- (更新:2024年12月18日)
- 離婚・男女問題
既婚者だと知らなかった! 不倫の慰謝料請求は拒否できる?
真剣に付き合っていた人が実は既婚者だった場合、その精神的ダメージは計り知れません。
本コラムでは、意図せず不倫関係になってしまい、相手の配偶者から慰謝料請求された場合にどう対処すべきなのかを解説します。また、貞操権を侵害されたとして慰謝料を請求するための条件なども紹介します。
1. 既婚者と知らなかった場合、慰謝料を支払う義務はある?
もし付き合っている相手が既婚者であることを知らず、注意しても気付けなかった場合は、相手の配偶者から慰謝料を請求されても応じる必要はありません。
(1)不倫における慰謝料とは
慰謝料とは、精神的苦痛に対して支払われる金銭を指します。慰謝料を支払わなければならないのは、民法709条の「不法行為」が認められた場合です。不法行為は、「故意(認識しておきながら行動すること)」や「過失(不注意のため認識できずに行動すること)」のいずれかが必要とされています。
既婚者と認識せず交際していた場合には慰謝料を支払う必要はありませんが、既婚者との交際が「故意も過失もない」ことを証明しなければなりません。裏を返せば、それが証明できなければ慰謝料請求を拒めないため、注意が必要です。
(2)慰謝料を支払う義務があるケース
不倫関係となったとしても、故意や過失がなければ法的な義務は何ら負いません。では支払う義務が生じるのは、どのようなケースが考えられるでしょうか。
まず、多く見られるのが「少なくとも過失がある」と判断されてしまうケースです。要するに注意しておけば、相手が既婚者であると分かるはずが、不注意のために気付けなかった場合は、慰謝料を免れなくなります。完全に故意も過失もないと判断してもらうことはなかなかハードルが高いのです。
2. 慰謝料請求を拒否するために必要なこと
交際相手の配偶者から慰謝料請求をされても、完全に故意も過失もないと主張できれば拒否できるかもしれません。具体的にどうすればよいのかについて解説します。
(1)証拠は全て残しておく
「相手が未婚であると信じて交際していた」「注意しても気付けなかった」と客観的に証明できる証拠は、全て残しておきましょう。肉体関係がなく、完全にプラトニックな交際であった場合も、同様です。LINEのやり取りなど証拠を隠すと、後ろめたいことがあると見なされ、より不利な状態になりかねません。
(2)すぐに関係を清算する
心情的にはつらいかもしれませんが、そのままずるずると関係を続けていると、不倫に関して故意があると判断されるおそれがあります。肉体関係のあるなしにかかわらず、すみやかに関係を断ち切ることが大切です。
3. 交際相手に慰謝料請求をすることは可能?
交際相手が既婚者であることを知らずに付き合っていた場合、反対に交際相手へ慰謝料請求できる可能性があります。
(1)「貞操権」の侵害にあたる場合は可能
貞操権とは「誰と肉体関係を持つのかを自分で決められる権利」です。もし「相手が既婚であることを知っていたなら、肉体関係を持たなかった」のであれば、貞操権を侵害されたことになります。この場合は、慰謝料を請求できる場合があります。
(2)貞操権侵害で慰謝料を請求できる条件
貞操権侵害によって慰謝料請求するためには、次の条件を全て満たしていることが必要です。
①交際相手が既婚者であること
相手が既婚者であることと、相手がその事実を認めていることが前提条件です。口頭でのやり取りは客観的な証拠とならないため、LINEやメールなどで該当する文言はスクリーンショットなどを残して証拠を集めておきます。
②交際相手が既婚の事実を隠していたこと
婚活パーティーに出席していたり、マッチングアプリに登録したりしていた場合は、一般的に未婚であると推定されます。実際に独身であると明確に示したやり取りも証拠になりえます。また、それを自分が信じていると分かるやり取りがあれば、故意ではないと証明できる可能性が高まります。
③実際に肉体関係を持ったこと
貞操権を侵害されたというためには、前提となる肉体関係が不可欠です。好きといった言葉や、性的な表現があったとしても、ただプラトニックな関係なら、貞操権を侵害されたと主張できません。肉体関係を持ったと証明するには、相手と旅行に行ったり、ホテルなどの宿泊施設に入ったりした際のレシートや領収書、性的関係があったと客観的に分かるメッセージなどが必要です。
④交際関係が真剣なものであったこと
相手が既婚かどうか気にすることなく適当に付き合っていた場合、貞操権侵害による慰謝料請求まではできないと考えられます。将来的な結婚を視野に入れた内容など、真剣に付き合っていたことが分かるメッセージなどがあれば、保存しておきます。
(3)貞操権侵害を理由とした慰謝料の相場
貞操権侵害だとして慰謝料を請求する場合、精神的にダメージを受けた金額としてどれくらいが適当なのかも難しいところです。
過去の判例では数十万円から数百万円といった案件が見られ、個々の事例によって大きな差があります。慰謝料を左右する内容として、たとえば肉体関係を持った結果、妊娠中絶や出産に至った場合に増額される傾向が見られます。また交際期間が長ければ、それだけだまされていた期間が長くなるため、増額されやすくなります。
交際相手が既婚者だと知らずに付き合い、相手の配偶者から慰謝料を請求されても拒めるケースは存在します。また貞操権侵害によって慰謝料を請求できる可能性があります。これらのトラブルで悩んでいる場合には、弁護士への相談を検討しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年12月18日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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