面会交流を拒否された! 損害賠償請求(慰謝料請求)はできる?
離婚する際に取り決めていた面会交流が実現せず、拒否された場合にはどうすればよいのでしょうか。
本コラムでは、面会交流を拒否された際に利用できる手続きや損害賠償請求に必要な条件を解説します。損害賠償金額が高額になるケースや、拒否された際の注意点にも触れています。
1. 面会交流を拒否されたときにやるべきこと
子どものいる夫婦が離婚するにあたっては、親権や養育費のほかに面会交流についてもあらかじめ決めるのが一般的です。子どもと同居しない親が、どれくらいの頻度でどのように子どもと会うのかといった内容を、離婚の協議や裁判において約束します。
しかし、離婚後に元夫婦間の関係性が悪化した場合、本来約束したはずの面会交流を拒否されることがあります。そうしたケースでは、どのように対応すればよいのでしょうか。
(1)面会交流を実現するためにできる方法や手続き
協議離婚の場合は、面会交流について夫婦間のみで取り決めていることが少なくありません。その場合、「面会交流調停」を申し立てることで調停委員が間に立ち、面会交流について話し合う機会を設けられます。調停で決着がつかなければ審判へ移行し、家庭裁判所に結論を出してもらうことになります。
調停離婚や、離婚後の審判で面会交流のルールを決めた場合は、家庭裁判所へ「履行勧告」を申し立てる方法もあります。これは調停や審判でルールを決めたのにもかかわらず、それを実行しない親に対して、面会させるように裁判所から説得してもらう方法です。
履行勧告を申し立てるには、調停や審判の場で面会交流のルールを決めたことが最低条件となります。協議離婚で約束した場合は申し立てられない点に注意しましょう。
(2)面会交流を拒否されたという証拠を集める
面会交流が実現できない場合、本来もつべき権利を侵害されたとして、民法第709条の不法行為による損害賠償を請求できることもあります。ただし、この場合は面会交流に関する合意書とともに、実際に拒否されたと分かる証拠が必須です。
具体的には、面会交流の日時についてのやり取りや、拒否の理由についてのやり取り、子どもの意向が分かる電話やメッセージなどが挙げられます。とくに子どもの意向が無視され、同居している親が勝手かつ悪質な理由で面会させないようにしていると分かる証拠があると有効です。
(出典:「民法」第七百九条(e-Gov法令検索))
2. 面会交流を拒否されて損害賠償を請求できる条件
面会交流が実現しないからといって、どのような場合でも損害賠償を請求できるわけではありません。次の2つの条件に該当するかどうかが重要なポイントです。
(1)協議や裁判で条件を詳細に取り決めている
あらかじめ、離婚協議や裁判において、面会交流について詳細を決めていることがひとつ目の条件です。それがなければ、本当に違法かどうかを司法が判断できません。たとえば、離婚協議書や面会交流について交わした合意書、調停調書、離婚訴訟後の和解調書などがあると有効です。
取り決めは、口頭のみで書面で残していない場合は、客観的な判断が困難になります。取り決めた内容を音声メッセージなどで残していれば、複数の証拠とあわせて提出することも可能です。ただし、書面がある場合と比べると認められる可能性は低くなります。
(2)面会交流の拒否が悪質であり違法性が認められる
面会交流を拒否されたという事実に加えて、その理由に悪質かつ違法性があることも求められます。たとえば子どもが体調不良になったり、同居していない親が子どもに暴言を吐いたりしている場合は、面会交流の拒否も正当性があるとして認められる可能性があります。
一方、身勝手な理由や嘘をついて面会を拒否することは悪質と判断され、民法上の損害賠償請求が認められる可能性が高まります。
3. 面会交流を拒否されて損害賠償が高額になるケース
面会交流を拒否されたことを理由に損害賠償請求をする場合、次のケースでは高額になる可能性があります。
(1)協議に応じる態度が全くない
面会交流に関する協議を行いたくても、相手がそれに応じようとしなければ話が進みません。根拠や理由もなく協議に応じる姿勢をいっさい見せないのなら、悪質性が高いと判断されて高額になる可能性があります。
(2)拒否された期間が長い
正当な理由もなく拒否されている期間が長ければ、子どもに会えないことで精神的苦痛を受けている期間も長くなります。離婚後に一度も面会交流をさせてもらえていないケースも、同じく違法性が高まります。
(3)拒否理由が不合理
面会交流を拒否する理由が到底納得できるものではなく、合理的ではない場合も同様です。それにより精神的な苦痛は増大します。
(4)嘘をつかれて拒否された
たとえば、子どもが風邪をひいたと嘘をついて面会させなかったことが判明した場合、より悪質だとして高額の慰謝料を受け取れることがあります。
4. 面会交流を拒否された際の注意点
面会交流を拒否された場合でも決して起こしてはいけない行動があります。とくに、次の2つは大きなトラブルになるおそれがあるため、拒否されて困っている場合は、まずは専門家である弁護士へ相談しましょう。
(1)面会交流を拒否されても養育費は支払う必要がある
離婚する際、子どもと同居しない親が養育費を支払うと取り決めるケースは少なくありません。この場合、会えないのなら養育費を支払わないと考えてしまう方がいます。
しかし、面会交流を拒否されても、親には民法第877条にもとづき子どもを扶養する義務があるため、これまでと変わらず養育費は支払い続ける必要があります。養育費の問題とは切り離して、面会交流を実現するための方法を模索しましょう。
(出典:「民法」第八百七十七条(e-Gov法令検索))
(2)同居親の許可なく子どもを連れ去ってはいけない
同居している親の許可を得ずに子どもを連れ去ってしまうケースも見られます。しかし、これは明らかに法律違反となってしまうことに注意が必要です。未成年者略取罪(刑法第224条)として、「3か月以上7年以下の懲役」を科せられるおそれがあります。
(出典:「刑法」第二百二十四条(e-Gov法令検索))
本来は面会交流ができるにもかかわらず、理不尽な理由で子どもと会わせてもらえない状況は、精神的苦痛の原因となります。慰謝料として損害賠償請求することも含め、弁護士へ相談するのもおすすめです。
- こちらに掲載されている情報は、2024年01月17日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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