費の目安額については、裁判所が発表している「養育費・婚姻費用算定表」という資料で確認可能です。
(3)慰謝料について
慰謝料に関しては、ワンオペ育児だけだと請求権が認められる可能性は高くありません。
慰謝料の請求権は一般的に、配偶者に不貞や暴力などの明確な不法行為があった場合に認められるものです。妻(夫)に育児を押し付けることは、不法行為とまではいえないので、それを理由とした慰謝料の請求は難しいでしょう。
ただし、もしも配偶者に不貞行為やDVなど、不法な行為があった場合は、それを理由に慰謝料を請求できる可能性があります。
3. ワンオペ育児に悩んだときの対処法、相談先
ワンオペ育児で悩んでいると、もう離婚するしかないと思い込んでしまうかもしれません。しかし、そう決めつけてしまう前に、いったん落ち着いてそれ以外の方法はないか考えてみましょう。特にそれまで専業主婦だった場合は、今後の生活設計について熟慮しておかないと、母子ともに困窮してしまうリスクが高いので、なおさら慎重さが求められます。
(1)配偶者やママ友、自治体の窓口などへの相談
これまで夫婦間で十分に話し合えていなかった場合は、自分が感じている不満やストレス、要望などを正直に配偶者へ伝えることが大切です。離婚も視野に入れていることを話せば、これまで真剣に取り合ってくれなかった相手も行動を見直してくれる可能性があります。
育児や家事分担の見直しなどに相手が応じてくれれば最良ですが、そうでなくても話し合いを通じてお互いの状況を正確に把握することで、関係の改善が図れるかもしれません。子どもについての愚痴や報告、相談を親身に聞いてもらえるだけでも、ワンオペ育児の孤独感や不満はだいぶ軽減されるものです。
夫に限らず、知り合いのママ友と悩みを共有したり、自治体の育児相談窓口、地域の子育て支援センターなどに相談したりすることでも、気持ちが楽になるかもしれません。
(2)保育園や育児代行サービスなどの活用
保育園やベビーシッター、その他の家事育児代行サービスを活用し、子どもから離れて息抜きできる時間をつくるのも大切です。実家、配偶者の実家などを頼れるのであれば、ぜひ協力を頼みましょう。最新の家電などを購入して、家事負担を少しでも軽くすることも有効です。
(3)弁護士への相談
それでもどうしても状況が改善されない場合は、弁護士に離婚という選択肢について相談してみましょう。スムーズな離婚の仕方や、親権や養育費を取り逃さない方法など、弁護士からの助言や協力を仰ぐことで、離婚後に自分や子どもが安定した生活を送れるように入念な対策を講じることができます。
ワンオペ育児は本当に大変ですが、さまざまなサポートや方法を活用して、自分がより良い状態で育児ができるように工夫することが大切です。そして、もしも離婚しか状況を改善する手段がないと感じた場合は、ぜひ弁護士に相談してみてください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年12月13日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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