- (更新:2024年11月25日)
- 離婚・男女問題
養育費の新算定表が高すぎる! 改正の理由と払えないときの減額方法
養育費を支払うことになったものの、高すぎると感じていたり、減額できないかと悩みを抱えたりしている方もいるかもしれません。
本コラムでは、令和元年に改定された新算定表を基に、養育費の算出基準や提示されている相場、減額できるケースなどを解説します。
1. 養育費の算定表はなぜ改定されたのか
養育費は、通常家庭裁判所が公開している養育費算定表を基準に算出します。この算定表はもともと数名の裁判官が研究を重ねて策定したものを平成15年に法律雑誌上で公開したものでしたが、それから16年間変更されていなかったため、養育費の額が現在の状況に合わないという問題が発生していました。
もともと養育費の額が低すぎるという指摘もありましたが、さらに物価の上昇や増税、景気の悪化などが重なることで、ひとり親家庭や子どもの貧困につながるという声も大きくなり、令和元年になってようやく改定されました。
(1)新算定表で変更された点
新しくなった算定表の変更点は、主に以下のとおりです。
①算出に必要な基礎収入の内容
養育費算出の基になっているのは、総収入から税金や必要経費を引いた額が基礎収入です。給与所得者用と自営業者用の2種類があります。新算定表では経費として引ける金額が少なくなっているため、どちらも旧算定表に比べ、基礎収入額が上がっています。
②子の生活費指数
大人が生活するのに必要な数値を100とした場合の、子どもにかかる生活費の指数です。この指数も改定にあたり上昇していますが、15歳以上の場合は国公立高校の学費無料化が影響し、減少している場合もあります。
(2)変更前と変更後の養育費相場
養育費算出の基になる基礎収入や子の生活費指数が上昇したことで、変更前に比べて変更後は、多くの場合養育費が1~2万円ほど上昇しています。
具体的な金額は義務者(養育費を払う側)と権利者(養育費をもらう側)の年収や子どもの数、子どもの年齢などにより変動します。新算定表に基づいた養育費の例をいくつか記載します。
①義務者の年収(給与所得者)400万円、権利者の年収0円:子どもが1人(0~14歳)の場合
養育費:4~6万円
(参考:「(表1)養育費・子1人表(子0〜14歳)」(裁判所))
②義務者の年収500万円(自営業者)、権利者の年収(給与所得者)100万円:子どもが2人(0~14歳)の場合
養育費:10~12万円
(参考:「(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0〜14歳)」(裁判所))
③義務者の年収600万円(給与所得者)、権利者の年収(給与所得者)300万円:子どもが3人(第1子、第2子、第3子が15歳以上)の場合
養育費:8~10万円
(参考:「(表9)養育費・子3人表(第1子,第2子及び第3子15歳以上)」(裁判所))
上記の例はあくまでも算定表を基にした相場のため、個々の事情により金額は変動します。
2. 養育費が高すぎて払えない! 減額できるケースは?
養育費の基準はわかったものの、高すぎて払い続けるのが難しい場合、合理的な理由があれば減額を要求できます。減額を要求できる合理的な理由は、以下のような場合です。
- 相場以上の支払いをしている
算定表で提示されている金額よりも多く支払っている場合 - 義務者(支払う側)の収入が減少した
生活の事情で当初よりも年収が減ってしまった場合 - 権利者(受け取る側)の収入が増加した
権利者の年収が増えた場合 - 再婚や出生による影響
義務者が再婚し、新たに子どもが生まれた場合、また養子縁組によって扶養する子どもの数が増えた場合
権利者が再婚し、子どもが再婚相手と養子縁組をした場合
個々の事情により、減額できるかどうかは異なります。また、算定表が改定されたことだけを理由とする減額要求や増額要求は、認められないことが多いので注意しましょう。
3. 養育費を減額したい場合の具体的な方法
養育費を減額できる理由があったとしても、勝手に減らせるわけではありません。後々のトラブルを避けるためにも、誠実な対応を心がけましょう。
(1)権利者と話し合って減額を求める
養育費は双方の合意があれば自由に金額を設定できます。そのため、相手に納得してもらえれば減額できるかもしれません。ただし、自分本位な理由では納得してもらえる可能性は低いため、具体的な理由を丁寧に説明しましょう。
(2)家庭裁判所へ減額調停を申し立てる
相手との話し合いで解決しない場合やそもそも話し合いに応じてもらえない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立てましょう。調停委員が双方の意見を聞き、合意するよう調整します。それでも合意に至らず調停が成立しなかった場合は、自動的に審判に移行し、裁判官が判断を下します。調停が成立するまで、もしくは審判が出るまでは勝手に減額できません。
4. 養育費を支払えなくても義務はなくならない
さまざまな事情により、養育費を減額したい場合はあるかもしれません。ただし、たとえ養育費を減額できたとしても、子どもの扶養義務がなくなるわけではありません。養育費は、子どもが自分と同じ生活水準で過ごせるための費用です。
養育費の支払いを怠った場合のリスクを解説します。
(1)養育費の支払いを怠った場合のリスク
公的な取り決めを行っているにも関わらず、一方的に支払いを怠った場合は、強制執行で給料を差し押さえられるリスクがあります。公的な取り決めとは、調書や公正証書などの文書がある場合です。
強制執行された場合、職場先や周囲に養育費を支払っていないことが知られる恐れも十分考えられます。安易な未払いや減額をしてしまうと、生活に大きな悪影響を及ぼします。
養育費は、一般的に算定表を基に算出されますが、個々の事情により金額は変動します。個人で解決できない場合は、弁護士に相談してみるのもひとつの方法です。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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