面会交流のルールを破られた場合・やむを得ず破る場合の対処法

面会交流のルールを破られた場合・やむを得ず破る場合の対処法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子どものいる親が離婚する場合、親権とともに面会交流についても定めておく必要があります。しかし、同意したはずのルールを守ってもらえない、あるいはやむを得ず守れなくなっている、といったケースは少なくありません。

本コラムでは、面会交流で決めておくべき項目や、ルールにまつわるトラブル対処方法について解説します。

1. 面会交流のルールとは

子どものいる親が離婚する際、親権がしばしば問題になります。親権をもった親は、離婚後も子どもと一緒に暮らせるものの、親権を渡した親は子どもと離れて暮らさなければなりません。

しかし、子どもにとって実親であることには変わりなく、両親が離婚した後も普段離れて暮らしている親と会える権利を保障するのが「面会交流」の趣旨です。

一般的に、離婚する際には面会交流をどうするのかを話し合います。ここで同意した内容を文書で残せていないと、後で「言った、言わない」のトラブルになりがちです。とくに決まったフォーマットはないものの、決めたルールは文書で残しておくようにしましょう。もし当事者同士の話し合いがこじれそうなら、家庭裁判所へ申し立て、調停で決めることも可能です。

面会交流のルールで決めておくべき項目としては、次のものがあります。

(1)頻度

親の都合だけではなく、子ども自身の負担にも配慮する必要があります。

(2)時間

1回あたりの面会時間を決めておきます。

(3)場所

不安であれば、最初は公園やショッピングモールなど人目のある場所がおすすめです。

(4)子どもの受け渡し方法

非同居親が子どもを自宅あるいは駅などへ迎えに行くのか、同居している親が連れて来るのかなどを決めます。

(5)連絡方法

親同士の連絡が困難な場合は、互いの両親を仲介役とする方法もあります。

(6)宿泊の有無

子どもが環境に慣れてきた場合、非同居親の自宅などで宿泊させるかどうかも確認します。

(7)祖父母との面会有無

親だけではなく、祖父母と会えるかどうかも決めておきましょう。

(8)プレゼントのやり取り

高額なプレゼントはクリスマスや誕生日に限るなど、あらかじめ決めておくと安心です。

(9)学校行事への参加有無

非同居親が学校行事に参加できるか、できる場合は運動会や授業参観など、どの行事を参加可能とするかを決めておくと、心づもりができます。

面会交流における一番の目的は、子どもへの精神的なサポートです。そのため、ルールづくりの際には子どもの立場を一番に考えることが大切です。

ただし、面会交流のルールを決めるにあたり、養育費に関しては条件にできません。たとえば、「養育費の支払いがなされない場合は面会交流を中止する」といったルールは設けられないため、注意しましょう。

2. 面会交流のルールを破られた場合

面会交流についてあらかじめ決め、同意を得ていたとしても、実際には破られてしまうケースがあります。面会交流のルールが守られない場合、どのような対処が可能でしょうか。

(1)口頭での注意

まず、相手に面会交流のルールが破られていることを伝え、守るように口頭で注意することが可能です。

(2)メールや書面での注意

相手と連絡できる方法が限られているなど、口頭での注意が難しければ、メールあるいは書面を送付して注意する方法もあります。

(3)面会交流調停の申し立て

当事者同士でらちが明かない場合は、家庭裁判所へ面会交流調停を申し立てることも可能です。調停では、当事者双方で決めた面会交流のルールを破った理由、経緯などをまず確認した上で、詳細なルールを作ります。具体的にルールを確定させることで、その後のトラブルを回避できます。

ただ、調停でも意見が対立した場合は、裁判官による審判へと移行するのが一般的です。

(4)履行勧告

面会交流のルールが、当事者のみの話し合いで決めたものではなく、離婚調停や離婚審判の場で定められたケースもあります。その場合、義務を守るように裁判所が勧告する手続きが「履行勧告」です。公的な第三者から勧告してもらうことで、実効性が高まります。また、手数料もかからないため、活用しない手はありません。

先ほど紹介した面会交流調停で決まったルールが破られた場合も、履行勧告を利用できます。

(5)間接強制

間接強制とは、裁判所の命じた履行命令に従わない場合に、金銭の支払いを命じることによって間接的に義務を果たさせる方法です。履行勧告よりも強い効果を見込めるのが特徴で、ルールが具体的で明確な場合に利用できます。

子どもをいつどこで引き渡すかを定めていなかったり、「2か月に1度くらいに半日ほどの面会を行う」といったあいまいな条件だったりすると、間接強制の対象とならないため注意しましょう。

3. やむを得ず面会交流のルールを破る場合

面会交流のルールを決めたとしても、どうしてもルールを破らざるを得ないケースは存在します。このような場合、どう対応すればよいのでしょうか。

(1)やむを得ない理由があることを相手に説明する

同居・非同居にかかわらず、原則として双方ともにルールは守らなければなりません。しかし、やむを得ない理由がある場合は、なぜルールを守れないのかを相手へ説明しましょう。面会交流は子どもの権利であり、親の義務でもあります。もし正当な理由がない場合は義務違反となってしまうため注意が必要です。

(2)ルールの変更を申し入れる

子どもが成長するにつれ、学校の時間が長くなったり、部活や習い事に時間を取られたりと、事情が変わってルールを守りづらくなることもあります。どうしても現状のルールを守れない理由があるなら、それをもとにルールの変更を申し入れましょう。

(3)面会交流調停を申し立てる

ルールを守れない理由を説明したり変更を申し入れたりしても、相手が納得してくれない場合は、面会交流調停を申し立てる方法があります。申し立ては双方とも可能で、家庭裁判所が間に入ることでトラブルを防ぎ、より適切なルールを定められます。

面会交流についてのルールはさまざまな理由から守られず、良好に関係性を築いていくことが難しいこともあります。離婚後、子どもにまつわる面会交流に関してもめそうであれば、早めに弁護士へ相談してみるのもおすすめです。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年03月11日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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